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独占欲を深めた子供とにぶい大人 下




何故こうなったんだろうか。混沌とした入学式に俺はため息をついた。







子供に引っ張られ連れられた体育館はかなり広かった。入り組んだ道を抜けた先にあった、第1体育館と書かれたそこは子供の話によるとなんと第5まであるらしい。それを聞いた瞬間、俺は絶対集団で行動することを決めた。


はぐれたら確実にこれは迷子になる。


迷子になる自信を持った俺を見て、そんな俺の心の内を知らない子供はマンモス校だから設備がしっかりしてるらしいよと、受付で俺に渡されたパンフレットを見やって無邪気に笑った。





「ここに座って」



子供が指定した席は、ほとんど埋まった保護者席の中でもやけに後ろだった。

口を開こうとした俺に、式が終わったらすぐ出られるから!!と子供はやけに早口で言う。その焦りっぷりに


(保護者が居るのが恥ずかしい年頃なんだろうか)


そう思うと生暖かい視線になったのが自分でもわかった。そうか、と俺はおとなしく席に座った。










(これ絶対勘違いしてるだろ)


やけに和らいだ目をした父さんに、ジト目をおくる。でもここに父さんが座っていてくれたほうが都合がいいから何も言わずに、さっきから父さんに突き刺さるそれぞれの熱視線を真っ向から睨み返した。



(気安くうちの父さん見てんじゃねぇ。減るだろうが)



すぐに逸らされる視線達に頷いて、後ろ髪を引かれながら指定された集合場所に子供は向かった。












「すみません、この席よろしいかしら?」

その言葉に、ええと笑って頷いた俺を殴りたい。



う っ と う し い。



子供が居なくなってから数分後、あんなに空いていた後ろの席が埋まったのはいい。だが、なぜ俺の周りは女性ばかりなのだろうか。旦那さんがいた女性も居たが、旦那さんは前の席か通路側へ追いやられていた。


(俺もそこに連れて行ってくれ)


全方位女性というのは中々に辛いものがある。






セレモニーが始まっても、右隣が話終わったと同時に左隣がしゃべりだす。いちいち相槌がいるようなものばかりのせいで、お偉方の祝いの言葉も生徒会長のあいさつもろくに聞けなかった。


いや、特に聞きたかった訳ではないからそれはいいとして、子供が何故かずっとこちらを睨んでくるんですが。



精神がゴリゴリと削れていく音がする。


結局式が終わるまで、子供は隣の席になった女の子がせっかく話しかけているのにガン無視して、女の子は泣きそうになっているし、俺は見知らぬ紳士と子供にすごい形相で睨まれて、周りのご婦人方は喋るのを止めなかった。












混沌とした入学式が終わると同時に席を立った俺は悪くないはずだ。式の後にあった保護者説明会も無言でやり過ごした。子供と合流した後は、引っ付き虫となった子供を引きはがして車に放り込み家路についた。





そして、しっかりシミになったスーツにお出迎えされ、精神に打撲を負った俺に追い打ちをかけるように、その夜から子供がコアラになった。







『むっすりとした子供がコアラのように引っ付いて離れないのですが幼児返りだと思います。どう対応したらいいのでしょうか。』



もしや幼児返りかとYopoo!!の知恵袋に相談したが、『子供さんは1、2さいでしょうか?あなたを赤ちゃんにとられると思ってるんですね。愛情をいっぱいあげて、もし上の子が赤ちゃんの授乳中に、おっぱいが欲しいと要求した時は上のお子さんの年齢にもよりますが、吸わせてあげていいと思いますよ。 吸い方、覚えてますかね?(笑) 「もういい」と本人から申告されるまで、あげてあげてください。 虫歯菌が心配なら、赤ちゃんが飲み終わってからにしたらいいと思います。』







乳 は 出 ま せ ん 。






しばらくその画面を見つめていたが、表示はいつまで経っても変わらなかった。

何度もキーボードに手を伸ばすものの、子供が1、2さいではないと書き込みづらく、無言でベストアンサーにしたのちパソコンをシャットダウンした。







子育てって…難しいな、   。


あいつが子供を病院から連れ帰った時に買ったぴよたまなる育児本を片手に、その日俺は途方に暮れた。







俺のモテモテに子供の嫉妬爆発フィーバーの回。


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