嫁さんのDNAどこですか
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あいつの子供は日を追うごとにあいつに似てくる。
笑った顔があいつそっくりで
嬉しくて、せつなくなるんだ。
とうさんはぼくのかおを見てふわっとしたかおをする。
ぼくはそれがとてもすきだ。でも、ときどき、どこかいたいかおをしてぼくを見るとうさんはキライ。
ねぇ、おねがいだから……ぼくをみて
(最近、ぱぱって言わなくなったな)
ぬいぐるみの写真をじっと見る子供を見て、ふと思った。そして、そのかわりのように俺のことをおにいさんと呼んでいたのに、とうさんと呼び始めた。
ちいさな体で必死に父と母が何故いないのかを考えていた子供。
今は何を考えているんだろう。
写真から顔を上げた子供と、ふいに目が合ってどきりとした。
一瞬、恐ろしくあいつとそっくりな目をしてた。
とうさんはぱぱのとってもだいすきなひと。
ぱぱの写ってるしゃしんは全部とうさんをだいすきっていってる。ぼくもおにいさんがだいすきだ。
でも、おにいさんっていうのはおかしいんだってみんないう。そしたらようちえんの先生が、こまったおかおで、おとうさんってよんだらどうかなっていうからぼくはおにいさんをとうさんとよぶことにした。
ぱぱと、とうさん。
お父さんが2人だねって先生はわらった。
ちがうけど、ぼくも何がちがうのかことばにできなくて、しかたなく一緒にわらった。
くんっと服の裾を引っ張られて、我に返った。
「どうした?」
視線を合わせるようにしゃがみこむ。
子供は不安そうな顔をして両手を広げた。
だっこの合図だ。
すぐに抱き上げて、背中を優しくたたく。
不安定だ。
俺も、子供も。
また、とうさんはぼんやりしてる。
ぼくはたまらなくなってぎゅうぅと服のすそをひっぱる。
なんだか
とうさんがぱぱと一緒に消えちゃうような気がした。
ぱぱ、とうさんをつれてかないで
抱きしめた日からやけに子供が俺のそばを離れなくなった。そして何かと言えば、抱きつかれて囁くようになった。
「とうさんは僕のだよ」
「そばにいて」
「だいすき」
嫁さんのDNAどこいったってぐらいあいつに似てる子供から毎日愛を囁かれる。
どうしよう 、逆に俺が幸せにされてるんだけど。