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閑話:あいつから見た俺について

・あいつの保護者みたいな過保護な先輩が出てきます。

・あいつは先輩に色々とお世話になっていてたまに近況報告みたいなことをしています。

・俺と先輩は絡みません。





あ、先輩。大学で会うなんて奇遇ですね~。

ちょうどいいし、前に話してた俺の親友を紹介しますよ。


先輩、親友の…え、なにどっか行こうとしてんの。学生課に呼び出しくらったの?急ぎ?あ~…うん、いってらっしゃい。

え、個人情報をばらすな?名前だけでもいや?…同じ大学の先輩だよ?…そんなに嫌なの?じゃあ仮名なんにする?三毛猫ホームズ今読んでるから『三毛』?テキトーだなぁ…。




…うん、分かった。

じゃあ、話し終わったらカフェテリア行くから待っててね~。






ええっと、先輩、今のが三毛なんですが。え、……本名?本人が嫌がってるので内緒です。



…先輩。俺、入学してすぐに色んな人と仲良くなれたけれど、隣にいて落ち着いたのは三毛だけでした。

あはは、先輩はもう親みたいな位置づけですから。スネないでくださいよ。


なんか三毛って安心するんですよね。一緒にいて気楽というか。頭がいいからか三毛との会話はとても刺激的だし、入学式の日に偶然隣の席に座ったことを褒めたくなるほど、俺は彼と知り合えて良かったです。







だからかな。なぜか三毛には家庭の事情をすんなり話してました。



先輩。彼は、そうか。って一言言って後は何も聞かなかったんです。

これから関係ぎくしゃくしたり、変に気を使われるかなって思ってけど、今までと変わらない態度の三毛を見て、いままで肩ひじ張って生きていたことに気付かされたんです。



今頃気付いたのかって。仕方ないじゃないですか。いろいろ必死だったんです。





ん?他にはって?…ん~……ああ、こんなこともあったな。

弟の学費の納付が間に合わなくて、親戚のおばさんにものすごく嫌味いわれてすごく悔しかった時があったんですけど。



なんで頼らないって…先輩その時教授と中国の山の中じゃなかったですか。磁場がすごいって話だったし、電波通じませんよ。しかも先輩聞いたら怒鳴り込みに行くデショ。言いませんよ。



……まあ、とにかく…なんていえばいいかな?泣いてる理由が恥ずかしくて、悔しくて言いたくなくて。聞いてほしくないけどどうしようもなく誰かのぬくもりが欲しくて、でも1人は嫌だし弟にこんな姿見られたくない…っていうぐちゃぐちゃな気持ちだったんですけど、





不思議でした。気づけば三毛の家の前にいて。




…三毛はただ黙ってそばにいてくれて。

彼のTシャツべしょべしょにして気づけば寝てました。


心配させないようにって弟にもいつの間にか連絡してくれてて。




朝濡れタオルくれて笑った三毛に、なんでこんなに男前なのに彼女居ないんだって心底不思議に思いましたね。





………本当に、三毛と弟には内緒ですよ?先輩がどうしてもお前の親友ってのを確かめたいっていうから三毛をだまして引き合わせたんですから。―――…結局逃げられちゃいましたけど。


じゃあ、先輩、俺三毛待たしてるんで行きます。就活頑張ってくださいね。














先輩、ここです。……会うの久しぶりですね。え、近況報告?こないだ電話でしたじゃないですか~。

あれから三毛について黙秘してたのは先輩がしつこいから………すいません、話します。




えぇと、就職活動ですか?…んー。なんか三毛と会社がものすごくかぶりましたね。教授はなんかニヤニヤして愛されてるね~なんて三毛からの差し入れだっていう最中とかケーキとか食べてばっかりで…しかも俺には一個もくれないんですよ?すごくイラついたのを覚えてます。


あ、つづきですね。面接は三毛がいると安心しちゃって。悉く今落ちてます。笑い事じゃないのはわかってるんですけど…三毛もすぐフォローしてくれるから、つい油断しちゃうんですよね。三毛はいつも2次に行くのに、俺は1次で落とされてばかりで中々決まりませんでした。


…?三毛はすぐに大手に内定を決めましたよ?


―――卒業の日が近づいてもまだ俺は決まらなくて。三毛は他人ごとだろうにまるで自分のことのように卒業後どうするのかと心配してくれて、内定決まった直後に「お前は俺が養ってやる」って言われたんですよ~。


それについ笑っちゃって。思えば三毛に悪かったですね。





三毛不憫って………そんなガチトーンでいわなくても…。




…え?ちゃんと就職できましたよ。失礼ですね。



卒業1週間前に奇跡が起こったんですよ。

あんまり内容見ないでふらっと面接に行った企業に就職出来たんです。




でもなんかそこ、大企業で。やっていけるのかと不安になって、つい三毛に冗談で一緒に行こうって泣きついたら2次募集でその企業に入ってくれたんですよ。

いや~教授の言葉じゃないけど、俺って三毛に愛されてますよね~。


三毛やっぱり不憫って………そんな…ちょっとは三毛に申し訳ないって思ってますよ。



なんでそんなあきれた目で見るんですか。







あ。




そうだ先輩。俺来月結婚するんで来てくださいね。


………そんな驚かなくてもいいじゃないですか。

俺、子供たくさん欲しいんです。さびしくないように。




たまには三毛に子守してもらったりしようかなー。




じゃあ先輩、これから彼女とウエディングドレス見るので失礼します。




―――……先輩、また電話します。













あいつがまだ生きてて俺が幸せだったころの話。

この後あいつからの電話は先輩に来なかった。



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