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こんなことってないだろう!!!





大学の日々は矢のように過ぎ去って、俺たちは社会人になった。



あの日から2年後、就職活動の夏。

あいつのゼミの教授にゴマすって手に入れた情報をもとに、俺は偶然を装ってあいつと同じ会社を受けまくった。

でもあいつは1次で落とされてばかりで、中々決まらない。不安に駆られ、ついに俺は卒業後もあいつをサポートできるように大手に内定を決めた。



季節は冬になり、卒業の日が近づく。あいつは卒業後どうするのかとどんどんあせる俺と裏腹に、どうにかなると笑うばかりだった。


卒業1週間前。

あいつはふらっと面接に行った大企業に就職した。

俺の心配はなんだったんだと虚ろな目になりつつも必死に2募集でその企業に滑り込んだ。









入社して1週間。年上受けのいいあいつはさっそく課内で可愛がられていて、俺はそれを妬む奴らを仕事の片手間に妨害する2年間を過ごした。


3年目に、俺がバイセクシャルな先輩にまとわりつかれたことが縁で知り合った、ちょっと可愛い女の子と交際しだしたあいつは、順調に出世し、彼女と幸せな愛を育んで行っているようだった。


4年目に課が変わった俺は、たまにあいつの課に顔を出してはあいつが幸せか確認する日々を過ごした。










そして今日、あいつは結婚する。







あいつの幸せ全開の笑顔に、少し痛む胸から目を逸らして俺は微笑む。

友人が肩を貸してくれたから遠慮なく泣いた。


大丈夫。

花嫁は性格も可愛い子だから、きっといい家庭を築く。

彼女のお腹の中にはすでに新しい命が宿っている。

俺があいつにあげれないものだ。


じきにあいつがずっとと欲しかった子供も生まれる。

幸せそうなあいつに俺はもう要らない。





安心して、遠くから見守る頻度を減らそうと決意したその日













あいつが死んだ









不幸な事故だと、電話口で誰かが言う。

あいつと彼女とあいつの弟とで、日帰り温泉旅行に行った帰りのトンネルで事故があったのだと。不思議そうに俺の頬を触るあいつの幼い息子は、まだことの次第が解っていない。


財布と携帯だけ鷲掴み、たまたま預かっていたあいつの息子を抱いて深夜の病院に駆け込んだ。



あいつの妻と弟は、顔に白い布がかけられていた。



(あいつはどこだ!!!)



俺の鬼気迫る剣幕に、看護師は怯えたようにすぐ集中治療室に俺をいざなった。


赤いランプが、まだ点いていた。

どっと押し寄せた安堵にその場にしゃがみこんだ。







(しぬな。おまえが死んだらこの子はどうなる)





(なぁ、おまえは老衰で死にたいと言ってただろう)










(生きろ!…そんな。まだ、俺は………おまえを幸せにしてないんだ。俺の一生をかけて幸せにするって、決めてる。だから、だから、…なぁ   。頑張れよ)










(……聞こえてんだろ、っ   ……。)












明ける4時、ランプが消えた


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