出国
ほんとに飲んだ。
完全に雑魚寝泥酔で。
一応、日曜も誰かしら当番で会社いるんで本社に挨拶してからと思って。
シャワーを浴びた。外でタバコを吸う。
工場を見渡す。
ガラガラって引き戸が空いて、工場長。
俺、頭下げた。会社に寄ってから行きます。
封筒渡される。餞別。米ドルで200。みんなからって。
なあ、200で日本に帰れると思うか?
わかりません。
船もあるし、とりあえずマレーシアに行くとかな。
臨機に考えろアジアってそういうところだから。
金を持ちすぎるのも危険だ。
わかりました。
メールします。
会社経由で関空へ向かう
工具とか計測器とか入った作業用のケースと。バッグが一つ。
服は作業着。荷物最低限にしたかったんで。
本社で笑われる。このまま行くんか?って。
迷ったんだが、恭子の携帯と、もらったシャツ。
結局一緒に連れて来ちゃった。
携帯をビニールに入れて作業着の胸ポケットへ。
盗まれたらまずいし、俺の唯一の大事なものだし。
まあインドネシアなのも何かの運命。
夕方ジャカルタ着いて、近くをまわってその日の夜行バスで次に。
夜ヤバイとか言われたけど全く無問題。
案の定、夜行バスで来たと言うと、この先はやめろと言われ続けた。
仕事は会社が気を使ったらしく初めは超まともなとこ。
普通にこなす。
何処までやるか終着を聞いてなかったので会社にメール。
観光でないんだからいけるところまで行け。
まあそうだよな。
それにしても効率いいな。朝着いて仕事して、工場で作業して夜移動して。
ホテル代かからないし。まあ、ざっくりとした国だから、
風呂入ってなくても誰もそんなこと気にしないし。
食えって。サンドイッチとかフルーツとか客にもらって。
もらったら直ぐに食えって。暑いから。
腹にためておけって。次のは神に祈れって。
正直、次いつ食えるかと思うんだが
なんだかんだって物売りとか、まあ怪しいヤツ多いけど。
まあ、だんだんやばくなってくるわけ。
それを望んでたんだけど。
俺が言うのもなんだけど、
アジアって観光地を一歩先に入ったら全くすっげえのよ。
まあ、スラムって言うか。空気感が…
3件目で客に脅された、事件あったって。銃で。
マジ笑った。ついに来たなって。全然OKだから大丈夫って。
送ってくれないの。ヤバイからって。
じゃあ歩いて行くって言ったら。
ほんとにダメだって、ヒッチハイクで車止めてくれてこのバカを連れてってくれみたいな。
まあ、あんまり言葉通じないんだけど、タバコ1本やって一緒に吸って。
陽気なの。撃たれるとかそんなの気にしてないし。
ジャパニーズ、マリファナかとか言って。キャスターだよ。
バニーラ!バニーラ!って良くわかんない。
着いたらさ、まあ夜だし真っ暗なのよ。
死ぬかな?って聞いて
たぶんナってそいつが言って。
二人で大笑いしながら
来いヨって泊めてくれた。
奥さん美人でね。言ったら、
凄いだろ?凄いだろ?って
恭子思い出した。
胸の感じが。
撃たれて死ぬなんてありがたい。
一瞬で死ねるって。
恭子はあんなに苦しんで、苦しみぬいて死んだのに。




