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戦線高校の奴ら

缶蹴り戦争

作者: 山神賢太郎

 公園に一陣の風が5人の男たちの間に吹く。学ランの男たちは円になりそれぞれを見合っている。そして、一人が口を開いた。

「今から缶蹴りをする。異論のある奴はいるか」

 竹中は全員の顔を見ると、皆それぞれに頷いた。それを了承と受けると、「では、鬼決めたいのだが、五人だし、鬼二人と蹴る側三人でいいか?」と聞いた。皆一様に頷いた。

「よしじゃあ、グーとパーで別れよう」

 竹中がそう促すと三吉が手を挙げ、「ちょっといいか?」と皆の手を止めた。

「どうした?」

 竹中が三吉に顔を向け聞くと三吉が、「缶蹴りのルールはどうするんだ?」と竹中に聞いた。

 竹中は少し考え、ポンと手を叩くとルール説明を始めた。

「まず、最初に蹴る側の勝利は空き缶を蹴れば勝ちとする。そして、次に鬼の勝利だが蹴る側がいなくなったり、降参したら勝ちだ。鬼は、蹴る側を発見しタッチすることで、蹴る側を捕まえることができる。それで、タッチされた蹴る側は空き缶の近くに連行される。これで、どうだろうか?」

 竹中は四人を見ると石田が手を挙げていた。

「どうした石田?」

 竹中が石田に聞く。

「鬼がタッチするという部分を変えたいのだが。ベルトにタオルをかけてそれを取るというのはどうだ?」

 石田の意見に竹中は頷き、「それはいいな、確かにタッチなんてものは簡単すぎる。その方がエキサイティングになりそうだな」と石田に言った。

「まて、それはいいが捕まった人間は空き缶の近くと言ったが具体的にどこにいればいいんだ?」

 長谷部が竹中に聞くと竹中はまた考え、ポンと手を打つと、「では、空き缶の周りに半径1mの円を描きそこに入るのでどうだ。」と長谷部に聞くと、長谷部は納得したのか一回だけ頷く。

「もう異論はないな?」

 竹中が聞くと四人は首を縦にふった。

「では、グーとパーで別れよう」

 竹中がそう言うと五人は中央に手を出し、一斉に掛け声をかけた。

「グーとパーで別れましょ」

「グッパーグッパーグッパッパ」

「グーとーパッ」

「グッパの揃いぞね」

「グッパージャス」

「ちょっと待て、全員バラバラすぎるだろ」

 竹中が言う。

「まず聞きたいんだが、『グッパで揃いぞね」って行ったの誰だ?」

 金持ちの西園寺が手を上げる。

「俺だがどうした? 何かおかしいか?」

「ああおかしい。君はどこ出身だっけ?」

「僕は外国で育ってここにきたんだ。だから、出身地っていうのはカルフォルニアになるかな」

 西園寺はそう言うと前髪をかきあげた。

「絶対嘘だろ。君実は高知出身だろ」

 竹中が、尋問する。

「ぼ、僕が高知出身だって。あんな田舎なハズないだろ」

 西園寺はどもりながら答えた。しかし、竹中はその同様ぶりに一つ質問をしようと思った。

「じゃあ、一般常識でもある高知のがっかり名所を言ってみろ」

 竹中が聞くと、西園寺は当たり前のように答える。

「はりまや橋だろ」

 西園寺の顔はそれはもう見事なドヤ顔。

「なんで知ってるんだよ!みんな知ってたか?」

 竹中が3人に問うと3人ともが首を横に振った。

「やっぱり君は、高知県出身だろ。カリフォルニアとか絶対行ったことないだろ?」

「な、何をいうか」

 西園寺の顔は、焦りなのか汗だくになっていた。

「まあ、こんなやつはほっといて」

「ちょっと待てやー」

 西園寺が竹中の言葉を遮る。

「まだ疑いが晴れていない。僕はカルフォルニア出身だ」

 西園寺が胸を叩きながら言う。

「はいはい、カルフォルニア、カルフォルニア、じゃあみんな出身が違うからせーのでだそう」

「何だその適当な返しは」

 西園寺がまたしても意見する。

「カルフォルニアなんだろ。すごいじゃないか、君はあれだね。アメリカンだね。よしじゃあ、せーのでグーとパーを出すんだぞいいな」

「おい、絶対カルフォルニア、グハ」

 西園寺の顔面に長谷部の裏拳がクリティカルヒットした。

「ちょっと、お前しつこいな」

 長谷部は、鼻血を出して悶える西園寺を見下し言った。

「よし、じゃあ行くぞ。せーの」

 4人は竹中の掛け声とともに、一斉に円の中央に手を出した。

 西園寺は悶えながらもなんとかグーを出した。

「お前その状態でも、缶蹴りはしたいんだな。お前すげーわ」

 パーを出した長谷部が西園寺に言った。

 それぞれの手は、竹中がパー、三吉がグー、石田がパーだった。

 鬼は三吉と西園寺。蹴る側は竹中、石田、長谷部に決まった。

「僕と西園寺が鬼か……。すでに結果が見えているという気もするのだが」

 三吉がまだ悶え中の西園寺を見る。そして、ため息をつく。

「ふぉんふぉうふふぁ」

 鼻を抑え悶えている西園寺が何かわからない発言をし、三吉にサムズアップをした。

「ごめん、なんて言っているかわからない」

 三吉がそう言うと、西園寺は鼻から手を外し、シュッと立ち上がると、

「大丈夫だ。僕がついているからな。ハッハッハ」

 鼻から大量の血を出しながら笑った。

 三吉は、お前だから結果が見えているというのにと思っていたが、口には出さなかった。

 そして、缶蹴りの準備が整った。蹴る側はベルトにタオルをかけ、鬼は円を描くとその中心に缶を置いた。

「じゃあ、はじめるぞ。鬼は十秒数えたら。探しに来てくれ」

 竹中の言葉に鬼の二人が頷くと目を瞑り数を数えはじめる。そして、蹴る側は一斉に逃げた。

「壱、弐、参、肆、伍、陸、漆、捌、玖、拾、じゃあはじめるか」

 西園寺が言ったすぐそばで、高い音が鳴る。

 ―――カーン

 西園寺たちが缶があった場所を見ると、缶そこにはなく長谷部の足がそこには、あった。そして、地面に缶が落ちる音が公園に響いた。

 カランカラン

 長谷部の顔は、見下すような顔で鬼たちを見ていた。

「長谷部それはなくね」

 三吉の発言に長谷部は納得すると「次からは気をつけるよ」、一言詫びると「缶をとってきなよ。その間に隠れるから」と言ってどこかに消えた。

 西園寺が空き缶を取りに行き、円の中心に置く。本当に缶蹴りが始まった。

 公園に何とも言えない不穏な空気が流れている。三吉はつばを飲み込むと、辺りを警戒した。

 西園寺も辺りを見渡す。誰も出てくる気配がなかった。その時、パシュッと何かが飛んでくる音が聞こえた。西園寺が空き缶のそばに何か丸く白いものが転がるのを見つけた。西園寺はそれを手に取る。

「こ、これは、BB弾。まさか奴ら、姿を現さず缶を倒す気か」

 また、乾いた音が鳴る。西園寺は自分の体を盾にして、空き缶を守る。BB弾は西園寺の体に当たり、地面に落ちた。しかし、その猛攻は止まることはなかった。連続で西園寺に当たる。むしろ空き缶を無視して、西園寺を狙っている。

「グッ。三吉、弾は絶対に切れる。イッ。リロードする瞬間を狙って捕まえろ」

「わかった。お前の死は無駄にはしない」

 三吉は、弾の飛んでくる方に走り出す。その間にも西園寺はズタボロになりながらも弾を受け止める。これが、あの西園寺家のボンボンの最後と思うと三吉は目頭が熱くなる。

 そして、弾幕が止む。西園寺は、その場に倒れた。

「西園寺ー」

 三吉の悲痛な叫びが公園に広がる。しかし、悲しんでいる暇はなく、弾を飛ばした主の元に駆け寄った。

「まさか、お前だったのか。石田」

「ああ、楽しませてもらったよ。そして、今ちょうどリロードが終わった。西園寺のことを悲しまなくてもいいぞ。お前も時期そっちにいけるんだからな」

 石田が三吉に銃口を向ける。しかし、三吉はその銃を掴むと石田に関節技を決めた。

「なに、お前こんなことができたのか」

「ああ、一応な。油断しただろ」

「ああ。しかし、これから大変だな。お前は一人捕まえるのに、西園寺を犠牲にした。犠牲者を出さなくては捕まえることができないなんてな。それも、長谷部や頭のいい竹中、あいつらならまだしも俺なんかを捕まえるために西園寺は犠牲になったんだぜ。そして、その二人をお前は、一人で倒さないといけない。楽じゃないねぇ」

 三吉は、笑っている石田の首にチョップするとベルトにかけてあるタオルを取った。

 蹴る側は残り二人。鬼は西園寺がダウンしている回復までしばらくかかるだろ。

 三吉は、石田を円に放り込むと倒れている西園寺の背中に座り休んだ。すまない西園寺と思いながら。

 しかし、敵は休ませてはくれなかった。あの凶悪な長谷部が姿を現した。

「石田を捕まえるなんてな。お前がここまでやるとは思わなかった。だが、俺は正当派。真っ向から行くぜ。」

 長谷部は空き缶へ向かって走り出す。それを止めるために三吉は長谷部に向かって行った。三吉は長谷部を止めるために、長谷部の胸に掌底を突き出す。しかし、長谷部はそれを手で払うと三吉の左足に右ミドルを繰り出す。三吉は左太ももにそれをくらうと膝をついたが、左手で長谷部のタオルを取りにかかる。それを長谷部は右の肘で三吉の手を撃ち落とした。

 三吉の左側は使い物にならなくなった。勝負は見えたと長谷部は思い空き缶の元へ駆け出そうとしたが、三吉は左足を軸にして長谷部に足払いをした。長谷部は少しよろけながら、ジャンプして交わしたが、その間に三吉が右手で長谷部のタオルを掴み、ベルトから引き抜いた。

「なに」

 長谷部は地面に着地すると、苦しそうな三吉に手を差し出した。

「まさか三吉、お前がここまでやるとは思わなかった。ナイスファイトだ」

 長谷部は三吉の手を取ると、三吉を立たせた。

「しかしだ。残りの竹中は手ごわいぞ。そういや、竹中から伝言を預かっていた。空き缶の底を見ろと言っていたぞ」

 長谷部は三吉に肩を貸し空き缶まで行った。

 そして、空き缶を手に取ると、空き缶の底を見た。底には紙がテープで貼っていた。三吉はその紙を空き缶から剥がすと紙を広げた。

「なんだと」

 二人はその紙に書かれている。内容に驚いた。その紙には“お腹がずっと痛かったので缶蹴りが始まったら帰ります”と書かれていた。

 二人は、顔を合わせて、勝者はずっと我慢していた、竹中だと心中で思った。



缶蹴り戦争完


この作品は書いてて楽しかったです。

というかキーボードが止まらなかったからかなり勢いで書きました。自分でもこれは面白いと思うけどひでぇなと感じました。

途中普通にバトルしてた時は、これギャグ小説だよなと自分で思いつつ、書いてました。

そして、最後のシーンは実はどうする迷いました。

もうひとつのラストとしては、竹中に空き缶を蹴らしてその空き缶が不良に当たって怒られるというラストにしようか迷ったんですけど。

何か、こっちの方が早く終わるなと思ってこのラストにしました。

最後まで読んで下さりありがとうございました。

彼らは、すごく使いやすいキャラクターなので、戦争シリーズとして続けていきたいと思います。

注意事項、エアガンを人に向けて撃っては行けません。


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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白かったです! 缶蹴りねぇ、懐かしい。でもどんなルールだったっけと最初に思ったのですが、丁寧に説明を添えてくださり助かりました^^ おかげで物語をきちんと理解し楽しむことができま…
感想一覧
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