le calme avant la tempete ~嵐の前の静けさ~ ー1ー
今回は、 如月 羽矢 の視点から です。
久遠は戻ってきた
久遠が行方不明になったあの日から十日後
無数の傷を負い気を失った久遠は、早朝病院の屋上で発見された
発見された場所が病院だったためすぐに手当てされた
命に別状はなかったようだ
警察へ連絡がいき 警察から久遠のお母さん、零無さんに連絡がはいった
零無さんが、久遠が見つかったことと、久遠の入院している病院名を教えてくれた
その連絡を受けた時 朝ご飯の準備をしていた
急いで火を止めホワイトボードに久遠が見つかり会いに行くことと朝ご飯後よろしくと 記入してコートをつかみ外へでる
ちょうどそのとき零無さんが車にエンジンをかけていた
「羽矢くん 乗って」
羽矢は、零無さんの車に乗る
零無さんは ずいぶんとやつれていた
もとから細かったがさらに細くなった気がする
「久遠が戻ってこないの
羽矢君知らない」
そう十日前に切羽詰まった零無さんの電話口の悲痛の声が昨日のように思い出せる
あの後 すぐに警察に捜索願を出し自らもその捜索に出ていた
羽矢もその手伝いをしていた
「羽矢君 痩せた?」
零無さんは前を見据え運転しながら聞いてきた
確かにやせた
ここ数日で一気に・・・
久遠が心配で 食が進まなかったのだ
幼なじみで思い人である久遠
彼女がいなどんな目にあっているか心配でなにをしても身にはいらなかった
このままあえない
久遠を永遠に失う
それがすごく恐ろしかった
久遠がいないこの数日周りが色あせた
久遠がいないだけでこんなに苦しいなんて
久遠 久遠
車は、あっという間に病院についた
零無さんは車に鍵をかけると走るように病院にはいる
羽矢も、零無さんの後を追う
同じような部屋がつづく
720
721
722
次だ
『いやあああ こないで 私に近寄るなぁああ』
甲高い悲鳴
―――――ドタッ ズダン ガッシャン
ものすごい物音が響く
ほかの部屋にいたものや廊下にいた者がギョッとしたようすでこの先の部屋
723 つまり 久遠のいる部屋をみる
あの悲鳴は、久遠の声
零無さんと羽矢は
久遠のいる部屋をノックなしに開ける
そこに見えたのは、手負いの獣のようにおびえる久遠
久遠をなだめようとする看護師の姿だった
花瓶は久遠に投げられたのか、粉々に割れている
床に散乱する白い破片
枕や布団は、ベットから投げ飛ばされていた
「久遠!!」
零無さんがおびえている久遠のもとへ走り寄る
―――ぎゅうう
きつく、零無さんは久遠を抱きしめる
「くおんちゃん。落ち着いて、ママはここにいる。くおんちゃんは、いま病院にいるの。」
ゆっくりと優しく語りかけ
久遠の背中をポンポンと叩く
「ここには久遠ちゃんに悪いことするひといない。もしいたとしても、ママが守るから安心して。」
久遠は、しばらくモガモガと暴れていたが、自分を抱きしめている者が母親だと気がつくと、はた目からわかるほど警戒をほどいて行った
「ママァ」
久遠は、しがみ付くようにと母親である零無さんを抱き返す
「そうだよ 久遠。ママだよ。もう平気だから…ね。」
ほっとしたのかずるずると久遠の体から力んでいた力がゆっくりと抜けていく
うつむかせていた顔を上げて久遠は、ずっと言いたかった言葉を言う
「ママ わたし ごめん 謝らなきゃ」
桜 夏姫 の作品 バル・マスケ~仮面舞踏会~ を読んでくださったみなさま
私の作品を読んでくださってありがとうございます。
これからもなるべく早く更新していくつもりです
誤字脱字や、表現がおかしいところが多々あると思います
教えていただけると嬉しいです
感想や評価まっています
―――それでは皆様よい読書を…