Le chemin qui a été arrangé pour quelqu'un~予言された道を進む ~
お待たせしました。
突然目の前に現れた男は、勇輝の名を呼ぶ。
この騒ぎの中、その男は黒い外車の中から出てきた。
青白い火花が、その男の周囲でバチバチをはじける。
「勇輝知り合い?」
まだ、痛みに顔をしかめながら、奈落が尋ねる。
オレは、目の前の男を知らない
知り合いではないはずだ
目の前にいる男は俺の名前を知っているようだけど、オレはこの男を知らない
「知らない」
奈落の怪我は、能力で癒えている
便利な能力だと思ったが、さっきのガラス片
腕に刺さった状態のまま周りの皮膚が再生するから、無理やり抜き取らなくてはならなかったようだ
正直、見ていたいものではない
「知らねぇのかよ。そうだよなぁ、大門寺は、俺の存在すら知らないはずだよなぁ!」
俺や奈落に、聞かせるというより自分自身に聞かせるような話し方だ。
狂ったように笑い方だと思った。
「俺はお前に用はねェよ。器物破損の現行犯だろう?警察のおっさんたちのとこにさっさと世話になれよな。この迷惑男」
思わず悪態をいつもの癖でついてしまう
この非常時に名に挑発してるんだよ。俺!
この男がどうかしてるように俺もどうかしてるな。
「そうさ、俺の存在すら知らないような小物が、八条家にかかわる方がおかしい。俺は、力を手に入れた。俺は、この力で大門寺勇輝てめぇをひざまづかせてやる。」
何を言ってるんだ。
言ってることは、よく理解できない。
でも、こいつが危険だということを本能が告げる。
正気を失ってるのか
薬でもやって、逝っちまってるのか?
人間よくわからないものを本能的に恐れるのか?
恐れるな。
こんな奴に気おされるほど俺は、価値の低い人間じゃねェ。
「いやなこった!オレは、野郎に膝をつく気はねぇよ。どうせ、やるんなら奈落みてぇなかわいい子にやるね。中世の騎士みたいにさ。」
親指を立て、思いっきり下に向ける
俺の言葉が耳に入ったのか、はたまたこんな状況で強気な発言をする俺が滑稽だったのか
奈落が、鈴を転がすようなきれいな声で笑う
つくりものではなく心の底からの笑い声
耳に良い声
「あはは。痛い思いしてかばった甲斐あったわ。勇輝あんたって、惚れちゃうくらいいい男ね。私に先約がなかったら、どんな手を使ってでもあなたが欲しくなっちゃうところだったわ。」
奈落の声は不自然なほど、俺の耳に届く
決して、大きな声ではないのに届く
虚勢にすぎなかった。
だけど、奈落の声を着た瞬間、恐れが消えた。
かき消された。
怒りに、かき消される
そう、こいつは奈落を傷つけ、何の関係もないだろう人間にけがを負わせ、町を混乱に陥れた。
今も、町にはうるさいほどの喧騒がみちている
誰かの悲鳴
クラクションの嵐
人と人が押し合い罵り合う声
醜い人の心が現れている。
男は、バチバチとほとばしる青い閃光をその人ごみに向けて放つ。
「能力は、そんなもののために使うものじゃない!」
その閃光の向う先に、奈落が割り込んだ。
悲鳴の一つも漏らさず歯を食いしばってその痛みを耐えているようだ。
電流が体に流れ、しびれるのか、片膝をつく奈落
心の底から、目の前にいる男を嫌悪していること。
怒りを感じていること。
悲しく感じていること。
混ぜ混ぜになった奈落の感情の発露を合図に、周囲の喧騒から空間が切り離された。
ふたりだけの世界になったわけではない
文字通り世界が切り離されたのだ。
「安心していいよ。これは、勇輝に危害を与えるたぐいのものではないよ。ちょっと空間を隔離させてもらったの。」
そういって、立つ少女はさっきのけがを全く感じさせないものだった。
どこか神秘的な雰囲気を醸し出す奈落
「お前はいったいなんなんだ?」
目の前にいるふざけた男に聞く
まともな答えを期待したわけではなかったけど、思ったよりはまともな答えが返ってきた
「俺は、八条院 岳哉」
しってるのか?そう、奈落は、尋ねるようにこっちを見る。
こいつにも、さっきこの男にしたのと同じ質問をしたい。
こいつの能力は、治癒能力の類だと思っていた
だけど、さっきこいつは隔離したといった
そんなすごい技を二つも使えるなんて普通じゃない
「知らん。野郎の名前なぞ、いちいち覚えてない。それに、あんたみたいないかれた野郎のことなんかしらねェよ」
そうは、答えたもののどこか引っかかる。
特に苗字の「八条院」っていうやつだ。
どこで耳にした?
クラスメイトにそんな名前のやつはいなかったはずだ
「へぇ、俺はお前のことをよく知ってるのによぉ。」
耳障りな声だ。
うざい。
そんな物騒な思考が脳裏によぎって、ふと違和感を抱く。
俺が、思いつくこいつとのつながり。
あるとしたら、チガヤの見かけに騙された合われた男のうちの誰かで、俺に潰された奴らだろうか?
茅っていう残念美人の女友達
あいつは、なんていうか性格とかいろいろぶっ飛んじまってるけど見た目が極上の美少女だからしょっちゅうからまれて、そいつらの後始末を俺に任せる。
そんなどうしようもない連中の一人
どうして道すがらの美少女の露払い役にここまで憎しみを抱ける?
まさか、本気だったとか?
だったら、もっとそれっぽいシチュエーションにしているだろう?
「茅関係か?」
ぽっりとした声
だが、静まり返っているこの空間では、そんな小さな音すらも響く
「はっ、誰だ?俺は、お前を殺す。なんで、お前みたいなどこの骨とも知れないやつが八条院の財産をすべて受け継ぐんだよ!ありえないだろう!」
わけわからないことだ
俺の苗字は、そんな名前じゃない
そして、俺の知り合いにそんな御大層な名前の持ち主はいない
茅関係じゃないとすると俺は、その財産を受け継ぐうんたらかんたらの話をしらん
義理姉の苗字も違うしさ
「誰だよ。っていうか人違いだろう。おれ知らんぞ!おふくろの旧姓もそんな名前じゃないし、いったいどこからそんな話が湧いて出てくるんだ。」
そういって、ため息をつき見上げた頭上
そこにその文字はあった。
「八条院グループ」
空には、届かないけれど高層ビルのうちの一つに今言った男の名字が書かれていた。
奇しくもその建物は今さっきまで、奈落と買い物をしていたデパートの名前だった。
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