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Le retour~帰還~ -1-

久遠は、どうしようか悩んでいた

久遠がいるのは黒崎家の目の前


生まれてからずっと住んでいた家だ。

そして、もう帰ることのないと思っていた家


「懐かしいなぁ~」


まさか、こんなことを思う日が来るなんて思わなかった。


この家には帰れない

逃げ道をふさぐために私は如月羽矢という証人の前で飛び降り自殺を図った


だから、黒崎久遠が死亡したと思っているだろう


家族は生存を信じているかもしれないけれど近所の人が見たら幽霊に出会ったように見られるのは間違いない

いまは、隠蔽呪(ハーミット)で姿を消している

家の中に入って、ママに「ただいま」そう言いたい気持ちがわきあがる

ママに甘えてしまう気がする

そんなことをしている場合じゃないのに……来なきゃよかった


見なきゃよかった

なんで一度家を見てみようなんて思ったんだろう


―――――入らないのか?


エルの声

入りたいよ 会いたいよ 全部話して楽になりたいよ


「でも、全部終わらなきゃ帰れないよ。」


――――ここ最近のクオンは根を詰め続けているぞ、たまには休憩するのもよかろう。誰も責めはせぬ


あまい誘い

その誘いに乗ってしまいたくなる気持ちを、あわてて封じる

そうでもしなければ、エルのせいにして私は甘えてしまう


そう誰が責めなくとも、私自身が私のことを責めずにはいられない


「でも、やらなきゃいけないことがたくさんあるわ。」


ファーガリアと和平は結べた

でも、地球側にどう説明すればいい?説明するため説得するため程よい脅しを考えなきゃいけない

言葉は統一されてても文字は統一されていない

用意する書類をそれぞれの国の文字で用意しなければいけない

呪術という裏技があるとはいえ、骨が折れる作業だ

ファーガリアの王様の命令でいろんな人が協力してくれた

そのおかげで必要な書類の半分はできている

残り半分は私がやらなければならない


頭の中でやるべきことと今後のスケジュールを組み立てていく



「さて、活動拠点をどこにしようかしら?」


いくつか候補を上げていく

このまま黒崎家を活動拠点にできたら楽だろうな

調べものやまとめるのにこれほどふさわしい環境はないだろう

なんせ、自分の自宅だ。気兼ねなく調べごとに没頭できる。


でも、無理だよね。ママにあったらなんて説明をする。気を遣わせてしまう。それに、私も気を使ってしまうだろう。気兼ねなくなんてできそうにないな現実は……


そうなると、事情を知っている存在のところになるよね

勇輝――――奈落にでも頼むか。

あいつなら私の裏を知っているやりやすい

百鬼夜行と呼ばれる組織を本当に作り上げるとは思わなかったよ

羽矢も、ファンタジアをちゃんと作ってくれたみたいだし、下地は整っている

その二つの活動のおかげで能力者の存在が、いい方向に伝わっているようだしね

羽矢に程よいゆさぶりをかけているみたいだ


会いたいなぁ


羽矢に会ってすべてをはなしたら許してくれるだろうか?

でも、そういう問題ではない

久遠は自分の体を見てため息を漏らす

そう、私は羽矢には会えない

羽矢にとって私は生きているのか死んでいるのかわからない亡霊でいてもらわなければ困る

そして、いつか私を忘れて誰かと結婚して子をなす


羽矢の隣に私以外の誰かがいる 私以外の誰かとの子を抱く羽矢 それらを想像して後悔した


どうして、どうして別の女の人を……私だけを想っていてよ

理不尽だと知っているのに、そう思わずにはいられない

私は今もなお羽矢を縛っている 私の言葉が羽矢を縛っている 私という生死不明の行方不明者が羽矢の未来の可能性を握りつぶすている



――――もういい。

低い声が心の中に響く



「そうだね。それよりもエル、勝手に私の心を覗くなとあれほど言ったわよね。」


そう口にしながらも、エルに感謝していた

もし、あそこで声をかけてくれなかったらいやな方向に志向が進んでいた

色恋沙汰よりも今は世界がかかっている



「おかえりなさい、久遠。そんなところに突っ立っていないで家の中に入りなさい。あなたの家でもあるのよ」




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