Jeune homme demander~青年は少年に問いかける~
愛するということは、互いを見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめるということだ。
「黒崎久遠のことをお前は何もわかってはいないようだな。彼女の目的も、性質も何も知らない。たしかに、彼女と過ごして時間はお前のほうがはるかに長いだろう。だが、時間が長いだけに過ぎない」
この男は知っているというのか
この男との関係は?
嫉妬や、怒りさまざまな感情が羽矢の中を渦巻く
自分のものをとられたような――――――所有欲なのかもしれない
自分の彼女に、自分よりも彼女を知る男がいたことを腹立たしく思っている
「黒崎久遠は言っておくがお前のものではないぞ。当たり前だが、俺のものでもない。黒崎久遠は黒崎久遠のものだ。いま、お前が抱いている感情をしったら彼女はどうするかな」
わかっている
久遠は、久遠のもの
「っ、君はいったいなんなんだよ。久遠とどういう関係だ」
「そうだな、協力者とも呼べる関係だ。お前とそういう点では同じだな。どちらも、彼女の駒のようなものだ。」
「駒?僕も君も駒?いったい何のための……っ、久遠の理想を目指すため駒」
久遠にとって、都合のいい駒
僕も目の前の人も、等しく彼女の駒
願いをかなえるためには、どんな犠牲もいとわないような人間ではなかったはず
もしそうなら、そこまでしてかなえたい理想
久遠は、僕の彼女で愛する女性だ
ずっとずっと思ってきた女性
そして、同じようにうぬぼれでもなく彼女もまた僕を思ってくれていた
短かったけど、恋人同士として過ごした幸福な日々
だから、この男の言うことが真実とは限らない
この男が、読心術を使い僕を揺さぶっているのかもしれないのだから……
「信じる信じないは、お前の勝手だな。」
羽矢の気持ちなど、どうでもいいとでもいう態度
伝えることだけ伝えればそれでいい
そんな感じがしてしまう
奈落は、仮面に手をかけゆっくりとはずしていく
焦らすように、見せる素顔
何の意図があってはずしたのかはわからない
「えっ」
仮面のはずした奈落の素顔
それは、似ていた
黒崎久遠になぜか似ていた
双子のようにそっくりというわけではないし、兄弟のように似ているわけでもない
親とこの似ているともまた違う
顔立ちが、似ている
髪も瞳の色も違うはずなのに、どうして似ているのだ
「なんで?」
そう口にしながらも何となく予想はできている
似てない親子、兄弟
変えられた色、耳や鼻、シッポ
そして、顔立ちや身長もまた変わってしまった人がいる
「わかっているのだろう?」
にやりと笑う
仮面が外れた今、奈落の表情を隠すものはない
帰るのか、後ろを向き立ち去ろうとする
思わず、呼び止めていた
「奈落っ」
もっと詳しく話を聞きたい
黒崎久遠が生きているのか死んでいるのか結局答えを聞いてはいない
奈落は、後ろを振り向きいま思い出したかのように言う
「そうそう、今回の救助活動、百鬼夜行はファンタジアの名前を名乗らせてもらった。安心しろ、ファンタジアの名にきずがつくようなことはさせてしない」
「なに?」
そんなことをして、いったい何のメリットがあるんだろう
それとも、ほかに何か思惑があるのか?
奈落は、一丁の拳銃を空に掲げる
そして、小さくつぶやいた
「Aimer, ce n'est pas se regarder l'un l'autre, c'est regarder ensemble dans la même direction. 」
「ん?」
「久遠が望んだ愛ってどういうことだろうか考えろ。すくなくとも、俺はお前よりも、久遠の恋愛価値観については知っているぞ。」
音の抑えられた弾丸が、地面にぶつかる
一瞬目を離したすきに、奈落という青年の姿は影も形もなく消えていた
「テレポート?」
一体、何をしたかったんだろう
僕の気持ちをかき乱すだけかき乱して、わけのわからないことばかり言って立ち消える
心の奥底まで見透かすような、黄金の瞳
っ
一体、久遠とはどういう関係だったんだ?
空を見上げる
赤月が、羽矢を畔笑うように不気味に忌々しく輝いていた
「化け物めっ」
「この、あくまっ」
「地獄へ落ちろ」
能力を持つ者を貶め罵る声
人は、異端を受け入れようとしない
閉鎖した世界で、縛られてルールの中での安穏を望む
自分より秀でたものや、自分よりも劣っているものを排除しようとする
そういわれると、小学校や中学校での、様子を思い出す
誰もが同じ線上に立つことはできないのに、自分がいるところを普通だと思い込みその戦場からはみ出るものを嫌う
いつの時代も変わらなく同じだ
普通であることは、別に免罪符にもならないのにそれをかざす
人は皆違う
誰もが、本当の意味では理解しあえない
それらを理解していないわけではない
ただ、未知のものに対しての恐怖
私は、妹の能力を羨ましくおもった
わたしは欲しかった
でも、手に入らないであろうことも理解していたとは言い難いがわかっていたつもりだ
嫉妬という醜い思いが心を満たす
彼女を貶めれば、自分は優位にいられる
自分はまだ、妹よりも優位にいられる
そう思う気持ちと同じくらい、それ以上に私は妹を愛していた
家族を早くに失った私たちは、互いを互いに助け合って生きてきた
だから、覚悟を決めた
妹を守るということを決めた
自分の中には今も嫉妬の感情がくすぶっている
私は、ウ用曲折を得て死神と呼ばれる百鬼夜行のリーダーに出会った
すべてを見透かすような黄金色の瞳
私の汚い気持ちもすべて見透かされてしまった気がした
死神は、私にきいた
力を手に入れたいか。俺の下につく気はあるか?
私は、聞き返していた
その場に妹がいなくてよかったとも思った
アナタの下につけば、力を手に入れれられマスか?妹をもう、嫌な目で見なくて済みますか
にやりと笑いながら言われた
いやな目で見るか見ないかはお前次第だ、ただ力がほしいのならやってもいい。
だから、私は欲した力を……たとえ、この男の下につかなく手はならなくてもほしかった
お前には、この能力がふさわしい。発火能力だ。
なぜそうなのかはわからない。妹の力は、サイコキノと呼ばれる能力
私は、なんでもよかった
おいて枯れるのが嫌だったから
そして、私は力を手に入れた
いま目の前で、私たちをののしるものの気持ちは私は理解できた
だからこそ、いら立ちを覚えた
「私たちがあなた方の不利益になることをしましたか?あなた方をこの力で、傷つけましたか?私たちは人間です。あなた方も人間です。どうしてですか、顏の造形、神や瞳肌の色。獣の耳や尾。とリックスターに変えられても、私たちは人間であろうとしましたよね?それと同じですよ。」
叫んでいた
自分自身に言い聞かせるように、ここにいるものたちに聞かせるように。
わからなくもない
帰る場所も家族を失ってパニックになったものたち悲しみに明け暮れる者の気持ち
どうか、とどいて
私の気持ちを…
言葉にし切れないその思いを伝えたい
そして私は気が付く、さっきまでののしっていた人たちが急に黙り込んだことに
いつの間にか隣に立っていたのは、百鬼夜行の幹部の一人玉藻
「あなたの思いはきっと伝わりましたわ。勝手ながらわたくしあなたの言葉にならない思いをこの人たちにテレパスで届けさせていただきましたわ。ごめんなさいね。」
「いえ、伝わってほしいと思っていましたから……あの、その」
こっちの心を見透かすように、先回りして玉藻は言う
「安心してくださいな。あなたの妹さんには伝えていませんわ。」
ホット安どのため息を漏らす
さっきヤジを飛ばしていた人の群れの中から一人の少女が前に飛び出しおもむろに口を開く
「私たち、少しパニックになっていたみたい。私たちは感謝をあの人たちにすることがあっても貶めることはいけないよね。食糧だってこの人たちが運んできてくれたよね。道路壊れちゃったから、ダメかなって思ったけど、テレポートっていう力ではこんできてくれた。町のみんなを助けてくれてありがとう。」
感謝の言葉を告げる防災ずきんをかぶった琥珀色の瞳を持つ少女
中学生くらいの少女の言葉にみんな我に返り始める
あまりにも常識外のことが起こっている子の中誰も気が付かない
少女の放つ年相応とは言えない言葉に…
その避難所の中では、生暖かい空気が流れる
「わるかった。まだ、お前らの子とよく知らないのに…」
「弟を助けてくれてありがとう」
先ほどの悪口のさなか言えなかった感謝の気持ちをここぞとばかりに口にするもの
バツ悪そうに眼をそらすもの
それでもなお、罵ろうとする者もいたけれど知人や近くにいた誰かに口をふさがれていた
「ううん、こっちこそありがとう。」
さっきまで口を開かずに黙っていた妹が感謝のおもいをつたえる
些細な変化かもしれない
それでも、それが大きな何かになるかもしれな
いまはただ、思いが通じたことに感謝したかった
Aimer, ce n'est pas se regarder l'un l'autre, c'est regarder ensemble dans la même direction.サン=テグジュペリの言葉の引用です。




