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Utopie~理想郷~


ファンタジアのメンバーが、救助活動を手伝っているなか、百鬼夜行もまた動いていた


仮面をつけた少年少女たちが、圧倒的な力ふるう

透視能力者が、がれきの下に人がいるか確認する


人がいた場合それをテレパスでほかの能力者に見せる

サイコキノの能力者が、がれきを持ち上げる

そのあいだに、テレポート能力者が救助し、治癒能力者のもとに運ぶ

その連携には無駄がなかった



「きみたち、あぶないよ。早く避難所へ行きなさい」


大人の救助隊の人間が、仮面をつけた少年少女に言う

仮面をつけた不気味な連中に、忠告できるこの人はかなりのつわものだった

いま、目の前で能力を振るった場面を見ていたはずなのだから。


「いいえ。あたしらの仕事は、救助活動の手伝いです。もしよかったら、救助活動の指示を仰げますか?」

「はぁ?」


唖然としている様子の男性


「私たちは、特殊な能力を持っています。仮面をつけている人間は、私たちの仲間です。」

「僕の能力は、透視。彼女たちの能力は、テレパス、サイコキノ、テレポート。」

「うちは、一人でも多くの人を救いたい。」


まっすぐと、男性を見ながら言う


「素人が手を出してもろくなことにならん。じゃまだ。」

「どうした、箱山隊員」

「隊長!あの子たちが救助活動の手伝いをしたいといっているんですけど。こちらに指示を仰ぎたいと…」

「一般人には、避難してもらえ。素人に手を出されてもじゃまだ。」

「それが、その・・・本人たち曰く特殊能力者だとか。」

「そんなたわけた存在がこの世界にあるはずがない」

「しかし、」


そこへ、さっきの少女が口をはさむ


「うちらの力、信用しないのはわかる。でも、つかえるものは全部使った方がええよ

ほかにも、物を手を使わずに持ち上げられる子もいます。」


その言葉に思い当たる節があったのだろうか



「本当か。その話。」

「ほんまです 」


しばらく悩んだそぶりを見せて、おもむろに口を開く


「君たちが、ファンタジアという能力者集団か?」


少女たちは、テレパスの能力で声に出さず話し合いをする


(死神様が言っていた、百鬼夜行って名乗るよりもファンタジアと名乗っておけって)

(どういう意味なんだ)

(うちら、いろいろと派手なことやってるからしゃあない。)

(ほかのやつらの名声をつくるのは癪だけど、僕らはあの方のおっしゃるようにしよう)


「はい。それが、どうかしたんですかっ?」

「なら、協力体制をこちらもひくようにいわれている」


少年少女はその力を、指示に従いふるう


隊長は上から知らされていた

上といっても、昔自分が所属していた隊の隊長からだった

能力者の存在を、正直眉唾物だと思っていたがその力をまじかで見るとこれが人間なのかと疑いたくなる


隊員の中には、化け物だ

そう、少年少女たちを呼ぶ者もいる

しかし、彼女らはそれを全く気にしない

いわれなれているのか、それとも言われるのを覚悟してきたのか


元隊長は、いっていた

自分の、かわいい弟子が率いるファンタジアに協力しろと…

その能力を、利用していいと。


そして、こうも言っていた

未来を変えるかもしれないんだ。


それがどういう意味なのか、分かる気がした

彼女たちが、この危機のさなか化け物となるかはたまた人間となるか…







羽矢は今回の行動を師匠に話していた

危険なことに手を出すときは話しておかない多とがいろいろめんどくさそうだったからだ


その時に言われた

現地の救助隊に話をつけたから、指示に従え

正直、どうやったらそんなことができるのかわからなかった


まぁ、師匠のやることをいちいち考えても仕方がない


とりあえず忠告どうりに、現地で偉そうな人に名乗りを上げた

名乗りを上げたっていうより、あいさつをしに行った


どうやら師匠の弟子らしい

兄弟子という存在になるのだろうか


とりあえず名前を名乗って、桃山さんという人に話をつけに行った

師匠の名前と、自分の名前、ファンタジアだということを名乗ったら驚くほどすんなりと合わせてもらえた

どうやら、師匠はこの人たちの元上司だったらっしい

指示は、渡された通信機から出される

それを、牧島さんに渡しみんなに中継してもらえるようにした


そして、僕らは持てる力を振った




死者は、それでも出てしまった。

助けたかったけれど、助けられなかったものたち


死をこんなにも身近に関いることがなかった僕たちには、衝撃的だった

すくえなかった人の分まで救おう


そう決めた


それでも、目の前で時にその腕の中で誰かが死んでしまうのを見ると……



行方不明者の捜索を、その後行うことになった

知覚系能力者は、ファンタジアには少ない

牧島さんのテレパス

栞子さんのサイコメトリー


こんな時自分の能力が役に立たないことを腹立たしく思う

羽矢は、避難した人たちの空間を保護する結界を張るくらいしかできていない

それが、悔しかった


百鬼夜行と名乗る仮面をつけたものたちに出会った。

知覚系能力者の多い代わりに、物理的なものに与える力がないから、貸してほしいと言われた


協力することに異存はなかった

知覚系能力者が発見した行方不明者

家具などで身動きが取れなかったり、出入り口がふさがれている場合

紅葉さんの能力で、物をどかしたり、テレポートで避難所や病院に運んだりした

また、陸の孤島となった場所へ食料や毛布をテレポートで届けに行ったりした




行方不明者の数は、日に日に数を減らしていった

あるときは生存して見つかりあるときは冷たく物言わぬ死体となって発見された

五体満足のものも、そうでないものもいた。


くじけかけそうになったことも絶望しそうになったこともあったけれどそれでも僕らはできることをせずにはいられなかったのだ




数日後


がれきの街のなか

羽矢は、ただひとり歩いていた

今は、真夜中。夜でも新世界の夜はそこまで暗くない

空に浮かぶ赤月

いつみても不気味だと思う

でも、僕らの子供たちはこの赤月にオーロラのある夜が当たり前の夜になるのだろう


眠れなかったのだ

あれから、賀上の能力でこっちと幻想曲を行ったり来たりしている

今晩、こっちに留まったのには特に理由はない


人助け。助けたかった。あのとき、助けられなかった、久遠の代わりに助けているのかもしれない。


「久遠……、僕は、君がのぞんだ理想郷を本当に作れているんかな?」


答える声がないことを知りながらも、尋ねずにはいられない


「現実には存在しない理想の土地が、作れるわけないだろう」


だが、それにこたえる声があった

羽矢の背後からかかった声

それは、大人の声のようでもあり子供の声のようでもあり不思議と人を引き付ける声だった


「だれ?」


振り向いた羽矢の視界にうつしだされたのは、一人の青年だった

銀色の髪、黄金色の瞳をもつ、背の高い整った顔をした青年

そして、その青年はアイマスクのような形の仮面をつけている

仮面の下にある青年の素顔は、謎に包まれている



どくん


不自然に高鳴る鼓動

仮面で隠されていない部分


ちがう


この青年のまとう雰囲気あるいは、気配と呼べるもの

それは、とても似ていた


「奈落。お前たちファンタジアが光ならば、俺達、百鬼夜行は闇だな。」


奈落と名乗る青年


「どういう……」


淡々と言葉を積むづ青年の表情は顔を覆う仮面のせいなのか読むことができない

百鬼夜行

その単語は、つい最近聞いたことがある

初任務のあの時にも出てきたのではないか…


「奈落……華やかな舞台の裏には常に嫉妬があり、それが怨念となった魔物が薄暗い舞台下に潜んでおり、時折これが悪さをするから舞台事故が起こるとかつては信じられていたらしいな。そう、お前が理想郷を目指す光――――人生という舞台に新たなスポットライトを当てるものならば、俺は、この能力を嫉妬する者が危害を俺らになしたとき人生という舞台から引きずるおとす存在。」


奈落と名乗った仮面の銀髪の青年

一体何を言っているのだろうか?

羽矢が、ファンタジアが光

この人が率いる百鬼夜行が闇


「君はいったい」

「レベッカ・テンペスト―――――――――黒崎久遠の遺志を継ぐ者」

「久遠を知っているのか」


なぜ?

この人はいったいなんなんだ

どうして久遠のことを知っている?どこに久遠とこの人をつなぐものがある?

この人と久遠はいったいいつ知り合ったんだ?関係は?

レベッカ・テンペスト

あの動画の投稿者の名前


久遠にそっくりな人間

久遠は生きているのか?

もしそうなら、どうして僕の前に現れてくれないんだ


「知っているよ。如月羽矢。お前よりも俺の方が彼女の本質を知っているようだな。教えてやろうか?黒崎久遠が今生きているのか、死んでいるのか。俺との関係」


「僕の方が彼女を知っている」


そうだ、ずっと一緒にいた

小さな時からずっと一緒にいた

だから、こそ久遠のことをよく知っている

久遠が何が好きで何が嫌いか。

この男よりも僕のほうがずっと知っている


「なら、彼女がどうして飛び降りたのかも知っているのか?俺は、知っているぞ」


その言葉に羽矢ははたからみてもわかるくらい動揺した

しらないのだ


久遠がどうして、あの日あの時僕の目の前で飛び降りたのか。

何度考えても答えが見つからない

久遠の残したどれにもヒントになるようなものはない


なのに、どうしてこの男は知っている?僕すらも知らないことを知っているのか?

この男はいったいなんだというのか



どうしようもなく心が波だった





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