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プレリュード 世界の関節を外そうと思うまで -6-

まぶしい

うっすらと目を開ける


体が痛い


あぁ、そういえば殴られたのか


逃げようとして捕まったんだ

手を動かそうとして動かないことに気が付く


焦点が徐々にあってゆく

そして気が付くいた

手足の自由を今度はがっしりと封じられていた


「あっ」


短く小さな悲鳴


これでは逃げられない

久遠が、横たわっている台

その台は、まるで生きていた


近いのはお風呂の足ふきマット

モップのふわふわ部分


体の台から、それの一部が伸びて久遠の自由を封じていた


―――――ぎゃあああっ

―――や、やめろぉおおおお

――――――いやああ


耳に痛い悲鳴の数々

それが、久遠の意識を完全に覚醒させた


その悲鳴は人間のもの


わずかに自由になる頭を動かし隣を見た



地獄は生きながらにしてみるもの


そう、ママは いっていた

その通りだと思った


隣はまさに地獄絵図そのままだった

鬼に、体を解体されるもの

脳から、情報を引き出しているのだろうか、頭にかぶせられたヘルメットから 青い火花が散っていた

謎の薬品を投与されるもの


鬼が人間を解体するそのさまはあまりにも恐ろしかった

メスや注射器そして久遠の知らない機器の数々


「目が覚めたのか」


その声は聞き覚えがある

意識を失う前

私のみぞおちに、こぶしを叩き入れた鬼


「覚めなければよかったわ。」


よかった。

声が出る。


「私も、ああなるのね。お願い教えて、死ぬ前に自分が何をされるのか教えて。」


泣いてたまるか

泣くな 久遠

最後は、凛々しく強くありたい


「お前たちは地球という惑星に住む人間という生き物だな。」


ここに連れてこられたものに、聞き出したのか


「肯定するわ」


鬼に私は何をされるの

怖い


「お前たちのこと、地球のことはだいたい調べ終わった。もろいな。人間という生き物は、ほとんどが使い物にならなくなった。」


使い物にならなくなったってどういうことかは、聞かなくてもわかった

私の隣にいる男の人や女の人のように死んでしまうということ


「私を、どうするの」


ナメクジに聞いたものと同じ問い


「この惑星にいる史上最強の魔物。破滅や絶望を振りまく魔獣の血を、お前に入れる」


魔物や魔獣という言葉に、ここはやっぱり違う場所なのだと思った

私が今まで抱えていた常識が、崩壊する場所



「原液のまま人間に入れても、死んだんじゃない? 」


その魔獣の血液に何があるのか、知らない


「そのとおり。期待していなかったがな。この惑星に住むどの種族も受け付けなかった。」


多くの者の命を奪ってまで成し遂げたいことなの?

その魔獣の血液を他のものが受け入れることが、そんなにすごいことなのだろうか

でも、その血液を入れられるということは私は死ぬということ

どうしたら、死を回避できる


「薄めてやってみた?そうね、私と同じAB型の人間にまず原液を打つ。その人間に程よく魔物の血が回った頃、 私にそれを入れてみるとかどうかしら?」


あぁ、私は、汚い人間だ

自分の命を少しでも延命させようと足掻く

自分の命のために他者を犠牲にすることをいとわない

人は追いつめられると、本性をさらけ出すというが、私の本性はこんなにも醜い


私はさっき自分の醜い心と戦うと決めたのに…

こんなにもたやすく負けてしまう


「なるほど。面白い考えだ。」


そしてその鬼はほかの鬼に何かを指示する

それを見て、自己嫌悪感に満ちた

気を紛らわすために、私は、鬼に尋ねる



「いったい何人さらったの?」

「軽く1000人ほど」


1000人の人間のうち何人がまだ生きているのだろうか


まるで私の心を読んだかのようなタイミングでその鬼は言う


「あと、お前を含めて13人。いや、また一人死ぬな。お前への実験のために」


ぐっ


私は人殺しになってしまった


私は…


でもいつかはこの鬼たちの手で殺される


それでも 罪は罪


―――――あぁああああああああああああ  やめ  やめろっ


この悲鳴の主は私のせいで死ぬのが早まった


胸が痛い

重たく冷たい

胸に奥に穴が開き底に風が通るような



「お前の罪。」


鬼は囁いた


ズキッ


そして別の鬼が持ってきたその血液を私に入れる


ひんやりとして、細くとがった針が皮膚を通りそして血管へと入っていく


その最強の魔獣の血液が、ゆっくりと久遠を蝕み始めていた







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