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Petite possibilité~わずかな可能性~



賀上は目の前に映し出されている光景に愕然とした

これは、黒崎だ。黒崎久遠だ。

数カ月は、この姿の黒崎と一緒にいたのだ

見間違えるはずがない

黒崎久遠がこの映像に写っているのはおかしい

黒崎は死んだ

あの岬のがけから飛び降りて助かるはずがない

如月は黒崎の生存を信じているみたいだけど、賀上は信じていなかった

死体が見つからないのは、波にのまれて遠くに流されたか、あまりにもひどい溺死体だから如月にだれも見せず真実を伏せたかのどちらかだと思っていた


「幽霊・・・」


まさか、そんな非科学的なものがいるわけない

果たしてそう言い切れるだろうか

賀上自身が持つてれーポートの能力もまた非科学的なものではないだろうか


護人(まさと)!!この映像を絶対に如月に見せるな。ほかのみんなも頼む。」


賀上の剣幕に気おされるようにしてこの映像に群がっていたものはうなずく


「いいけど。どうして?」


・・・


「この映像にうっつている人間は・・・如月の彼女で、なくなっているはずの人間だ。」




5分にも満たない映像

ライムグリーンの髪に琥珀色の瞳を持つ美しい少女が歌っている映像

背景の映像は、合成だろう

コロコロと歌詞に会った映像がかわる


少女は、ドレスを身にまとっている

カットカットにより変わるドレス。


美しく妖艶で押して可憐で・・・



クルリクルリと舞うように踊る姿。


なんど みてもやはりこの少女は黒崎久遠だ



「護人。この映像の作成者と発信元とかわかるか?」

「わかった」


護人の能力は、発電能力(エレキネシス)だ。

護人は主にこの能力を使って情報収集をしている

少々違法な時もあるが…

護人が自分のパソコンを取り出し開く

複数のウインドウが目まぐるしく表れ、消えていく


賀上は、護人が何しているかくわしいことは、わからない。

もう一回映像を見る


すると、やってきた雪菜が映像を覗く


「あっ。このドレスわたし知っています。Robe of an angel という有名なドレスメイカーの今月新作です。。トレーンのフラウンスが裾にアクセントを加えているこの形間違いないと思います。えっ、こっちはARISAの新作です。団扇をモチーフとして織り上げた西陣織ね。」


雪菜は、映像に映るドレスに目を輝かす

ひとしきり興奮して騒ぎ終わった後雪菜は疑問を今更のように口にした


「ねぇ、賀上くん。なんで、久遠ちゃんがドレスきて歌って踊ってるの?」


「こっちが聞きたい」


「久遠ちゃん生きてたんだ。何で飛び降りたのか不思議だったけど生きててよかったよ。羽矢君の話だと死んじゃっている可能性が高そうだったから大泣きしたけど生きててよかった。」


感動、あるいは嬉しさのあまり雪菜が泣き出す

賀上は、冷静に突っ込む


「でも、如月の話が本当だと仮定してどうやって助かったんだ?」


あの話が本当なら死んでいる

なら、如月がわざわざ鏡にウソを教えたのか?

そうする理由が思い当たらない

それに、如月は死んでいる可能性が高いことをほかの誰よりも知っているはず

信じたいって口では言ってるけれど、揺れているのがバレバレだ


黒崎久遠が行方不枚となってから数週間如月は無断欠席していた

矢的さんの話だと、何も口にしようとしないから無理やり食わせた 感じだった。

生きる活力がなく、死んだような眼をした如月を実は一度見たことがあった

偶然だったけど・・・。


ありえそうなのは、黒崎久遠が能力者で、俺みたいにテレポートしたという可能性

そうすれば助かる可能性はある


もしそうだとして、何のためにそんなことをする必要がある


「投稿者のなまえは、レベッカ・テンペスト。日本から発信されている それ以外はわからない。不自然なほどに、情報にロックがかけられているよ。ちがうかな、消されているっていうかなんて言うか。悔しいな。」


警察の資料を探るよりも難しいってどういうことだろう。そうブツブツと護人は文句を言っていた

こいつ、警察の資料閲覧ってそれ犯罪だろう。

もし、護人の言うことが本当だとしたらあまりにも不自然だ


ずっと黙っていた大川のおっさんが口を開く


「旧約聖書にも登場し、うっとりさせる者、魅惑する者、束縛する者という意味のレベッカ。古いフランス語の「嵐」を意味する姓。」


大川のおっさんは、司書をやっているらしい

だからこういう話には詳しい


そのことを聞いた雪菜は、何やら意味深な笑みを浮かべる



「もし、これが本当に久遠ちゃんだとしたら、久遠ちゃんらしいって思うよ。」

「黒崎らしいって、どういうことだ」


瑠璃さんも、雪菜と目を合わせて納得したようだ

一体どういうことだ?



「私、羽矢くんや賀上君雪菜ちゃんやかなでちゃんの話からでしか久遠さんのことしらないけど・・・嵐は、束縛し、魅惑し続ける。そう考えれば…ねぇ。」


瑠璃さんの言葉の続きを、雪菜が続ける


「嵐は、久遠ちゃんを表すんじゃない?あの子が死んだように見せかけて実は生きているっているおちだとしたらまさに暴風のように人の心を蹂躙し、踏みにじっているわけでしょう。束縛し魅惑するもの。これって、久遠ちゃんが羽矢君を束縛していて魅惑し続けているってことでしょ。自覚的にね。」


雪菜は、かなでちゃんが、かわいそうだけどと小さくつぶやく

賀上も気が付いていた、牧島かなで は、如月に気があるだろうことには、気が付いていた

如月も気が付いていたようだ。だけど、どうすればいいのだろうか?そういう感じがした。

あいつは、いまだに黒崎久遠という幼馴染にして恋人のことを思い続けている

それを見ていると、いい加減あきらめて新しい彼女でも見つけろよとかいえなくなる

あまりにも一途に想っているのだ。

生死は関係なく、黒崎久遠を想っている


なぜ、飛び降り自殺なんてしたんだ?黒崎も如月のことをあんなに思っていたじゃないか。

相思相愛だった。

それなのに、どうして今あいつの隣に黒崎はいないんだ


心の中で毒づく



――――――――――レベッカ・テンペスト




ダダダダダッ

二階の和室から羽矢は、一回の喫茶店まで駆け降りる

手には、久遠の残していった端末を握りしめている

開店前の一階の喫茶店には、大川さん夫婦、マスター、雪菜、護人くん、賀上がいる

賀上が、あわててなぜかパソコンのふたを閉める

そのうちの一人に頼む


「護人くん。お願いがあるんだこの動画を調べてくれない?」


そういって、羽矢は、息を整えお願いする

彼ならば、この動画の中から様々な情報を読み取れるだろう


みなが、なぜか羽矢の持つ端末に表示された動画を見て息をのむ

この反応は予想していなかったので少々驚かされる

だけど、今はそんなことよりも少しでもこの映像についての情報が欲しい


「賀上さん……」

「あぁ、仕方がない」


護人くんは、閉じていたというかさっきあわてて閉じていたパソコンを開く

電源を入れたパソコンは、閉じる前に表示されていたページを表示する

羽矢のもとに届いた動画と同じものだ


「如月、お前どうやってこの動画を知った?おまえ、こういうの興味あんまりなかっただろう?」

「久遠の残した端末にメールが届いて開けてみたら、URLが貼ってあったんだ。クリックしたらこの動画に飛んだ」


ありのままいうと、雪菜と瑠璃さんが顔を見合わせる。


「俺たちが見つけたのは偶然だ。護人が、すごくきれいな、動画あるといって見せてくれたんだ。この動画についてわかっていることは、レベッカ・テンペストという人物が投稿したものだということくらいだ。」


「レベッカ・テンペストが、ほかに投稿した動画はないみたいです。」


久遠、君なのか?

もし、生きているのならどうしてこんな間接的な方法で知らせてくるのだろうか

久遠、久遠


あの日の助けられなかった

海に消えていく姿が、再生される


生きている可能性を信じているなんて口では言いながら、誰よりもそれが絶望的であることを知っていた。消えゆくさまをこの目で見ていたのだから。


今回のこの動画は、久遠が生きているかもしれない可能性を高めてくれた

他の人にとっては、ほんの少しかもしれない

それでも、羽矢にとってはその少しがとても大きなものだった

久遠を失っているのに羽矢の世界は久遠中心で回っている気がする


そう今も昔もずっとそうなのだ

久遠を意識しない日はいい意味でも悪い意味でもなかった

久遠は羽矢にとって真昼の太陽であり夜の月なのだ


「どんな些細なことでもいいんだ。この動画について調べてほしい。」

「わかりました」


久遠、生きているかもしれない。もし、生きているのなら会いたい。会って話したい。聞きたいこともある。それでも、もし本当に久遠が生きているのなら、許されるのならもう一度彼女を抱きしめたい。たしかにここにいるといってほしい。


「如月、もしかすると全くの別人かもしれないからな」


釘をさすように賀上が言う

賀上の言うことはもっともなことだと思う


「たしかに、トリックスターの影響で顔立ちとか体格とかもまた変わってしまったものがいる。似てない親兄弟がいるのと同じように全く血のつながらないものたちがそっくりな顔立ちをしているという話も聞く。」


賀上の発言に大川さんがフォローを入れていく

わかっている

それでも、羽矢にはこれが黒崎久遠以外の何物でもないと思う


賀上は、もし違っている場合

羽矢が、落ち込まないようにしているのだ

友人のその思いやりがとてもうれしい


「羽矢さん、その端末かしていただけますか?」

「うん、いいよ」


護人くんに、持っていた端末を渡す


「このメールの送り主について調べてみたんですけど、まだ全然ですけどね。今このメールアドレスは使われていないようです。もともとこのメールアドレスを使っていた人物についてちょっと調べてみます。」


カタカタと調べる

画面上に映るもののほとんどが一瞬で消えていく


「この、メールアドレスを使っていた端末の持ち主は……って、おい嘘だろう」




護人くんは驚いた声というより焦った声を発した











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