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プレリュード 世界の関節を外そうと思うまで -5-

「こい」


ナメクジは、そう命じる


ベチャリベチャリ


うっ


「言葉が分からぬ訳ではあるまい。ここでは、言語の壁はない」


私にそっちに行けと言うの

その気持ち悪いあんたのそばに?

絶対に無理よ

生理的に受け付けないの



でも、言うこと聞かなかったら、私はいったいどうされるの…

最悪を想像し、逆らうよりもまずは従ったほうがいいと判断した


「こい」


もう一度命令される



今こいつの殴りかかってこの部屋に出たらどうなるだろうか

無謀

その2文字しか思い浮かばない

私はここがどこかもここにいる敵の数も何も知らない

死に、行くようなものだ


渋々ついて行くしかない

鎖が私が一歩歩くごとにシャンシャンとなる


もし、敵の戦力も戦力も戦術も通じないほどの力があったら今すぐこのナメクジをぶちのめすのになぁ


ないものをねだっても仕方がないのは分かっている

だけど、今みたいに自分の力が何もないって思い知らされるときいつもそう思う

努力も何もせずに対価を支払わずに手に入れた力は、きっと毒なんだろうなけどね

そうぼんやり思う


「私になにをするつもりですか?」


立ち止まり目の前のナメクジを睨めつけるように見る

ナメクジは立ち止まりもせず

予想道理、人を見下したようなむかつく返事を返された


「ふぉ、話せるのか。会話のできぬ生き物かと思ったよ」


見下されていた

人間として地球であった優越感はここではない


奥歯がギリッと鳴る

心の中でくすぶるものを無理やり押さえつける

泣きたくたるほど、屈辱的だった


こんなナメクジ風情に見下されているなんて…


でも、向こうも同じように私を見下している

この世界で、私はナメクジ以下の存在

それが無性に腹立たしい


「ここはどこ。あなたは何なの。私をなぜ誘拐した? 答えられないの?あなたは私の言語も理解できるのでしよう?できないの?」


見下すような挑発の言葉

できるだけ、そのまま返す


わからないままでいるのが怖い

何もない空間に立っているような気がして不安になる


今はどんなことでもいいからここの情報がほしい

素直に、刃向かわず、従ったところで意味がない

このナメクジは私のことを完全に見下している

素直について行ってもそれが当たり前みたいにとらえられるのではないか?

それならば、素直にこいつの後をついて行ってもつかなくても変わらない


私は誰かの機嫌を伺いながら生きるなんて器用なまねできない

それに私はこのナメクジの言葉の中でしか、ナメクジの機嫌がわからないから期限をうかがうなんてことできない


「ふん。お前に知る権利はない。よって私は答える義務を持たぬ」


まぁ予想はしていたけど…

このナメクジの後を追いかけるように、この先を歩むしかない


「お前は大事な実験材料だ」


実験―――――人体実験

私を解体して、人類を知るのね

私たち人類もまた宇宙生物を捕まえたらきっとそうする

器を知ろうとする

中身よりもまず肉体のほうを知ろうとする


このままでは、私に―――未来はない

このまま体中にメスを入れられ痛みにあえぎながら絶望の中死ぬなんて嫌だ

耐えられない



逃げなきゃ


逃げてどうするつもり久遠?

だれにも見つからないところで死にたい

死体すら残さずに、死ぬなら死にたい

私の死体を解剖しホルマリン漬けにされて何十年も研究材料にされるくらいなら獣に生きながら食われるほうがましな気がする


後ろを向き先を急ぐナメクジ

手足の自由を奪っていた鎖でナメクジを殴ろうとおおきく振りかぶる


シャン


そう音を立てて、ナメクジをたたこうとした

しかしそれは不可視の壁に、阻まれる


「っ…」


失敗した逃げなきゃ

逃げなきゃ殺される


背中を向け、逃げる


ドクドクドクドク


「おい、お前。何をしている」


目の前から声がした


ナメクジの声ではない

それよりも低く


鬼だった

緑色の体をした鬼

頭に二つの角がある



さっきのナメクジと違い

みられるものではあるけれど


見た目的に強そう


そしてその鬼は、見た目通りに強いということを身をもって次の瞬間身をもって知ることとなる


「逃げ出したのか…」


ナメクジの声


ふっ


緑の鬼の姿が次の瞬間 いきなり目の前にあった


「なっ」

さっきまであんなに遠くにいたのに、あの距離を一瞬で詰めるなんて人間わざじゃない

人間じゃなく鬼だからいいのか…


「逃げられると思っていたのか?むだなことをする」


そして、鬼は久遠のみぞおちにこぶしを入れた


「かはっ」

息ができない

痛いそう感じるのと同時に久遠の意識は急速に飛びのいて行った









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