Filleavecvoyance ~千里眼 を持つ 少女~
少年は、頭の痛さで目が覚めた
ズキズキと痛む。
痛む頭を抱えながら体を起こす
「ここどこ?」
少年は、見知らぬ場所にいた
どうして自分がここにいるのかわからない
ただ、ひどく悲しいのだ
涙が、少年の頬を濡らす
少年は自分が泣いているわけを知らない
ただ、胸の真ん中に大きく黒い穴が開いてる気がした
少年が胸に触れたも目で見ても穴など空いていないのにそんな感じがするのだ
おおきく空いた穴に冷たい空気が入り込んですぅすぅする
空気が入るごとに少年は悲しくなるのだ
「いたい」
頭の痛みよりも胸の痛みのほうが大きいのだ
傷なんてないのに、痛むのだ
あたりを見回すけれど、ここがどこであるか尋ねたかったが、この部屋には少年以外いなかった
「おとうさん。おかあさん。どこにいるの?」
少年は、両親を呼ぶ
「おとうさん。おかあさん。」
幾度読んでも、両親からの返答はない
少年は悲しくて、不安で怖くて泣いた
泣いていたらいつも見つけてくれた
おかあさんもおとうさんも、少年を見つけてくれるのだ…いつもなら
「うっうっ え~ん」
おかあさん。おとうさん。はやく、ぼくをみつけて。
武藤 叶
それがわたしの名前。
わたしはね、百鬼夜行の鬼の一人なの。
わたしの鬼としてのなまえは、千里眼
過去・未来・現在を見通す能力なの
今、部分的に見聞きし、感じたビジョン
これは、未来の?過去?現在?
死神様に報告しよう
少女は、あの方の部屋までてくてくと歩く
死神様の部屋の前にいる守衛のくまさんやうさぎさんのぬいぐるみが少女を通せんぼする
「 通りゃんせ 通りゃんせ
ここはどこの 細通じゃ 」
くまさんのぬいぐるみがうたいます
少女は、くまさんの言葉にこたえるために大きく息を吸う
「 死神様の細道じゃ。
ちっと通して 下しゃんせ」
ぬいぐるみさんは、合言葉と、音声認識する。
それから、叶が歌っている間に、顔認識や網膜認識をしているのだ
続いてうさぎさんが歌います
「 御用のないもの 通しゃせぬ 」
ココでは、このうさぎさんの歌が、“御用はなんですか?”と尋ねていることになるんだ
ドクターチガヤが、作ったセキュリティーシステムだ
ドクターチガヤのコードネームは、亀姫
コードネームを付けたのは、私たち百鬼夜行の主 死神―――奈落らしい
亀姫とは、
猪苗代城(亀ヶ城)に住んでいるとされる妖怪なんだって。
江戸時代の怪談集『老媼茶話』っていうのに、名前が載っているらしいの。
亀姫に挨拶のない 猪苗代城の城代 堀部主膳を 呪い殺す話しになっているんだって。
怖いお話だよね。
それでね、城代堀部主膳に姫への挨拶を促すのは使いらしい禿頭の子供で、姫自体は出てこないの。
よって、亀姫の姿形は不明なんだって。
わたし、まだドクターチガヤにあっていないの。
死神様は、よくあってるけどほかのみんなはあったことほとんどないっていってた
極度の人見知りというわけではなく、彼女の興味の大半が研究や開発、実験なの
それらがエキスパートの代わりに、ほかのことが全然興味がないみたい・・・
あったことないけど文面場やスクリーン越しでなら話したことはある
新しい発明品の説明と化するのに。
まだこれは実験段階だといっていたのを聞いたことがある
「ビジョンをみたの。男の子が、とっても痛そうなの。助けてあげたいの。死神様おねがい!」
用件を聞いたうさぎさんとくまさんは、道を譲る
「行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ」
私は、てくてくと先に進む
奈落はセキュリティーいらない
そう、言ったんだけど・・・ドクターチガヤが押し切ったとか・・・
でもその裏には、大人の人たちが心配で頼んだらしい
主に万が一でも起こったら…
そう思うと心配らしい
突き当りに扉がある
コンコンコン
ドアをたたく
「入ってこい。千里眼」
千里眼は私のコードネーム
媽祖の随神となった、千里眼という鬼の名前。
媽祖は、航海・漁業の守護神として、中国沿海部を中心に信仰を集める道教の女神さまなの
奈落にぴったしだよ。
わたしはね、奈落の秘密を知る数少ないもののひとり
でも、その秘密は大事だから誰にも内緒なの
あ、奈落は、女の人みたいにきれいだけど男の人だよ…
「はい。奈落」
部屋に入る
奈落の部屋はいつも思うけど必要最低限のものしかない
さっぱりとした部屋だと思う
「助けを求めていた男の子の話聞いてやるから座れ。」
「あ、うん」
部屋にあるソファーに腰掛ける
奈落は、私の来訪をくまさんとうさぎさんの報告で知ってたみたいで、手に2つのマグカップを持ってやってきた
私の前におかれたマグカップの中にはなみなみとオレンジ色の飲み物が注がれていた
オレンジジュースだ
奈落のマグカップの中には、黒々とした液体がパチパチと音を立てていた
「あのね、さっき見たの。たぶん、現在だと思う。」
「もう一度見れるか?」
やってみる
マグカップを、テーブルに置き静かに目を閉じ規則正しく呼吸をする
――――――――――そして 見た
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