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Vague de l'infraction~百鬼夜行~  -2-

「この関節の外れた狂った世界には、神はもういない。」


感情を挟まず淡々と後ろの気配は言う

若い男の声だ


「いるのは俺たちだけだよ。俺は、この力を悪事に使われるのが無性に腹が立つ。アナタのその行動がほかの罪なき能力者を、罪人にさせていることに気が付かないのか。」


腹が立つ

そういったとき後ろに立つ男から、激しい怒気を感じる。

荒れ狂う激しい怒りは次の言葉を紡いだときには嘘のように静まっていた


斉藤 五郎はこわごわと後ろを振りむいた

そこにいたのは、銀髪の長い髪の男

白い仮面越しに見えるのは、金色の目


「アナタが、そんな風にしか能力をつかえないというのなら、俺がその力を奪うことにする。それはどうやらあなたには過ぎた力のようだからな。」


「そんなことできるはずがないっ」


この力が奪えるはずがない

誰にも奪えない

そう、この力は選ばれた私だけの力


「できるんだよなぁ。それが…まさか自分だけ特別な力もってるとか思っちゃいないよな。聞いたことあるだろう?オレらのこと」


背後で、赤い髪の男が、嬉々として言う



聞いたことがあった

黒いコートを羽織った死神

死神が鬼をひきつれやってくるとき、彼らの気に入らぬものは地獄へ連れて行かれる

都市伝説だと思った


銀色の銃身

月の光を受け赤い色に染まる


鎌のように銃をもった死神


「あんたはっ・・・」


そう彼らは、始末屋とも呼ばれるものたち

悪事を働く能力者や凶悪犯を捕まえ、裁くという


「百鬼夜行」


銀髪の男は、その名を口にする

彼らは、いつの日にかそう呼ばれるようになったのだ

世の中の夜の部分を行く人ならざる鬼


「てめぇが、どうして死神の目の前にいるか知ってるよな」


赤い髪の男が、確かめるように言う

しかし、斉藤五郎はあれから何もしゃべらずに銀の銃を構えた銀髪の男から目が離せない


自分は逃げていたはず

それなのにいつの間にか、この男の前にいたのだ

地獄の終着駅とでもいうように、この男が月明かりに照らされるように立っていた

この男だけではない、幾人かの人影がある

老若男女さまざまな人影

異形の体をもつもの

美しすぎるものも・・・


「選ばせてやる。このまま俺に心奪われ、心を殺されて、生きる屍となるか。ツミを償い、人様に尽くすか。選ばせてやる、これ以上堕ちたら選択肢はなくなる。」


銀髪の男が夜のように静かな声で言う

死刑宣告のように・・・


言葉を言い終えたと同時に長い髪の男の存在感のようなものが肥大化した

空気が、ビリッっと震えた気がした

銀髪の長い髪の男が強大化した

目をこすると元に戻っている

錯覚かっ・・・


逃げられない

逃げてもまたこの男の前に出ていく


そう悟った

この男から出る圧倒的なプレッシャー


この男の後ろにいるものもまた能力者だ

百鬼夜行

能力者で構成されている

人間の協力員も結構いるらしい

こいつらにはかなわない


「心を奪われても生きているのだろう」


そうそんなことはできるはずがない

人を廃人にするなど


「あぁ、生命活動は今まで以上に規則正しくする」


罪を償うなどごめんだ

それでは今までしてきたことが無意味になる

できるはずがない


「やれるものならやってみろ」


にいぃっ


この時期の目がさらに光る

男の口元には邪悪な笑みが張り付いている


「選択は、なされた。」

「名前を教えてくれっ」


「アナタに教える名は、あいにくだが持ち合わせてはいない。」


無慈悲に鎌を振るう死神のように銀色の銃のトリガーに指をかける

指を押し込むように引いた


――――――――ピキュン


静かな夜を切り裂くような音


斉藤五郎の頭にその銃弾はのめりこむ


「人殺しっ」


選択しても意味がないじゃないかっ

どっち道こうして殺されるのだろう


だから、最後に恨みがましくそう言い放った


それが、斉藤五郎が斉藤五郎として生きた最後だった




暗い公園

そこには初老の男の影があった

体のどこにも外傷はない

しかし男の目はどこかうつろで、焦点が合っていない


のったりとした足取りで歩く


いかなくてはならない


男が歩き出し十数分立ったところで立ち止まる

男の目に赤いランプの点滅が見える


「自首します。私が、犯人です」


そういって斉藤五郎だったものは、警察署に入っていった






「心を殺されて、生きるしかばねになることを選んだとは・・・」

「でも、面白い力が手に入ったんじゃないか?奈落」


奈落と呼ばれた銀髪の長い髪の男は、隣にいる赤い髪の男に言う


「洗脳ね・・・まぁ、利用させてもらう。」


奈落の手には、斉藤五郎の頭を面にいた弾丸があった

弾丸を奈落が握る

するとその弾丸は次に奈落が手を開いた時にはどこにもなかった


「お前の能力はよくわからない」

「わからないのは、オレもだ。だが、利用できるものはすべて使う。望みのために・・・」


やがて、彼らの姿は霧に覆われ見えなくなった





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