Un sens de culpabilité de la cuillerée à soupe~スプーンひとさじ の罪の意識~
「なぁ、お前にだけ、声が聞こえなかったわけ教えろよな。」
戻ってきて、如月と二人きりになった時にそう切り出す
如月は、ギクッという表情になる
聞かれたくないことを聞かれたという表情
「俺にもはなせねぇのか」
しぶしぶという感じ
観念したというように重たい口を如月は開く
「たぶん、僕の能力のせい。」
如月の能力は、結界
結界の能力のせい?
「内側にも張っている。常駐で。小さい男だよ。僕は・・・。」
苦笑いとともにそう白状する
罪悪感を感じているのか?
なにに?
わかりきったこと、如月は仲間であるファンタジアのメンバーに対しても結界を張っている。
信用していないように思われるんじゃないか。
仲間を集めたのは自分なのに・・・
そう思っているんだろう
正直俺にはどっちだっていい
むしろ、リーダーが簡単に部下に心を読まれたり、消されたりする方がどうかと思う
何物にも影響されないことも必要だと思う
「そうか?まぁ、世の中用心することは必要だ。道中でいきなり刺してくるやつもいるんだぜ。それと同じように考えればいい。俺は気にしない。小さい男とか自分を卑下するな。黒崎が好きになった男はそんな男かっ?知っているか、黒崎はああ見えてモテていたんだぞ。あいつなら、お前以外の男だって簡単に付き合えたはずだ。それを振ってまでお前と付き合ったんだ。あいつにふさわしい男になれよ。如月は信じているんだろう。黒崎の生存を・・」
何やっているんだろう
ホント
黒崎生きている可能性は薄いと思うんだけどさぁ
如月から聞いた詳しい話を、思い返す
あの高さから海に落ちた。
生きているはずがない
死体が出てこないのだって、そんなに深い意味もなくただ、遠くに流されてしまっただけだろう
それでも、如月は黒崎の生存を信じることで、いまを生きているから何も言わない
まぁ、それでも、もし黒崎が生きていたらこんな感じの言葉言いそうだよな
正直あまり黒崎のことを知らない
如月の好きな奴程度のことしか
中学は言っておんなじクラスになった時、如月がたまに目で追ってるからどんな奴だろうと思って俺も見ていた程度。
ほどほどに社交的
悪口とかは言わないタイプ。
守ってやりたくなるようなタイプに一見見えるけど、芯が強いタイプだな。
「あ、うん。そうだね。久遠に笑われる。僕のこんな情けない顏見たら、不機嫌な顔されるよ。」
あはは
そういって苦笑いを浮かべる
まぁ、いいか
「ふたりきりで何やってるのっ。瑠璃さんがご飯作ってくれたよ。初任務のお祝いだって。」
雪菜がやってくる。
瑠璃さんの料理は本当においしい
賀上の家にはどうせ、誰もいない。
遅くまで外にいても怒ってくれるような人が家にはいない
賀上の両親は離婚している
今は、父親と二人暮らし
その父親も仕事ばかりで、めったに家に帰らない
まぁ、顔を合わせても会話続かないしいいか
だからこそ、賀上はこうやってファンタジアの活動を自由にできる
如月は、矢的さんと実質上二人暮らし
矢的さんいは過保護のとこあるからいちいち連絡入れなきゃならないそう、如月のやつがぼやいていた。
ファンタジアに集まるやつは、いろいろ事情があるのかもしれない
事情があるからこそ能力があったりして…
時々そう思う
正直初めは、心配だった
子供が立ち上げた夢物語のような組織に賛同してくれる人は誰もいない
だけど、大川さん夫婦をはじめとするみんなが協力し賛同してくれた
賀上は、今日の料理はなんだろう?
そう思いながら、歩いて行った
「うん。そう。初任務完了よ。」
雪菜は、誰もいないところで誰かに電話をかけていた
雪菜は、周囲に気を配っている。
誰かが来たら、すぐに通話終了ボタンを押すためだ。
親指はそのボタンの上に置かれている。
それほどまでに聞かれては、ならない会話
会話自体は大したことはない。
会話を聞かれてもごまかせる自信はある。
きかれてはならないのは、通話相手の声
「おめでとう。これからも、たのむ。雪。」
電話口から漏れ聞こえるのは、声
雪菜を、雪と、呼ぶ者
ドキン
胸の高鳴りが一層高くなる
きいてはいけない声
きいていることを知られてはいけない声
ほんの少しの罪悪感
皆を裏切っているわけではない。
だけど、裏切っているような気持になってしまう
悪いことをしているのか?
そう聞かれても、どう答えればいいのかわからない
悪いことなのかもしれないし、そうでないかもしれない
ホントはもっと話していたいけれど、心の中にある罪悪感にも似た何かと緊張感が会話を早々に切り上げる
これでは、ただの報告みたい
「ありがとう。またね。」
「また」
短く返事が返される
短いけど温かみを感じる声
もっと聞いていたい
できることなら顔を見て話したい
でも叶わないだろう
電話終了ボタンを押し安堵のため息を漏らす
張りつめていたものが徐々に溶けていく
雪菜にとってこの通話相手は、秘密だった
切り終えた、ばかりの画面
そこに 表示される文字
――――――――――
その文字を数秒見つめる
パタン
携帯を閉じながら空を見上げる
今宵は紫色の月にオレンジのうすいオーロラ
今までの世界と違う
ここは新世界
雪菜が、地に足をつけられる世界
雪菜はこの新世界を歓迎していた
長年の望みがかなった
もうかなわないと思って、幾度もあきらめかけた。
それでも、あきらめきれなかった願い
だから、雪菜はこの世界で生きることに迷いはない
「この世界を楽園へと変えるのも地獄へと変えるのも今を生きる人間の行いの中にある」
ある人の言葉
雪菜の胸の奥の方に刻み込まれているその言葉
だから雪菜はこのファンタジアで活動する
楽園とならなくても、今まで通りの暮らしを願う
「雪菜ちゃん、片づけてつだってもらえるかしら?ごめんなさいね。」
瑠璃さん呼ぶ声が聞こえる
行かなくてはいけない
スぅ
夜の冷気が体の中にしみこむ
にっこりと誰に笑いかけるわけでもなく笑みをつくる
そこには、ファンタジアの雪菜としての顔があるだけ
さっきまでの表情はない
「はぁい。いまいきまぁす。」
雪菜は、片づけへと急いだ




