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バル・マスケ~仮面舞踏会~  作者: 桜 夏姫
★Variations brillantes★
30/81

★Variations brillantes★~華麗なる変奏曲 ~ -4-


自分の契約者に成り行き上仕方がなかったとはいえなったのは人間という種族のメス

名前を、黒崎久遠という。

聞きなれない、そして言い馴れない音

奇妙な存在だった


白蝙蝠族の襲われた時、手をかそうとした

しかし、その手をはねのけるようにして自力で乗り越えた


己の内に宿る魔力を放出するという形で、危険であったが・・・

白蝙蝠族の若僧は、あの魔力の塊にあっけにあとられただろう。

だが、あれは我が契約者の力の一端でしかない。

魔獣の種族は 外には冷たい代わりに、仲間には情に厚い

エスポワール自身も例外ではない


いま目の前にいる、とてもとても小さい存在

小さくもろい存在

魔獣たちに比べれば大概の種族は小さい

しかし、我が契約者はさらに小さい

簡単に死んでしまいそうだ



「我の名は、エスポワール。我が契約者にして共犯者よ。」


とてもとても小さな我が契約者は、震えていた

我の姿を見て震えている


恐怖


「我が怖いか?」

「うん。こわい。大きいもの、あなたは私の数十倍大きい。自分よりも多い物に対面して恐怖を覚えるのは普通よね。」


否定すると思った

しかし、あっさりと肯定する。


「我は、我より数十倍大きいものにいまだ遭遇したことがないからわからぬ。しかし、恐ろしいな。」


固い言葉

契約者は、ぎゅつとおのが手を握る


「私は、あなたが嫌い。あなたのせいで私の人生計画が無茶苦茶になったのよ。責任とってよね。私、ここがどこなのかいまいち理解していないの、話してほしいわ。それから、あなたは私を私が住んでいた世界に戻すことができるのかしら。私は地球という青い星の、日本という国に住んでいたの。できる?」



早口でまくしたてる

さっきも言っていた気がする。

人生計画がどうとか・・・

しかし、それもそうだろう。

我が契約者は、連れ去られてここに来た

連れ去ったやつらの、目的は新たな星に住む未知の生物について知るための研究

それと、その生物が魔獣の血に適応するか試したかったから・・・

少なくともこの船にさらわれた時点で彼女の命運は決まっていた

この船は、魔獣のことを研究する船


魔獣の存在を恐れた故郷の星のものは、魔獣を最先端の技術で作り上げた船の上で研究することに決めたのだ

ほかの惑星について調べるついでに、魔獣を星外に追放した


魔獣の力は魅惑的でほしい

しかし、魔獣は恐ろしい


だから、自分たちから離れた場所で多少の犠牲覚悟で研究するために・・・


「ちょっと、きいてるの?それとも聞こえないのかしら?(そんなに大きな耳がついているのにっ。まさか私が豆粒みたいに小さいから存在自体見えないって?あっ、でも答えていたし…??)ちょっとうんとかすんとか言いなさい。」


心の中の声を魔獣にはすべて聞こえていることを、知らない


魔獣にはもちろん契約者である久遠の言葉は聞こえている

音として聞いているわけではない

人間と違うのだ




「聞こえている。久遠といったな我が契約者。久遠、お前の世界、地球には戻れるはずだ。別次元にあるわけではない。同一の面にある。ここは、船。久遠の国の言葉で言うなら、宇宙船というやつだ。我のいた世界ははるかかなた向こうに存在する。この船から久遠の住んでいた星はそんなに遠くない。帰れる。かえしてやろう。」


久しぶりに、長くしゃべった


「帰れるのね。」


(よかったこれで、謝れるし伝えられるわ)


安堵したのが伝わる

我が契約者はそれを心配していたのか


確かに、帰りたい

かえってやらなきゃいけないことがある。

その思いが強く伝わってきた


「必ず返そう。約束しよう」


魔獣の言葉を聞いて目を輝かせて喜ぶとまでは言わないけれど、喜ぶような反応が返ってくると思った

しかし、我が契約者は顔を伏せる

長い前髪が、邪魔をしてその表情は見えない



(約束・・・でも、私が誰かとした約束の半分以上は守られたためしがない。約束したことを約束した相手が忘れたり、意図的に忘れる。)


我が契約者は、どうやらわれのことを信用していないらしい

たしかに、この者の記憶を読んだ時しった、世界

ウソ、偽りにまみれていた。

魔獣のいた世界もそうだ

どの世界も変わらないのか・・・


どうしたら信用して、この封印を解いてもらえるのだろうか


「信用しろと言っても無理か?我が契約者は、われのことが嫌いだったな。しかし、信じてほしい。裏切りはしない。」


同族ではないが、同族に似た何かである我が契約者のことをだましたりはしない

そのことをどうしたらわかってくれるだろうか


「っ、私は私の望みのためにこれからあなたを利用することがあるかもしれない。その時は同意を求めることを約束する。だから、あなたもそうしてくれないかしら?わ私たちは共犯者。信頼関係は大事よね。

いい、私に内緒で勝手に罪を犯さないでよ。もう、あなただけの罪じゃない。私の罪でもあるのよ。」


まっすぐとにらみつけるようにこっちを見る

小さな存在のはずなのに、なぜか大きく感じた


「その封印を外せ。我は、解放される。汝を、返そう」


べりべりっ

ビリッ


次々と魔獣を縛るものが、消えていく


長年奪われていた自由

それが今取り戻される


魔獣は、封印を解かれたら、やりたいことがあった

自分をこんな風にした奴の抹殺


しかし、そやつは魔獣ほど長生きでないだろう

もう死んでいる

死んでいる奴は、殺せない


しかし、今やることがある

我が契約者を地球という惑星に返すこと

我もついていこう

面白そうだ




――――――――――キィイイイイイン


金属音がした

青い光が魔獣と、久遠の視界を、埋め尽くした







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