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プレリュード 世界の関節を外そうと思うまで -3ー

目の前の壁に違和感を感じた。

他の三面の壁とは何かが違う気がする。


なにが違う?


じっつっ


穴が開くほど、壁を見た

見ただけでは、わからない

さわりながら確かめていくことにしよう

目の前の壁にそっと近づき指をはわせる

体感時間で、5~10分ぐらいそうやって探ってみた


すると違和感の正体に気がついた。

壁に微妙な隙間があるのだ

その隙間をほかにも探してみた

それは下の方と、はじめに見つけた隙間から両手を広げたくらいの距離にもう一つ隙間があった


身長はあまり高くないから上の部分は確認できなかったけれど、上の方にもこの微妙なすきまがあるのではないだろうか


確証はないけれど、この微妙な隙間はきっと出入り口になるのではないだろうか

私がこの部屋みたいな空間にいるということはどこかに出入り口があるはず

それがこの微妙な隙間で構成される扉ではないだろうか…

まぁ、私を閉じ込めてから壁を作って出口も入口もないという可能性も0ではない



しかし、それにしても、ドアノブもないし鍵穴もない

オートロックか何かで外からしかあかないのかなぁ

困った?


思いっきり、勢いで外してしまったこの錠も、もしかしてかなりやばい


シャラン


さっきまで、久遠を捕縛していた鎖

外したままの鎖をかるくふりまわす


このまま、入ってきた人間をノックアウト!!

できたらいいのになぁ 


ははは


できるわけがないよね

そんなに都合よくものほと進むわけない


はぁ


ため息をついたその時

空気が震えた


ZUN


えっ


ZUN


気のせいじゃない

今確かに何か聞こえてきた

何か、重たいものが、近づいてくる


誰か来た?


急いで外してしまった鎖が、ついているように見せかける

じっと、息を潜めて「何か」をまつ


いつの間にか 爪を食い込むほどに握り閉めた手はじっとりと汗ばむ


ドクンドクン



自分の心音がやけの近くでする

早鐘を打ち出した心の臟

背筋にツゥーと流れる冷たい汗


忘れようとしていた得体の知れぬ状況に再び恐怖や不安がよみがえってくる

コワイタスケテ


でもここには助けてくれる人は誰もいない

私は一人なのだ


ZUN


刻一刻と ちかづく足音 

こっちに来ないで

その願いもむなしく


ピタッ


わたしのへやの前でそれは止まった

まるで、初めてメリーさんの怖い話を聞いた後の夜のような気分



ドクッ

緊張のあまり久遠の心臓が止まるかとおもった



いやだよ

入ってこないで


あ ああっ


のどからかすれた悲鳴が漏れ出る



『我が望みは呪いによりみたされる  壁よ内側を見せよ

壁越しに何かは、自分に陶酔しきったものの特有な声音で言った

自信満々のナルちゃんのようなしゃべり方


いや、しゃべり方なんてこの際どうだっていい

今この部屋の前で立ち止まった何かがしゃべった言語


まさか、日本語?


私 にほんにいるの


でも日本に、いるのだと決めつけるにはまだ早い

何故なら 私はこの部屋を構成する材質そして頭上にある蛍鳥 これらを知らない

まぁ、私が知らないだけで存在していたのかもしれない可能性もある



それでも、何かが違う気がするのだ

この十数年、生まれ育った母国の空気と違う気がする

うまく説明できないけれど、田圃には、土や水太陽や、稲のにおいがくうきにとけだしてなざりあっている

都会には排気ガス、人の臭い、香水や化粧の臭い

靴屋さんには、革など靴の臭い

お菓子屋さんには、甘い匂い バニラや生クリーム、ブランデーなどのお酒の臭いそれから チョコレートや果物の臭い

図書館と本屋さん

同じく本がおいてあるのに、匂いが異なるのだ

新しい本 多くの人に読まれた古い本 

保管状況や、本の置かれていた場所辿った道によりにおいは変わる


所々によりそれを構成するにおいがある


私はこの部屋

この空間で黒崎久遠以外の臭いを知らない



それがどういうことか、気がついたときにはもうソレは、姿を見せていた

目の前の壁が予想通り空いたのだ

壁が消失するという表現が合うような形で…


おぞましかった。

その表現が、あっているとはおもわない

だけど、久遠はその姿を認識したとき思わず、口を押さえた


それの姿は、幾万匹ものナメクジが、グニョリ、グジョリ、と這いずり回って巨大な、アメーバを形成シている何か。


久遠はがその姿に吐き気をおぼえたのは確かだ 


むしろ、この気持ち悪くおぞましい物体を実際にその目で見て平然としていられるほうが異常だと思う



だがそんな〝些細″なことよりもその気持ち悪い物体が日本語を使っていたことに、ゾォオッとして鳥肌が立った。


おぞましかった。


人間にはとうてい思えない 外見

いくら、外見で物事や人間を判断してはいけないと育てられた久遠でもこれは無理だった

生理的嫌悪感というやつだ



日本人?

外国人が話ているにしては、あまりにも流暢でアクセントや発音に違和感が全くというほどなかった


いったいこの気持ちの悪い生物のどこに口がーーーー音を発する場所があるのだろう


目は耳はどこに


その辺まで、考えて、現実逃避する事に決めた


私 黒崎久遠は どうやら 気味の悪い異世界に来てしまったようだと結論づけた――― とりあえず




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