★Variations brillantes★~華麗なる変奏曲 ~ -3-
こいつを倒して前に進まないといけない。
嫌いな奴だけどあいつの封印とやらを解かないと借りは返せない
それに、私は帰りたい
だけど、帰る方法を知らない
方法を知っていそうな奴は嫌いだけどあいつくらい
意識がもうろうとし始める
目の前にもやがかかる
こんなところで立ち止まるわけにはいかない
こんなところで死にたくない
わたしは帰る
そして謝る
だからっ
「っ―――。私は、私は…拒絶するっ。」
こんなところで死ぬのが運命?
連れ去られてわけのわからないもの注射されて、いたい思いして死ぬ思いして、生き延びたら今度は踏みつぶされるように殺されるなんて嫌よ
それに、こんなところに死体をのこしてもなにされるかわかったものじゃないもの
神様がこの世界にいるの?
運命を決めているの?
なら、今すぐ私がここで死ぬと運命を書き換えなさい
わたしは生きるの
死ぬわけにはいかない
ドクン
体内の魔獣の血が熱く燃える
体が熱い
体内で炎が嵐のように吹き荒れる
これが、魔力というやつなの?
「まだ、死んでいない。排除する。」
さらに重力が上がる
骨がきしむ嫌な音が耳に届く
かはっ
息ができない
苦しい
外側からの圧力と、内側に吹き荒れる嵐のような炎
サイアク
ゴッ
頭を踏みつけられる
床にぶつかった頭が割れるように痛い
何かが抜けていくような感覚
目線をゆっくりとそっちに持っていく
奴が、私の頭を踏みつけている
赤い血が流れる
頭を踏みつけられるなんて、屈辱だっ
遠のきそうになった意識が覚醒する
プライドを踏みにじられた怒り
ギッ
目力だけで人を殺せそうな殺気を込もっていた
青髪はたじろきもしない
平然と見る
意志でも見るような視線
口で言うほど敵意もなくただ、みているのだ
私が排除されゆくさまを・・・
―――――キコエルカ
あの声
忘れるはずもない魔獣の声
頭の中に直接響く声
――――――オマエノ言葉ニ力ヲ込メレバイイ
私の言葉。
―――――魔力ヲコメロ。
魔力の込め方なんて知らない
そんなのがおとぎ話ですむ世界で私は生きていたのこの数十年間!
知るわけない
もっと的確で分かりやすい言葉で教えなさいよ
こっちの荒れ狂う思いが伝わったのか偶然か。
―――――メンドウダ。古イガ、仕方ガナイ。我ガ、言ノ葉ヲ復唱シロッ
むかつく
こんないやな奴に頼らないといけない自分に腹が立つ
弱さがいや
強くなりたい
自分の心も体も強くなりたい
このままじゃだめだ
これ以上借りつくりたくないのに!!
――――
魔獣が何か言う前に叫んでいた
「私の内なる炎よ。敵を焼けっ。」
ボオオッ
炎が体から吹き荒れる
内側で暴れていた炎が外に出て暴れる
人体発火
身体は熱くない
燃えても焦げてもいない
内側から出た炎は、青髪に絡みつく
驚いて消そうとね丹化をあわてて唱える
私にかかっていた呪術の効力が集中を途切れさせたせいかそれとも、ほかの呪いを使おうとしたのかはわからないけど立ち消える
骨は折れていたの野かもしれない
だけど、回復した
立ち上がる
炎に絡まれて焼かれる青髪の敵
最初の炎は簡単に消せたが、今回のは簡単に消せないようだ
殺してしまおうか?
――――コロスナ 手ヲ汚ス必要ハナイ
そう、殺しはよくない
殺した罪を共犯者にも背負わせることになる
私の罪はもう私だけのものではない
いわれなくともわかっていること
「我、呪いにより、汝を束縛する。」
動きを封じる
炎を内側に戻す
内側に戻った炎は、私を焼かない
さっきのように、熱くならなかった
「さきをいそぐの」
なにか、言っていた
侵入者を排除。
そう繰り返していた
ロボットなのだろうか?
明かりも何もない道をただ進む
魔獣のいるところへ
道の行き止まりにそれはいた
黒い体毛を持った魔獣
ヘアリージャック や フェンリルの様だと思った
むく犬のジャック。リンカシャーの黒妖犬。炎のように燃える目と毛がもじゃもじゃした犬。足の悪い老人が化けた、あるいはこの犬が人間に化けたというヘアリージャック
北欧神話に登場する妖狼で、ゲルマン神話のロキと巨人の女アングルボザの息子。口を開くと上顎が天に届き、下顎は地に届くという程巨大な狼。手がつけられない程凶暴で、どんな枷も破壊してしまうというフェンリル
「来たかっ」
耳で初めて聞く魔獣の声
頭に響いた時と変わらない声
大きい
私の身長の何倍もある
「来たわよ。どうすればいい。」
声は、奇跡的に震えていなかった
逃げ出したい心
恐怖の心を押し殺す
強い気に言わないと、こっちが負ける
対等なんだ
そういう契約。
背筋を伸ばし胸を張る
「私は、黒崎久遠。あなたの共犯者にして契約者。助けてくれてありがとう。一応感謝するわ。今生き延びているのはあなたのおかげですもの。だけどね、あなたのせいでこっちは人生計画無茶苦茶になったのよ。」




