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Le mondesanstoi~君のいない 世界 ~

あれから羽矢は、久遠の名を叫んでいる声を聴きつけた、観光客の老夫婦に保護された

警察やレスキュー隊やらが久遠の姿を探したが久遠は見つからなかった

あの高さから海に落ちたのなら助からないでしょうと言われた

それでも、僕には信じられなかった

さっきまで一緒にいたのに…


羽矢は茫然としていた


それでも、入院している零無さんには事情をはなさないといけない

零無さんは自分の愛娘が飛び降りたという事実に悲しむだろう

おこったことをはなさなくてはいけないそう思いはするもののすべてにやる気がなくなっていた

世界がこんなにモノクロに感じられるのはあの時以来

あの時は、久遠がさらわれたという確証も何もわからない不確かな状況だったからよかった

今回のは違う

目の前で飛び降りられたのだ

羽矢の中の理性は、久遠は死んでしまってもういないと判断する

皆もそう判断している

感情のほうはそうはいかなかった

どうしようもなく無力感が漂う

何を食べても味がしない

久遠はもう食べれないのだと思うと口に入れるのでさえはばかられた

それでも、にいさんが全部食べ終わるまで会社に行かないって脅すから、仕方なく口に運ぶ


寝ても覚めても久遠のことばかり考えてしまう

どうして飛び降りたりなんかしたんだろう。。。

久遠は自殺することを嫌っていた

人世は一度しかないから杭の内容に生きるってレイムさんから教わってそういう風に生きていたのだ


なのになぜ・・・久遠は飛び降りた


何度も悪夢のように見る

久遠お身体が波にのまれる様を

久遠が落下してゆく様を…

手を伸ばすけど、届かない

羽矢の夢の中で、久遠が何度も何度も繰り返し海へ落ちゆく―――死ぬのだ


結局久遠の死体すら見つからなかった

事故だったのか

事件だったのか

自殺だったのか


多くの人間に尋ねられる


でも何も答えられなかった

口にしたら、それが本当になる木がして怖かった

久遠がいないという事実を認めたくなかった


――――ピンポン


家のチャイムが来訪客を告げる


誰だろう?

また警察だろうか、それとも今度は学校の教師?クラスメイト?


―――――ピンポン ピンポン


繰り返しなる


――――ピンポン ピンポン ピンポン


しつこい

まるでこっちが家の中にいることを知って鳴らしているみたいだ


仕方がないので、玄関に行くために部屋からでる


―――――ガチャリ


錠のまわる音がした

さっきまでチャイムを鳴らしていた人物

居留守をつかわれることに切れて無理やり―――ピッキングかなんかで開けたような・・・・


普通に暮らしていらピッキングという言葉を知っていてもやり方は知らないだろう

しかし、羽矢にはそれを軽々とやりそうな人物に心当たりがあった

師匠だ


師匠はこの家の間取りもすべて把握している

羽矢が、わざわざ下の階まで行かなくても向こうが来るだろう

ピッキングしてはいってくるくらいだ

羽矢の部屋に突撃して怒鳴り殴るくらいのこと平気でするだろう

そうされて当たり前だ

久遠を守るなんて言いながら結局久遠は・・・


たったったった


早歩きで廊下を歩く音がする

羽矢以外誰もいなかった如月家は静かだった

だからその侵入者の足音がやけに大きく聞こえる


たったった


階段を上っているのだろう

師匠らしくないな

そう思考がマヒした頭で思う

師匠ならきっと ドタドタドタッ ってあがってきて 羽矢の扉を蹴りぬくようにあけるだろう


足音が羽矢の部屋の前でとまった


コンコン


部屋をノックされた

おかしいな


こんこん


「は、羽矢君いるでしょ。話したいことがあるの」


この声は聞いたことがある

それもそのはず、この声の持ち主は羽矢がよく知る人物


一番合いたくなかった人物

師匠と会うのなら、いい

でもこの人と話をするのは気が重かった


「いるなら返事してほしいなぁ・・・。まぁいいや、私の話聞いてくれる?扉越しでいいから」


この声の主----- 黒崎 零無

黒崎久遠の母親だ


今まで、何もしたくないとか言いながら逃げていた


玄関が開いたのは、ピッキングでもなんでもない

零無さんがスペアキーで開けたのだ…





「羽矢君が悪いわけじゃないのしってるわ。あの子が…久遠がどうせ自分から飛び降りたんでしょ」

どこまでなら、誰も消さずにすむかしら・・・

どこまでが許されるのだろう

私に許された干渉範囲はわからない


「っつ」

扉の向こうで息をのむ気配がする

この耳になってからよく聞こえるのだ


「話したくないなら話さなくてもいいよ。今日はね、羽矢君にこれを私に来たのよ」

バックに入れてあった手紙を取り出す

そのには宛先に如月羽矢様へと書かれている

差出人は、黒崎久遠

零無の娘だ

昨日、郵便屋さんが届けに来た手紙

2通あった

2通とも宛先は黒崎零無さまと書かれていた

しかし片方開けてみるとさらに封筒があって、如月羽矢様へ

そうあったのだ

手紙の消印は久遠が死ぬ前の日

郵便屋さんにこの日に届けてほしいとお願いしてあったそうだ


零無宛の手紙に書かれていたのは謝罪と感謝

それからお願い事がいくつか書かれていた

真実も書かれていた

あの誘拐事件の真相

それから、これから久遠がしようとしていること等が事細かにつづられていた

あの子が決めたこと

そして、私はこんな日が来ることを知っていた

知っていても何もできない

歯がゆかった


「手紙よ。羽矢君宛にね。」


扉の向こうにいる羽矢君が少し動いたのがわかる


「差出人はね。」

差出人お名前をゆっくりと区切るように言う


「--------黒崎 久遠」

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