プレリュード 世界の関節を外そうと思うまで -2ー
まず自分のいる状況を少しでも多く、知らなくちゃ
薄暗い――――この仄かなな明るさはどこから?
窓はない
だからこの部屋の外の様子はわからない
四方、壁に囲まれている
壁というものがこんなに威圧感のあるものだとは、今まで知らなかった
壁と壁がどんどん惹かれあっていって、そして壁の間にいる私は……
や、やめよう
こんな想像していたら、余計に この部屋にいるのが怖くなる
真上には、何があるのだろうか
ふっと、頭を上げる
「!!」
真上にあった光。
それは、久遠が、初めて見るものだった。
似ているものといえば…
蛍のようにほのかに光りを明滅させる、2羽の鳩くらいの大きさの鳥が向かい合っているもの
リーンリーン
よく耳を澄ませば、わずかにそう鳴いているような音が聞こえる
ホタルのように明滅する2羽の鳩―――長いし、いいにくいから、「蛍鳥」 そう名付けよう
それは、少しも身を動かす素振りを見せずに、ただ淡々と明滅する
これは装飾品?
だが明らかに牢獄のように見えるこの簡素で、何もない場所にはふさわしくない
ここでは、これが当たり前なのだろうか
これ(蛍鳥)が電球や蛍光灯に、近い役割をしているのかもしれない
蛍鳥に、照らされた壁は、灰色
さわってみる
ざらりとした手ごたえかと勝手に思い込んで触れてみた。
ぐにょーん
「えっ」
そう 見た目は堅そうでざらざらしていそうなのに…
ぐにょん と延びたのだ
これは、伸縮性に富んだ壁なのだろうか?
まるで頭を打ちつけて死なせないというかのようだ
刑務所みたいな感じ…なんかいやだな。
床は、 伸縮性に富んでいなかった
見た目の通り、固い。スベスベはしていないけど、ザラザラもしていない
ひんやりとして冷たかった
この部屋に存在する人間は当然のことながら私一人
部屋の中にあるのは、私自身だけ
着ている服は、中学校のセーラー服
胸元に白いスカーフがある紺のオーソドックスのセーラー服
ポケットの中のスマートフォンを、取り出してみる
予想はしていたけどやっぱり電源はつかない
電池切れ?
毎夜ちゃんと充電しているからそうそうきれないと思う
ポケットにある予備の電池をいれて再度電源を入れてみる
やっぱり 電源が入らない
助けは呼べない
スマートフォンで、警察やママ、羽矢とかに連絡が取れたら、このわけのわからない状況から突破できる可能性が格段に高まったのになぁ
ああぁ
でもできないから仕方がない
他の方法を考えるまでのこと
他に、ポケットにあるものを確認してみた
ハンカチちり紙
飴玉 小銭
それから家の鍵
手鏡に櫛に髪留め
それから、秘密道具その1その2
ろくなもの持っていないわね
カバンは、どうしたのかなぁ
あの中にはもっといろいろあるんだけど…
それよりも、私どうしてここにいるのだろうか
凄く今更な感じの疑問なんだけどこれ大事よね。
手足につながれている長めの鎖
この鎖むちゃくちゃ邪魔 それに、重い
髪についている、ピンをはずす
「できるかしら?」
何ができるかってそんなの決まっているじゃないですか フフフ
この状況で、やるのはあれです。あれ!
〝ピッキング″
こんなことできる女子中学生なんて、ふつうは、いないよね
ママのお友達の悠さんに教えてもらった、ヒミツノワザ
まさかこの技を使う日が訪れるなんて…
教えてもらったときには、想像もしていなかったよ
悠さん ありがとうございます!!
心の底か風変わりな、ママのお友達にお礼を言う
数秒後、カチャリと決して小さくない音をたてて手の自由を奪っていた錠がはずれた
さらに、数秒後には、足の不自由を奪っていた鎖もはずれた
あっけない
これでいいのか誘拐犯
私こんなに簡単に体の自由取り戻しちゃったよ。
「よし」
ここまでは、いいけど・・・
怖いくらい順調
でも、どうやってこの場所から脱出しよう。
出口がない
見渡す限りには窓がない
扉もない
体の自由が回復しても、この室内にいる限り大して変わらないではないか
それにもしこの部屋から、出られたとしても、そう簡単には家へ帰れない
諦めたら、あるはずの可能性も消えてしまう
キョロキョロ
視線を世話しなく 動かす
天井や床そして四方の壁
「ん!!」
区切りが悪いなぁ。
どうしたらきれいに、区切れますかぁ?
誰か教えてください