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Red aurora ~不吉の兆候~

遊園地デートから帰ってきた後

羽矢は、矢的とともに、黒崎家に招かれ、零無さんお手製の手料理をごちそうになった


今日の晩御飯は、ちらし寿司

「初デートのお祝いですもの」

そう朗らかに零無さんは言う

零無さんの料理はほんとにおいしい

特にちらし寿司は零無さんのお気に入り料理で何かいいことがあると大変なのにつくってくれるのだ


羽矢と矢的の両親はともに海外に働きに出ている

さびしくないと言ったらウソだけど、もう慣れた

母親は、久遠の母親である零無さんと同じ大学だったらしい

かなり仲が良かったらしい


同じ時期に子どもを身もごり、一緒に育てたらしい

そう久遠と羽矢はたったの10日違いなのだ


親同士が仲がいいこともありこうして家族ぐるみの付き合いなのだ

羽矢と矢的の両親は、黒崎家にお金をある程度渡して、二人のことを頼んだそうだ

二人とも急に海外に転勤になってしまったのだ

初めは、お金はいりませんそういっていたけど最後には羽矢と矢的の両親が押し切ったそうだ


それでも、零無さんがそのお金に一切手を付けていないのを羽矢たちは知っていた


黒崎家に父親なる存在はいない

零無さんは何も言わない

もしかするとなくなっているのかもしれない


黒崎家の生活を支えているのは、きっと師匠だろう

師匠と零無さんの関係は詳しくわからない

師匠はこの黒崎家に居候している

生活費として大量のお金を入れるのだ


この二人の関係も久遠の父親の存在に次いで謎

レズなのかなぁ?

まぁ、師匠ならあり得るかも


夕食は楽しくおいしくいただいた


ボーン ボーン ボーン ・・・・・・・・ボーン


黒崎家にある柱時計がなった


ドタッ


久遠がいきなり椅子から立ち上がる


「久遠ちゃん?」


いぶかしげに兄さんが声を掛けるが、久遠の耳に入らない

久遠の顔に浮かぶのは、明らかな焦燥


「久遠?」


羽矢が、久遠の名を呼ぶ

久遠はゆっくりとカーテンのしまった窓を指さす


「あれ、なに」


えっ

久遠の指さす方を見た


そこには、花柄のカーテンがかかった大きな窓がある

わずかに空いたカーテンの隙間

外が、赤い


外が赤い

連想するのは、火事だ


「火事?」


そういって零無さんは、窓に近づきカーテンをさっとあける


赤かった

ソラが赤い

血に染めたベールが、空にかかっている

折り畳まれ、揺れる光のカーテンが空に立ち上がり、広がる


「オーロラ?」


なんでこんなものが見える?

オーロラを見るにはいくつか条件があるはず


「なんでこんな町のど真ん中の空にかかっているんだ?」


兄さんのもっともな疑問


師匠は、テレビをつける

どのチャンネルもこのオーロラのことでもちきりだった


零無さんが、ネットを開き調べる


「これ世界中で出現してるみたい」


ぼんやりと、外を眺めていてさっきからあまりしゃべらなかった久遠が静かにつぶやく


「災害や戦争の前触れ、あるいは、神の怒りか…それとも」



カーテンのひだが、アーチ状から放射状さらにたば状に変化し幻想的に天空を彩るさまを眺める


暗赤色のオーロラは不吉だと聞いたことがある


「La fin mondiale」


久遠は異国の言葉をつぶやく

それは、久遠の隣にいた羽矢にしか聞こえない声


「久遠それどういう意味?」


羽矢の質問に久遠は囁くように羽矢だけに聞こえる声で言う


 「 フランス語で 世界の終焉  よ」





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