le calme avant la tempete ~嵐の前の静けさ~ ー6ー
久遠がもどってきてから、数日はあわただしかった
検査をたくさん受け、異常が無いこととを確認されていた
病院という空間を嫌っている
否、久遠が怯えていることもあり、早めの退院となった
久遠がなぜ怯えているのか零無さんは知らないはず…
だけど、そのことを久遠の口から語られる前に察していたようだ
廊下で偶然零無さんと師匠の会話を盗み聞きしてしまった
久遠の傷が何によってできたものだか、互いの予想を確認し合っていた
羽矢は、久遠の半裸をじっと見たわけではない
一瞬でも相当な目にあったと想像できるものだった
もし、羽矢がそんな目にあったとしても今の久遠みたいに笑っていられる自信はない
強がっているのではないだろうか
心配になる
今の久遠はガラス細工のような気がする
とても美しく衝撃を与えると粉々に散ってしまう科のような気がしてならないのだ
僕は、久遠に何をしてあげられるのだろうか?
零無さんは、あの後じっくり? 久遠の体を見たのだろう
久遠の傷の中に注射針のようなもので、刺された跡がいくつかあったらしい
他にも刃物のようなものの傷
ひどい打撲の跡が、あったらしい
麻薬か何かを打たれたのだろうか
中毒症状は平気だろうか
そんなことを話していた
警察などの関係者にたくさん事情聴取されたみたい
だが、久遠はなにも答えたがらない
当たり前だ。
あんな傷を負ったのだ、思い出すことがくなならないはずないじゃないか
答えさせたくも、思い出させたくもなかった
だから、恐怖のあまり記憶がなくなっている 錯乱している そういうことにして受け答えする方針に決めた
発案者は、零無さんだった
久遠もそれに納得し、質問に対してわかりませんしりませんを貫く
それでもしつこいものには、師匠がすごみを利かせたらしい
ただ 僕にだけ告げた信じがたいこと
でも久遠は本当だという
あれから久遠はある一点をのぞきすべてを羽矢に話した
しかし羽矢はそんなことを知らない
話されたことにこうみゅに隠し事がされているなどもとが突拍子もない話だけに気が付かなかった
そんな日々が飛ぶように過ぎた
情報等も師匠が、裏で何かをしたみたいでめっきりと ネットや新聞、雑誌、テレビに乗らなくなった
師匠っていったいなのか
どんな職業なのかなんとなくしか知らない
巧妙に避けて通るのだ
それから、学校に行く前の休み
二人で遠い 場所にある遊園地いくことにした
取材などで疲れているだろう久遠に安らぎの時を与えようと計画したのだ
久遠が、未成年だったこと
零無さんたちが、いかにも別の事件でたまたま日数が重なったかのように、対応していたため
生き残りの帰還者だということを、もう誰も言わなくなった
ちなみに 零無さんは、これらの対応中 にこやかにしてても目が笑ってないので
大変怖い
だんだん声が低く冷たい態度になっていくときなんて、ブリザードが室内に吹き荒れているかと幻視してしまうほどだ
今日は二人にとって初デート
二人で出かけることや遊びに行くことはあったけどデートはもちろん初めてだ
「羽矢 ありがとう」
にっこりと零無さん譲りの整った顔でする
どきっ とする
「なににのるか 決めた?」
最初に、一番混むことが予想される
ジェットコースターにのることに決めた
待っている時間
先に乗った人たちがあげる楽しげなひめいをききながら、久遠はたのしそうにしていた
今日の久遠の服は、デートを意識したのかすごく女の子らしい服だった
ホワンホワンしている臼桃色の帽子とお揃いのコート
コートのしたからは、白いひらひらのスカート
足の傷を見えなくするため色の付いた厚めのタイツをはいている
視線に気が付いたのか恥ずかしそうに小さな声で言う
「傷跡まだ少し残ってるから…」
似合うかな…
こっちを見上げるその大きな瞳は、そういっていた
久遠は考えていることが全部顔に出るんだよな
可愛いからいいんだけど…
「似合うよ。すごくかわいい」
ありふれた言葉
それでも、素直にそう思ったのだ
飾らないありふれた言葉で、がっかりさせたかと久遠を見る
髪の毛はふわふわと波打っている
普段はしない化粧を薄くしている
その顔は明らかにほころんでいてうれしそうだ
「砂糖菓子のようだ」
甘くてかわいらしいよ。 久遠
これは一人にさせられないね
ほかの男に君をつまみ食いされるなんてごめんだよ
僕の頭の中は、変な風に壊れている気が 最近する
「ありがとー 張り切ったかいあった」
デートの定番の会話をしていちゃいちゃしていた
しっている人に見られてないといいな
こんなでれでれの顏見られたら 一生話のネタにされそうな気がする
特に、藤堂には会いたくないな
僕らの番が来た
隣同士で乗れてよかった
トロトロと動く コースター
坂をゆっくりゆっくりのぼる
緊迫感があるなぁ
下を見たら怖いそうだからやめよう
結構な高さがある
しかし久遠はそんなことお構いなしに下を見る
「高いねっ」
そう言ってにこにこしてる
久遠は、高いのが平気なタイプ
落下した時はその時運命だから仕方がないよ
昔そんな風に久遠が、高いところが怖いから、ジェットコースターは無理だといったクラスメートに言っていた気がする
コースターが、急降下する
キャアアアア
周りは悲鳴を上げているのに対して、久遠は相変わらずにこにこして久遠は絶叫系なのに絶叫一つ上げない
こういうスピード感があるの好きなんだよな久遠
でも 零無さんは苦手みたいだ
高いのがだめで、乗り物もダメなんだとか・・・
遊園地に行くときいつも師匠に一緒に行ってもらっているらしい
ちなみに僕は、ぜんぜん平気というわけではないけど、普通に ヘイキ
体が浮遊するようなすぅとスる感覚
めまぐるしく変わる景色が、やがて停止する
終わったのだ
「楽しかったね」
「うん」
そのあと僕らは、様々なアトラクションに乗った
楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ
気がついたら夕方
家へ帰る時間だ
今日会ったことを二人で話しながら家路をあるく
しかし、僕は気が付かなかった
――――――――――嵐はすぐそこまで来ていたことに…




