カレンダー
寒くなってきた
こんなに早く夏から冬になるんなら春やら秋やらわけのわからない間の季節なんか取り払って全部かき混ぜて安定させたらずっと合理的なのにエコなのに
あー寒い寒いと壁に目をやったらカレンダーがかかっていた
もう今月も終わりだろうなーと思って日付を確認しようとカレンダーに近づいてみたらでかでかと「8」の文字がかかれていた
そんなわけがない
こんなくそ寒い8月あってたまるか12月にして氷河期を迎えるじゃないかとケータイを開く
やっぱりケータイのカレンダーは11月24日だった
さすがはケータイ
どっかの電波を的確にひろい正確な情報を教えてくれる
それにひきかえ紙のカレンダーときたら
人にめくらしてるからこんなことになるのだ
しかたなく8月のカレンダーの端に手をかけ、軽くひっぱった
ビリビリと左から右に紙が破れていく感触が指先で振動する
こうして少し切れ目を入れていっきにひっぱる
ビリッ
一瞬にして8月のカレンダーは力を失い地面に落ちたそしてデジャブのようにカレンダーには「9」の文字が浮かび上がった
9月か
なにがあったっけな
多分外に出たのは四回くらいだ
その四回も飯食いにいっただけだ
無性に牛丼が食べたくなって家を出て、その時初めて、外って気持ちいいな〜ということに気づき、これからはできるだけ毎日外に出ようと決めた
あとの三日がそれだ
でも外にいくのは三日でやめた
外食を繰り返し金がなくなったのもあるが単純にめんどくさくなった
そんな感じの9月だった
ビリビリ
…ビリッ
同じ要領で9月を破り捨てたら次は10月が現れた
10月も別になにもなかった
そういえばメールがあった、高校時代仲良かった女子からメールがあった
高二で同じクラスになり、初対面だったのに気楽に話しかけてくれた唯一の女子で嬉しくてアドレスをすぐ聞いてしまった
今思えばその時が人生で一番輝いていたと思う
高二の時という意味ではない、その女子のアドレスを聞いたあの瞬間のことだ
あんなに気楽に聞けたことに自分で感動し、もしかしたら自分は人見知りがなおったんじゃないかと浮かれた瞬間だった
その思い込みは次の時間に落とした消しゴムがさっぱり消してくれた
落とした消しゴムはその女子の下に転がったが次の休み時間新しい消しゴムを買いにいった
そんな俺がメールなんて送れるわけなく結局その子とは一回もメールせずに終わった
それが今年の10月いきなりメールが来たもんだから内容を読む前に保護設定して飛び上がっていたが内容を読んでみれば怪しい集会の勧誘だったので黙って削除した
ビリビリ
ビリッ
11月だ
今月だ
今日の24日に目をやった
今月はあと6日間しかない
どうせなにもないだろう
また破らないといけないならめんどくさいしもう破ってしまおう
ビリリビリッ
これで今年が終わるまでカレンダーを破らなくていい
残り一枚になった薄っぺらいカレンダーは「12」と書かれていた
なんだか時代を先取ったみたいな気分がちょっと湧いてきてほこりの全くないきれいな12月を眺めてみた
今年のクリスマスは日曜日みたいだ
街が幸せな人でごったがえし騒がしくなるだろう
こっちにも幸せを分けてくれたらいいのに
ビリッビリッビリビリ…
12月を手際よく破り捨て、8月から12月までを折り曲げてゴミ箱にほりこんだ
壁がいっきに物足りなくなり、寒さがさらに増した気がした
来年のカレンダーでも買いに行こう
久々に外に出るか