本当の気持ちは 【月夜譚No.391】
掲載日:2026/03/01
あれは焼き餅だったのだろうか。
自室の勉強机に頬杖をつき、少年は今日の出来事を振り返る。脳裏に浮かぶ映像は、休み時間の事の成り行きというよりは、クラスメイトの女子生徒が頬を赤く染めた表情がメインだった。
正直なところ、細かいところはよく覚えていない。彼女がどうしてあんな顔をしたのかも、解らない。
けれど、そんな彼女の様子に戸惑って、彼女が教室を出ていってしまってから近くにいた友人に尋ねたら、呆れたように「焼き餅だろ」と言われた。
その時は、よく解らなかった。だが今、彼女の顔を思い起こしてみたら、今更恥ずかしくなって、部屋には一人なのに両手で顔を覆う。
(……本当に、焼き餅だったのかな)
本人に訊くことはできない。友人の言ったことが真実かどうかも判らない。
しかし、もし本当にそうであるなら――。
彼は漏れそうになった声を必死で抑えて、静かに悶えるしかなかった。




