取引
「……き、貴様ァァァァ……!!! どこまで卑怯なんだ帝国軍……っ……!!」
ミリアが血相を変えてブチ切れた。 しかしレイルにとってこれは計算の内だった。 当然、実妹を人質に取られれば切れるのは当たり前。 それが例え一流の騎士であってもそうだろう。
「……まぁ待て、話はここからだ。 そのユリアの身柄だが、俺の尋問担当外でな……自分で言うのもあれだが、俺以外の尋問官は情報を吐かせる為に手段を選ばない奴らばっかりなんだ……」
「……何が言いたい? 捕虜になっているのには変わらないのだろう?」
ミリアの目は少し困惑した表情をしている。 レイルというこの尋問官の意図が全く読めないでいた。 捕虜になるということは少なからず何かしらの拷問は受けるのが基本だからである
「……では、聞こう。俺は君を一度でも拷問しただろうか?」
その質問に対してミリアは頭の中で自分が捕虜になってからの記憶を遡った
「……私は、確かに何もされていない……」
「そうだ。それは俺が君の尋問担当だったからだ……」
続けてレイルは言う。
「だが、ユリアを担当している尋問官は拷問好きでな、このままでは何れ死んでしまうだろうな……」
「……っ……!! な、なんとかならないのか!? 私の身はどうなってもいい……頼む……妹だけは……助けてくれないか……」
先程までの強気のミリアはもういなかった。 絶望と不安、そのふたつに飲み込まれたミリアはレイルに必死の懇願をする。
「……君が俺の部下になると言うのであれば、妹の命の保証はしてやろう。どうする? 君の返答次第で妹は死ぬか生きるかが決まる……」
ミリアは俯き、考える……その目には涙が溢れていた。 彼女にとって妹ユリアは自分の命よりも大切な存在らしい。 レイルはその事実を知っていたかのように取引をした。
「……少し……考える時間をくれないか……」
「君が考えている間に妹が死ぬかもしれないぞ? ……そうだな……三日やろう……それまでに答えを出してくれ……それまで拷問するなと伝えておく……」
「…………ありがとう。 助かるよ……」
レイルはミリアの独房を出て、執務室に向かった。 その後ろにはミリアの心情を想った悲しげな顔をしたフレイアが着いていた。
「……レイル様……私からもお願いします……ユリアを助けてあげてください……あの子、早くに両親をこの戦争で亡くしていて……あの子にとってユリアはかけがえのないたった一人の家族なんです」
「……そうなのか。 だったら必ずミリアは俺の部下になるだろうな……そうすれば自ずとユリアも俺の部下になるだろう。 クククッ……少しずつだが、俺の作戦はいい方向に進んでいる」
作戦という言葉にフレイアは疑問を浮かばせた。 一体彼は何を考えているのか、自身の上官となった彼の考えをフレイアはまだ知らないでいた
「レイル様……もう一度ミリアの所に行ってもいいですか? 私、不安で……少しでもあの子の傍に居てあげたいんです」
その言葉にレイルは頷いた。 レイルも同じ事を考えていたのだろう。 ミリアにとって今心の支えとなるのは、敵になってしまった元親友フレイアしかいないのだから……




