新しい人生
「……お前の……部下……?」
フレイアの脳内で直属の部下という言葉が何度も反響する。 敵国の尋問官の部下になる。それは完全にルミエル王国を裏切るという事になる。しかしそれは、全てを失った自分に新しい居場所を得ることになる。
「……フレイア、お前の騎士としての腕は買っている。俺の元で騎士として生きるなら、ここから解放してやってもいい」
フレイアの思考が一瞬停止する。 仲間を全て売り、祖国を裏切った自分をこの地獄から解放し、更に部下として仲間にしてくれる。 彼女の心の奥底で、微かながらに小さな希望が芽生えた。
「……わ、私は……私は裏切ったのだぞ……ルミエル王国を……そんな忠誠心の欠けらも無いような私を……お前は信用するとでも言うのか……?」
フレイアは震える声でレイルに問う。 彼の言っている意図が読めず困惑していた。 これもまた巧妙な罠なのかもしれない、そんな風にも思えた。
「……私はもう……どこにも居場所がない……」
その呟きには、深い絶望が見て取れる。
「……どうする?」
レイルの言葉はフレイアに考える余地を与えなかった。 断れば一生殺してももらえず独房の中。 かと言って彼の元に付けば祖国を完全に裏切るという事になる。 深い葛藤の中、フレイアは答えを出せずにいた。
「……まぁ少し考えるといい……」
レイルはそう言ってフレイアの元を去った。 一人独房に残されたフレイアは、頭を抱え一生懸命考える。 どうすればいいのか、思考をフル回転させるが、一向にいい答えが思いつかなかった。
ーーーそして更に数日が経過する。
再び、フレイアの独房にレイルが訪れた。 先日とは違い、優しい目をしてフレイアを見つめていた。
「……どうするか、決めたかな?」
端的に話すレイルに、彼女は少しの沈黙の後、答えを出した
「……私は……お前の……いや、レイル様の部下になります……」
その声は震えていたが、確かな決意が込められていた。 ルミエル王国の騎士から、ガルディア帝国の騎士になり、新しい人生を歩む。 それが数日かけてフレイアが考え出した答えだった。
「……そうか。 いいだろう、ではここから出ろ。 そして、お前には新しくこの帝国軍としての軍服を提供する」
フレイアの独房の施錠が開けられた。久しぶりに自由を得た彼女の瞳に光が戻っていた。 フレイアは新しく支給された服に着替えようする
「……すまない……その、少しここから出て行ってもらえないだろうか……」
レイルはその言葉の意味を理解し、無言で独房を後にした。
帝国軍の軍服に着替えたフレイアは、監視兵に連れられ、レイルの居る執務室へ入る。
執務室は自分がいた独房とは比べ物にならない程綺麗で明るい照明が部屋全体を照らしている。 豪華な装飾が壁一面に張り巡らされており、まるで違う世界に迷い込んだかのようだった。 その執務室の奥にある椅子にレイルは座って待っていた。
「……着替えたか、良く似合っているなフレイア」
フレイアはその言葉に少し頬を赤く染めた。 赤を基調にした軍服に自身の神々しい金髪の髪の相性が合っていた。
「……あ……ありがとうございます……レイル……様……」
まだ少しぎこちなく、ソワソワとした表情で視線をレイルに向けていた。
「……では、新しくガルディア帝国の騎士となったフレイアに、俺から一番最初の任務を与える」
フレイアはその言葉に固唾を飲んだ。 帝国騎士としての初任務。 ここでいきなりしくじるわけにはいかない。 不安と緊張がフレイアを襲う
「……実は、君の親友と言っていたミリアなのだがな、君以上にしぶとく何一つ話をしてくれないんだ。 もう二週間は何も食べてない……このままでは確実に餓死してしまう」
フレイアの表情が一気に変わった。 ミリアがまだ捕虜として捕まっており、自分と同じ拷問を受けている事実に頭の整理が追いつかないでいた
「……そ、それはっ……ミリアは協力者の名前を本当に知りません……そんな拷問をしても意味が……」
フレイアのその言葉にレイルは反論するように返す。 彼女にはフレイアと同じ拷問をしているわけではないと
「……帝国からの施しは受けない……捕虜となってここで生きるなら餓死して死ぬと言っているだけだ……」
「……そんな……ミリア……」




