フレイア先輩
レイルの金縛りの魔法で身動きが取れなくなった王国騎士の六人はそれぞれが違った反応を返していた。
副隊長であり、現在隊長代理を務めているフィルは動けないながらも鋭い眼光でレイルを睨み、この金縛りが解けた瞬間にでも斬りかかるだろう。
その他、五名の隊員達は動けなくなった恐怖に怯える者も入れば、フィルと共に反抗的な目をする者もいた。
その中で、一人の隊員の動きにレイルは違和感を感じた。
茶髪のショートヘアをしており、気怠げな表情の黒い瞳はまるでこの世に何も感じなくなった人間のようだった。
「……はぁ……めんどくさ……」
「メア!? 諦めた様な態度を取るな! これは任務だぞ!?……それに目の前には敵国の……」
フィルの叱咤を制止する様に、はいはいと受け流したメアと呼ばれる女性隊士
「……あたし、別に正規の騎士じゃないし……ただ剣の腕を買われただけだし?……正直任務より自分の命の方が優先度高いんだわ……」
全く生気のない発言にレイルも、その後ろにいるフレイア達も唖然とした。
まるで騎士とは程遠い忠誠力のなさ。かつてカツ丼に負けたフレイアよりも酷いのではとレイルは頭の中を巡らせた。
「……レイル様……今頭の中で私の事バカにしませんでしたか?」
女の勘というのはいつの時代も侮れないものだった。
「……つーわけなんで、あたしを助けてくれるなら寝返りますけど……どうします?」
「……っ!?……メア……貴様……今の発言は国家反逆罪に問われるぞ!?」
レイルはまだ何も話をしていないのだが、勝手に話がいい方向へと進んでいた。
「……良かろう……お前のその忠誠力のなさ……ルミエルの采配ミスだな……」
レイルはメアに掛かった金縛りだけを解いた。
メアは首を回し、手首を回し、軽くストレッチをし、構えていた剣を納刀した。
「……正直、この人達に勝ち目なんてないよ……みんなも命大切にしな?」
「……メア、あんたね……本気なの……?」
フレデリカが問う。
しかし、メアは返答もせず、レイル達の方へと足を進めた。
ーーーー
メアが意図も簡単にルミエル王国を裏切り、残る隊員はフィルを含め五人となった。
レイルが残りのメンバーについて、情報をフレイアに問うた。
「……次に勧誘するべき騎士……ですか……。レイル様は本気で全員を仲間に引き入れるおつもりなのですね……わかりました。……では、次は私が説得に行ってもいいですか?」
フレイアはレイルの意思をしっかりと理解し、次の説得を自分に任せてほしいと言っている。
レイルは少し考えた後、了承した。
そのやり取りを見ていたメアは小さく呟いた。
「……あぁ、なるほど……あの子か……」
フレイアは、金縛りで動けない騎士の中を歩き、一人の隊員の前で足を止めた。
「……久しぶりだね、まさかこんな形で再開するとは思ってなかったけれど……本当にごめんなさいね……リン」
フレイアにそう呼ばれた騎士は真っ赤に燃える炎の様に赤く腰まで届く長い髪と赤い眼を持った女騎士だった。 リンは再会の嬉しさなのか、裏切られた悲しさなのか、またはその両方なのか……その目には涙を浮かべていた。
「……ほんとですよ……フレイア先輩……なんで、なんでルミエルを裏切ったんですか……わたし、先輩に憧れて騎士になったのに!!!」




