裏切り者
ヴィクターが吐いた事により、帝国皇子暗殺は未遂に終わる。 しかし、それを内部から企てている者がいる事実は変わらない。 もしかすればその裏切り者が単独で皇子を暗殺するかもしれない。
それを感じたレイルは、ヴィクターに無理矢理にでも協力者の名前を吐かせようとする。
「……言え……誰が協力者だ……」
しかしヴィクターはその裏切り者を庇う様に口を閉じた。 断固として喋らないといった姿勢を見せている。 次第にレイルの表情に焦りが見えていた。 額から冷や汗が頬を伝い、鼓動が荒々しくなっていた。
帝国皇子の暗殺は、この戦争において拮抗を崩すであろう痛手となる。 帝国側としてはなんとしてでも阻止しなければならなかった。
「……俺はあまり好かんのだが……こうなれば肉体的拷問を与えてでも吐かせてやる……」
「……っ……!! ま、待ってくださいレイル様……!! ヴィクター隊長には手を出さないでください……」
「……黙れフレイア……お前はもう帝国の人間だ……今はその様な余裕はない」
レイルの焦りはフレイアに八つ当たりしていた。 フレイアは普段とは違うレイルに恐れ数歩後ろへ引き下がった。
「……レイル様……私に少し提案があります……ヴィクター隊長と話をさせてもらえませんか? 」
フレイアが萎縮してしまったところに、今度はミリアが声を掛けた。 ミリアはレイルに対して尋問に対する提案があるといい、レイルを落ち着かせた。
「……いいだろう。 但し、それが失敗したらヴィクターを拷問に掛ける、いいな? 」
ミリアは縦に首を振り頷いた。 ヴィクターの居る牢屋の中へ入っていくミリア。レイルとフレイアは見届ける。
「……ヴィクター隊長……すみません。 私は祖国を……ルミエルを裏切ってしまいました。 ……だからこれは帝国騎士として言います。 その協力者の名前を教えてください」
「……教えるわけにはいかんと言っただろ……我々のミスで我々に協力してくれた者が死ぬのだぞ?」
「……それは承知の上です。しかし、こうは考えられませんか?……その者は帝国の人間、つまりその者が処刑されれば、それはルミエル王国としては敵軍の戦力が一人削れると……」
ヴィクターはミリアのその言葉を聞いて、少し沈黙をした。 ミリアの提案は理には適っている。 協力者とはいえその者は帝国の軍人、処刑されれば戦力として減るのは確かである。
「……なるほど……確かにお前の言い分は間違ってないな……いいだろう。 こうなれば私も覚悟を決める。 騎士として味方を裏切るのは心が痛いが……よく聞きなさい。 その者の名前は……」
ヴィクターは大きく息を吐き、最後の覚悟を決めた。
「……帝国騎士特攻部隊隊長ゼファー将軍だ」




