ルミエルの作戦
「……では、フレイア、ミリア……着いてきてくれ。 次の仕事だ。 ユリア、君はここでどうするか考えているといい」
レイルは二人の騎士を連れ、執務室を後にした。 レイルの後を静かに着いていくフレイアとミリアは互いに顔を見つめ合い、何処に向かっているんだろうと不思議な顔をしていた。
レイルの向かっている先は牢屋となっていた。フレイア達が捕まっていたジメジメとした薄暗い所ではなく、ただただ普通の牢屋。 拷問器具などは一切なく、囚人達にも枷は付けられてなかった
「……ここだ。 君たちには久しぶりの再開になるだろうな……さて、少し話をしましょうかヴィクター殿」
レイルが一つの牢屋の前に立ち止まり、中の囚人に問い掛けた。 その瞬間フレイアとミリアは驚愕した表情で、その牢屋の中を見つめる
その中にはかつての仲間、いや上司である騎士団長、ルミエル騎士団団長のヴィクターの姿があった。
白髪のツンツンと逆立った髪に、白い髭を生やした四十代程のベテラン騎士。 彼の目は鋭くレイルを見つめていた。
だがその目は直ぐにレイルの横にいるフレイアとミリアに向いた。
「……っ……!! フレイア、ミリア……!? お前ら何故……牢屋の外に……というより何故、帝国の軍服を……」
二人は声が出なかった。 何も言い返せなかった。 自分達の行いを、何をしているのかを理解していたから
「……裏切ったのか……ルミエルを……騎士のお前らが……」
ヴィクターの顔はからは信じられないといった表情が見て取れた。 ルミエルの騎士の忠誠力は世界一と謳われる程だったからである。 しかもその騎士の二人がルミエル王国を裏切り、あろう事か敵国の騎士に寝返るなど前代未聞の事象である。
「……団長……申し訳ありません……私達は……」
フレイアが謝る。 目に涙を浮かべながら自分のしている過ちを後悔しながら……
「……もういい。 フレイア、ミリア……それがお前達の選んだ未来なのだろう? ならば私がどうこう言うものではない……。 元はと言えば最初にフレイア、お前を見捨てて帝国の捕虜にしてしまった私の失敗。 続いてフレイアを奪還せんとミリアとユリアを向かわせた……本来なら一度本国へ戻り、作戦を練り直すべきだったのだ……」
牢屋の中でヴィクターは自信のミスを悔やみ、二人に謝った。
「……懐かしの再会の中、申し訳ない……こちらも時間がないのでな……本題に入らせてもらうよ……。 ヴィクター殿……我帝国に裏切り者がいるという情報が入っている。 その者の名前を知っているのは貴方だけだった……教えてもらえないだろうか? 」
感傷に浸っている元仲間の間に割入ったのはレイルだった。 彼はヴィクターしか知らないときめきって、帝国の裏切り者を聞き出した。
「……なるほど……作戦は失敗。 そうだろうな……フレイアとミリアがそっちの手に堕ちたんだ……。 確かにルミエル王国に協力してくれる帝国の者がいるのは正解だ……」
ヴィクターは認めた。 しかし名前を言おうとはしなかった。 ヴィクターなりのケジメだろうか、その者の名前を言えばその者は処刑される。 それを阻止するために最後の抵抗を見せた
「……作戦とは、なんだろうか……? 」
「……ふん、もう失敗に終わったのだ。 教えてやろう。 我々ルミエル王国が私達騎士に下した命令は……貴様ら帝国の皇子の暗殺だ……」
ヴィクターの発言にレイルはゾッとした顔を見せた。 フレイアはその顔を見て、この人もそういう表情をするんだと感じた。 レイルは普段から顔色一つ変えずに冷静に淡々と物事を進める男だったからである。
そのレイルが見せた顔は、まさに帝国の危機とも言えた。




