酷い拷問
レイル尋問官が元捕虜の二人フレイアとミリアを配下に連れユリアの収監されている場所へと向かう。 そのフロアに入った瞬間フレイアとミリアは強烈な血なまぐさい匂いに吐き気を催した。 と同時に無数の悲痛な叫び声が彼女らの耳を劈く。
「……ひ、酷い……」
助けてくれ、もう殺してくれと嘆く囚人達を横目に通路を渡り、一番奥の独房へと向かった。
「……あ゛あ゛あ゛あ゛……っ……」
のたうち回り、繋がれた枷をガチャガチャと音を鳴らして暴れるユリアが居た
「……ユ、ユリア……っ!!……き、貴様ァ!!……何をしている……!!」
ミリアはその光景を目の当たりにし尋問官へと飛びかかり胸ぐらを掴み押し倒した
「……んなっ!?……なぜ捕虜が脱走している!?……てめぇレイル! どういう訳だ?」
ミリアに押し倒されながらも、その後ろに立っている同僚のレイルに目を向ける。
「……チャド……お前はやり過ぎだ……情報を吐かせるのが俺たち尋問官の仕事だろ? こんな事ばかりしているからお前の担当捕虜は情報を吐く前に死んでくんだバカ者」
冷静にチャドという同僚尋問官を静かに注意するレイルの目はどこか怒っている様にも見えた。
「どういう訳だと聞いている!! なぜ捕虜がこんな所にいる!!」
「……お前ユリアに何をした!! 返答次第では殺すぞ……!!」
ミリアの手はチャドの首を絞めあげようとしていた。 ものすごい殺気を放ちながら鬼の形相でチャドを睨みつけた。
「……ミリア、そこまでにしろ……お前はもう帝国の人間だ……仲間を殺そうとするな……。 それとチャド、この捕虜は俺の担当捕虜にする。 異論は認めん……ミリア、フレイア……俺の執務室まで連れて行ってくれ」
レイルは冷静にミリアを宥めながら二人に的確な指示を出した。 フレイアとミリアはそれを聞いてボロボロになったユリアを連れて先にレイルの執務室へと向かった。
ユリアの独房に残された二人の尋問官レイルとチャドは少しの沈黙の後、互いに睨み合いになっていた。 チャドは体を起こし、レイルに状況説明をするように言った
「……わかってるんだろうな? お前の返答次第で、これは帝国への謀反になるんだぞ? 」
チャドは懐に隠し持っていたナイフをレイルの首元へ向ける。
「……この捕虜達は使える……俺の部下として使役し戦争を終わらせる駒にする。 これは俺の独断だ。 お前が俺を裏切り者と思うなら今ここで殺せばいい」
「……部下として使役?……くくっ……笑わせる。 相手はルミエル王国の騎士だぞ? あの国の騎士の忠誠心は敵ながら称賛するに値するくらいのものだ……」
チャドのナイフは以前レイルの首をいつでも斬る準備が出来ている。
「……お前に信用してもらはなくてもいい、いずれ皇帝陛下に説明をし、直々に許可を貰うつもりだ……それと、もしアイツらが本当に帝国へ寝返ったのでなければ今頃逃げ出して警報が発令されているはずだろう?」
レイルの言っている事は正しかった。 解放された騎士達がずっとレイルの傍にいて、且つ命令を聞いているのを目の当たりにしているチャドはレイルの正論に何も言葉が出なかった
「……では、ユリアを治療せねばならんのでな……新しい玩具ならまたさがせばいい……俺は別にお前のやり方を否定はしない……要領が悪いとは思っているがな」
チャドのナイフを持っている手に力が抜けるのを確認した後、そのままレイルは先に向かった二人の元へ向かった。
ーーーレイルの執務室ーーー
「……ユリア……っ……!! ど、どうしよフレイア……血が……止まらない……」
「……お、落ち着いてミリア……直ぐにレイル様が来て何とかしてくれるはず……」
執務室にあるソファにユリアを横に寝かし、傷だらけの体に応急処置を行っていた。
「……ユリアの調子はどうだ? 」
そこにちょうどレイルが帰ってきた。 二人は一斉にレイルの方へ走りだし、二人同時に慌てた様子で話しかける
「……少し落ち着けお前ら……二人同時に話されてもわからん……」
「……す、すみません……ユリアの傷はかなり酷くて……体中に切り傷や痣が至る所に……それと……」
「……それと……?」
フレイアが少し言いにくそうに小さく呟いた
「……右目が……くり抜かれてます……」
その言葉にレイルは驚愕した表情でユリアの元へ向かった。 ユリアは荒々しく息を切らしていた。 確かにその右目は無くなっており、血が止まらず溢れていた
「……チャド……やり過ぎだろ……あのバカ」
「……私、あいつ殺してきてもいいですか……ユリアを……妹をこんな目に合わせたやつを許せるわけ……」
「……ダメだ……さっきも言っただろ? お前はもう帝国の騎士だ。 一旦落ち着け……騎士ともあろう者が動揺を見せるな」
「……」
ミリアは泣き崩れ床に伏せた。 フレイアはそのミリアに寄り添いあった。
「……まずはユリアの治療を最優先にしよう……」




