第十七話「リンカの戦い」3
「リンカよ。この森を守ってくれるのは大変ありがたいことだが、王立警護隊の仕事の方は大丈夫なのか?」
「うーん……。時々は顔を出した方が良いのかもしれないけど、任務がある時はオリビアが迎えに来てくれるから、ダディは気にしなくていいよ」
「そうか……。国を守り、民を守るという務めは大事なことじゃ。乙女でありながらリンカはとても強く逞しく成長をしてくれた。王立警護隊の仕事も疎かにするでないぞ」
「勿論だよ。リンカもまだまだ勉強しないといけないことが沢山ある。立派なファイブスターナイツの一人になれるよう務めを果たすよ」
戦闘の後でも疲れを見せず、いつもの軽口で父親と言葉を交わすリンカ。
19歳という年齢ながら、王立警護隊に入隊して精神的にも大人に成長した姿は両親としても鼻が高い。
ただ、ずっと近くで成長を見守ってきたからこそ、親心として心配する気持ちは絶えないのだった。
テレビやラジオもなく、通信技術が発達していないこの時代の人々にとって、距離が離れた人と連絡する手段はとても限られる。
そのため、オリビアが直接出向いてリンカの下まで迎えにやって来ることがあるが、これが非効率な方法であることはリンカ自身も自覚している。
電話やメールも登場していないことから、文書の配達を頼んだとしても早くとも半日は掛かり、伝書鳩を利用してもそれなりに時間は掛かる。
そのため、距離の離れた森の中に長期間滞在するのは好ましい状況ではない。
19歳という若さかつ身体能力が高い獣人族という特別な境遇にあり、森の安全を守ることもリンカに与えられた任務の一部と認識されていることから、この状況が容認されていると言える。
リンカを愛する両親の心配事は尽きないが、自分達を遥かに凌ぐ強さも認識している。リンカの父親も身体能力が高く、リンカが小さい頃は狩りの方法や森の中で生き抜くいろはを伝えてきたが、今は腰を悪くして戦列を離れている。
リンカは父親から学んだことを受け継ぎ、自発的に森を守るために尽力をしているのだった。
「それじゃあ、報告を済ませたら少し、動物達を見てくるよ」
「そうかい。夕食を用意しているから、夕食までには帰って来るのよ」
「うん。最近は寒くなってきたから、マミィのシチューが食べたいな」
「分かったよ。温かいシチューを用意しておくから、頑張っておいで」
「ありがとう! 行ってくるね」
マミィと呼んでいる母親とも言葉を交わし、手を振って二人の下を離れるリンカ。
母親が作る温かいシチューは小さい頃からずっとリンカの大好物。リンカは両親との団欒を楽しみに報告へと向かうのだった。
森の中で暮らし、自然を守る。
その意思を同じくする三人の絆は血縁以上に深いものがある。
成人を迎えたとはいえ、リンカはまだ、親元を離れて暮らすのは辛く、両親との日々が恋しい年頃。
この森以外では、シカリア王国内で獣人族が暮らした前例がないだけにリンカはまだこの森を離れることには消極的だった。




