第十六話「大罪のレクイエム」3
やがて、落ち着きを取り戻したオリビアに対して、女王は話を続けた。
「貴方が立案した作戦は立派なものだったわ。作戦が失敗したのは貴方の報告書通り、周りの仲間達が不甲斐なかったから。そう判断したわ」
「しかし、私は仲間達を負傷させ、殺してはならない観光客達の命を奪ってしまいました。極刑と言われても従う覚悟です」
「そうですね。私もとても大変な思いをしました。観光客を殺してしまった際に責任を負うのが一体誰か、貴方はご存じですか?」
決して女王の前で俯いてはならないと、顔を上げて強い瞳で訴えかけたオリビアに対して、さらに意外な言葉を女王、マリアンナは告げた。
「それは……」
さらに動揺をするオリビア。
オリビアの性格を把握してイニシアティブを取って話しを進める女王。
確実に説得をするための詰めへと入って行く女王は言葉を続けた。
「責任を負うのは貴方じゃない、責任を負って謝りに行くのは私の仕事なのよ。聡明な貴方ならこの意味が分かるでしょう?」
「はい、申し訳ございません」
大きく頭を下げて、謝罪の言葉を告げるオリビア。
彼女がこの時以上に反省を意を本気で示したことはない。
そうはっきりと言えるほど、オリビアは女王の言葉にひれ伏すほどに恐怖した。
何故なら、犯罪者と言えど、殺害してしまった責任はシカリア王国が負うことになるためだ。
それが観光客を大事にする観光立国の在り方であり、観光客を送る他国への信頼の証であった。
観光客が犯した罪はシカリア王国ではなく観光客が住んでいる国の司法によって裁かれる。それが当時の基本となる両国の取り決めだった。
そのため、犯罪者は殺すことなく拘束し、本国に送還しなければならない。そうしなければ、責任問題となってしまうのだ。
「だから、私の怒りを鎮めるためにも、貴方には責任を負ってもらうことにしたのよ」
「どういうことでしょうか?」
間髪入れず、雄弁に説明を始める女王に対して、オリビアは恐れを抱きながら説明を求めた。
「そう難しい話じゃないわ。ファイブスターナイツの隊長になったばかりの彼女と一緒に戦って欲しいのよ。貴方もファイブスターナイツの一員となってね」
そう言って紹介されて前に出てきたのが、一緒に牢の扉までやって来ていた、ディオーナであった。
「将来的には貴方には参謀役になってもらいたいのよ。
ディオーナは国に対する忠誠心も高く、完璧主義者。
他の隊員以上に責任をもって忠実に任務をこなすでしょう。
貴方好みの戦乙女としてね。
今はまだ、国の地盤は安定をしているけれど、やがて大きな変革がやって来る。
その時には貴方達が中心となってこの国を守って欲しいのよ。
若い貴方達の可能性を信じてみたいから」
揺るぎない真っ直ぐな女王の言葉。
それが夢幻ではなく、噓偽りのない真実の言葉だと理解した時。
オリビアはディオーナと視線を交わし、全てを受け入れる覚悟を決めた。
期待に満ちた二人に見つめられたまま、真っ白に視界が染まっていく。
そして、ゆっくりと記憶の扉が閉じられ、懐かしい過去を振り返る時間は終わった。
「オリビア……。珍しいな、こんなところで昼寝をしているなんて」
「ディオーナですか……。懐かしい夢を見ていました。
それが面白くて、思わず目覚めるのが勿体ないと思ってしまったのよ」
ディオーナの声で目を覚ましたオリビアは穏やかな声で返事を返した。
昼下がりには丁度いい、心地良い目覚めだった。
「何を言っているのか分からんが、作戦会議に行くぞ」
「あぁ、ディオーナ。お前は期待を裏切らない女だな、本当に」
「褒めているのか?」
「当たり前だ。夢の中で出てきたんだからな」
何時になく上機嫌になって会話を交わすオリビア。
ディオーナは不気味な笑みを浮かべるオリビアの姿を訝しげに見つめたまま、彼女が立ち上がるのを待った。
多くを語らず、理解されることのない彼女の本性。
陰の立役者としてサポート役に徹する彼女の真の強さ。
そのルーツは、苦い過去の記憶に封じられているのだった。
なお、ディオーナとオリビアの二人が参加した作戦の成功率は100%である。




