第十六話「大罪のレクイエム」1
ファイブスターナイツの一人、オリビア・メルーシェス。
眼鏡を掛けた黒人という、王立警護隊では珍しい外見的特徴を持つ彼女は、時に冷酷非情と評され、ファイブスターナイツの一員として活躍を続ける戦術予報士である。
砂漠化が進行する東地区で生まれた彼女はギフテッド、いわゆる天才肌の神童で周りの子ども達とはあまりにも馴染めない子どもだった。
周りと会話が噛み合わず、孤立をしていた彼女の唯一の生き甲斐は本を読むことで、両親以外、誰の言葉も聞くことなく、彼女は幼年期から多く書物を読み漁り、高い知識を蓄えていった。
同年代と比べて著しく高い能力を持つ彼女は両親の勧めで中心都市の王宮近くにある特待生制度がある学園に一発合格、入学を果たして両親の下を離れて寮暮らしを始めた。
その後、黒人でありながら秀才と謳われた彼女が選んだ就職先は王立警護隊だった。
産業化が進んでいないシカリア王国では高い知能を必要とする場所は少ない。医学知識が豊富であることから、医者になる道が最も最善であったが、王立警護隊においても医療知識を豊富に持つ人材を募集し、重宝していることから、彼女はあえて戦場に近い王立警護隊を選んだ。
彼女に言わせてみれば、この進路選択は自分の才能を最も必要としている場所を求めた結果だったという。
18歳の若さで王立警護隊の隊員になった彼女に大きな転機が訪れたのは三年前、21歳の頃のことだった。
他の隊員にはない高い教養を持つことから、指揮官としての才を見出されたオリビアは望まずしてとある作戦の指揮を任された。
それは観光客を中心とした犯罪者集団が立て籠もりをしている施設への突入作戦だった。
作戦に参加し、施設に突入するメンバーは入隊して数年以内の王立警護隊の若い隊員のみで21歳のオリビアが最年長という悲惨な有様だった。
事件が起こったのは夜間で立て籠もったのは繁華街の施設。
人質救出を主目的としているため、事態が急変する前に対処することが求められ、悠長に待っていられるほど猶予はなかったのだ。
オリビアはこれまで、与えられたどんな任務も受け入れ、淡々とこなしてきた。それはオリビア自身の性格によるもので、生への執着もなかった。
指揮官として部隊の責任を引き受ける立場になったオリビアは作戦が最も成功しやすい作戦を立案。それぞれが自分の役割を着実に果たせば、十分、人質を救出し、犯人を逮捕することは可能だと隊員達に作戦内容を伝達した。
しかし、限られた時間で導き出されたオリビアの隙の無い計画とは裏腹に結果は散々なものだった。
拳銃を所持する犯罪者に対して怖気づいてしまった隊員達は一人二人と次々にオリビアの計画した作戦を違反。それは戦術的失敗を招き、現場は騒然となり混乱の一途を辿った。
だが、絶体絶命の窮地となったその時、信じられない奇跡が起こった。
オリビアの所持していた杖の先端に取り付けられた宝石が輝きを放ち、犯罪者達を忽ち虐殺したのだ。
戦闘の中で開花したオリビアの秘技、サンライト・シャワー。
放射線状に放たれた光の矢はまるでレールガンのように次々と犯人達の身体を焼き尽くし、オリビアの意志とは無関係に圧倒的な強さで無力化していった。
激しい戦いはこうして予想だにしない形で終結へと向かい、オリビアは自分が生きていることさえ、不思議に思うほどだった。




