第十五話「太陽のような彼女が愛する人」4
ある日、一歳年下のクオンに見守られ、池に向かって不機嫌そうに石を投げていたエリサ。それを偶然に見つけたエリーは何か嫌なことがあったのかと心配になり近づいていった。
「どうしたの? こんなところで」
「エリーさん……。今度の舞踏会のことで」
「お母様から出るようにって言われちゃった?」
エリサの隣に寄り添い、しゃがんで目線を合わせてエリーは声を掛けた。
エリーに話しかけられたエリサは右手を振り上げる手を止め、腕を下ろすと小さく頷き、落ち込んだ様子で項垂れた。
エリーは望まずして男性として産まれてしまったエリサが自分と同じ習い事を数多く受けていることを知っていた。
可愛いもの好きで、女性らしい振る舞いや交流が苦ではなかったエリーにとって、嫌いな習い事はなかったが、エリサにとってそれは違った。
男性として産まれながら去勢を強いられ、従者としてスカートを履かされているクオンに同情をしていたエリサにとっては、好きな習い事はピアノだけで、舞踏会のために続けているダンスレッスンは苦痛でしかなかった。
それでも、王子としての役割を果たさなければならないエリサは母親である女王の命令に従うことしか出来ない。
お気に入りのドレスに着飾って踊ることが出来る、舞踏会を楽しみにしているエリーにとって、エリサの抱える苦悩は簡単には解決出来ない、複雑なものだった。
「エリサ王子は舞踏会に出るのが嫌なの?」
「うん。だって、女の子と同じ服を着て踊らないといけないから。僕はクオンと同じなのに、お母様はレッスンの成果をちゃんと披露しなさいって」
「そっか……。ドレスを着て踊るのが嫌なんだね」
「僕はクオンと同じだよ。男はドレスを着て舞踏会で踊ったりしないって。それなのにお母様は……」
「衣装を選ばせてくれなかったんだ……」
「うん、舞踏会で着る服は全部、お母様が決めてしまうから」
話しかけてきたエリーに対して、素直に自分の心境を打ち明けるエリサ。
エリーはお姉さんとして、どんな時も思い悩むエリサに寄り添ってきた。
この時も、それが変わることはなかった。
「あたしも舞踏会には出ることになってるの。
ドレスを着るのは嫌かもしれないけど、良かったら一緒に踊ってくれる?
全然、解決にならないと思うけど、周りのことなんて気にせず、あたしだけを見てくれていいから」
エリーは何とかエリサを慰めようと自分に出来ることを伝えた。
しかし、言葉にした後で大胆な申し入れをしてしまったことに気付き、心がざわついてしまった。
いつも優しく接してくれるエリーの言葉を聞き、驚いた様子で見つめるエリサ。沈黙は長く続くことはなく、エリサは一言「いいの?」と確認を取った。
「エリサ王子がそれで我慢して乗り越えられるなら」
エリーが笑顔でそう告げると、エリサは練習が上手くいかなくて不安だったことやドレスを着るのが恥ずかしいことなど、正直に打ち明けた。
それを聞いたエリーは、年齢の離れたエリサには自分に対する恋愛感情はないと察しながら、胸が苦しくなるほどに眩しく、恋焦がれていくのだった。




