第十四話「ヘブンスターズ」3
「これはボリューミーで美味しそうだ……」
約三分後、エリーの手元には肉や野菜などをアラブ風パンに包んで食べる”シュワルマ”という中東発祥のストリートフードが握られていた。
「神への感謝を込めて、頂きます! う、美味い! 口いっぱいに幸せな味が凝縮していますー!」
ベンチに座り、口を大きく開けてシュワルマを頬張り、持ち前の食欲で上品さも忘れて屋台飯を堪能するエリー。
シュワルマはトルコのドネルケバブと同じようなルーツを持つ屋台料理の定番で、大きな羊肉や鶏肉を回転させたものを切り取り、様々な食材と合わせてピタパンに挟んで食べる料理。
手巻き寿司感覚で一度に様々な栄養を摂取できるだけでなく、その店独自の味付けをすることで個性を作り出すことが出来る魅惑の料理だ。
「これは何とも堪りません。一度、食べたら病みつきになって止まらなくなりますね」
行き交う人の姿が絶えることのない、屋台が立ち並ぶ城下町でエリーは夢中になってシュワルマを味わった。
エリーがシュワルマに夢中になっていると、やたらに赤黒い、歪な姿形をした食べ物を手に掴む、プリシラが姿を現した。
「エリーったら、探しましたわよ。また美味しそうなものを食べていますね」
「シュワルマですよ、お姉様……。一体それは何なのですか?」
「あら? エリーったらこれを見て分かりませんの? カエルですよ、カエル。庭園にある池でも見かけるではありませんか?」
意気揚々とエリーの前に買ってきた串に刺さった食べ物を一度入れた袋から取り出すプリシラ。
それを目の前で目撃した瞬間、エリーは度肝を抜く勢いで驚き、絶叫した。
「ぎあぁぁぁぁぁ!! 何てものを食べてるんですかっ?! お姉様?!」
プリシラの買って来た食べ物。
それは思わず目を逸らしてしまう程にグロテスクな形状をしたカエルの丸焼きであった。
「そんなに驚かなくても……。普段からよく見ているではないですか」
エリーが身震いして視線を逸らすのもお構いなしに平然とカエル丸焼きを食べ続けるプリシラ。
立ち並ぶ屋台を見て回っていたプリシラは以前にも買ったことがあるお店の店主に手招きをされ、良いのが入ったよと声を掛けられ、カエルの丸焼きを何の躊躇いもなく喜んで購入してきたのだった。
「普段からよく見えているから余計に精神ダメージを受けているんですっ!
あたしはカエルさんを見て可愛いなと思っても食べたいとは思ったことはありませんっ!
もう……。お姉様はこの前も嬉しそうにサソリを食べていたじゃないですか……」
「そうですそうです。サソリを食べさせてくれたあのお店の人がまたくれたんですよ」
「それは、お姉様実験台にされてるだけですよ……。
普通の人は食べたりしませんから」
「そうなんですの? せっかく味付けもして調理もされてるのに。勿体ないですね」
食欲を一気に失う程に衝撃を受けるエリーの目の前で、何の疑問も持たず完食してしまうプリシラ。
何でも食べてしまうこの勇敢さがあれば、たとえ食べるものが無くなって大変な世の中になったとしても、プリシラだけは生き残るだろうとエリーは吐き気を催しながら思うのだった。




