第十四話「ヘブンスターズ」2
十二月に入り、シカリア王国にも長い冬の季節が訪れ始めた。
すっかり風が冷たくなり、軽装で出歩く人も城下町では見かけなくなり、プリシラとエリーも長袖の洋服に分厚めのコートやカーディガンを羽織るようになった。
プリシラはネイビーカラーのワンピースにベージュカラーのカーディガンを羽織り、お洒落に着飾りつつ、寒さを凌げる服装を心掛けていた。
シカリア王国の女民、皆が自由にファッションを楽しめる程、以前ほどの豊かさは失われたが、諸外国から見ると女性しかいない華やかさは変わらず保ち続けている。
特に富裕層が多く暮らす、シカリア王国の中心地である城下町での町並みや人々の姿には変わらない華やかさがあり、それ自体が観光スポットの魅力の一部になっている。
この華やかさこそがシカリア王国の魅力であり、人を惹きつける所以でもある。そのことを真摯に受け止める女王はこれからも品格のある女性達の営みを支える国家であることを表明している。
自国民が自発的に品格のある淑女の嗜みを保ち続けること。
それ自体が観光立国であるシカリア王国の魅力たりえる。
窈窕淑女な振る舞いを手本として見せることを自然と求められるファイブスターナイツのメンバーは時に女民達の憧れであり、お手本でもあり続けているのだった。
たまの休日を楽しむため、城下町へと繰り出した仲の良いエリーとプリシラ。
観光客の出入りが増え、刻々と変わりつつある町の景観は二人にとっても新鮮なものであり、刺激の宝庫である。
昼食を食べることなく、出掛けることになった二人は早速、軒先に出ている屋台に目を奪われた。
「良い匂いがしますね」
「美味しそうな焼き鳥ですね」
二人は足を止め、香ばしい香りを漂わせ、炭火で時間を掛けて焼き上げられた焼き鳥の姿に引き寄せられた。
煙を上げる串に刺さった焼き鳥は屋台に向いた食べ物の一つ。
ジュージューと甘美な音色を奏でる誘惑は通り過ぎていく人の足を止め、空腹感を刺激させる。
昼食を抜いて外に出てきたエリーはこの誘惑に堪えることが出来ず、早々に人差し指を立てて、タレの付いた焼き鳥を一本、店主に要求した。
「エリーちゃん、お疲れ様。焼き立てをがぶりといきな」
「ありがとう! お姉さん!」
タオルを巻いたいかつい目付きをした女性から焼き鳥を受け取ったエリーは早速、周りの視線を気にすることなく焼き鳥に喰らい付いた。
「うまぁ……。美味しいです」
空腹も隠し味にして口に入れた焼き鳥の味わいに幸福な笑顔を綻ばせるエリー。甘辛いタレに浸し、ジューシーに焼き上げられた焼き鳥は歯応えもあり、見た目にも約束された申し分ない旨さだ。
あっという間に焼き鳥を平らげていく姿をまじまじと目の前で見せ付けられることになったプリシラは生唾を呑み、耐えがたい衝動に襲われた。
「むぅ。そんなに美味しそうに食べる姿を見せつけられたら居ても立っても居られません。私も獲物を捜してきます」
そう言葉を残すと、エリーの反応を聞く前にその場からプリシラは消え去ってしまった。
「獲物を捜してきますって……。狩りに出かけるわけじゃないんだから。そそっかしいですね、お姉様はっと……。あたしも次の屋台飯を求めて歩きますか……」
焼き鳥一本程度では当然空腹が満たされないエリーは次の食料を求めて近場の屋台を練り歩いた。




