第十四話「ヘブンスターズ」1
ファイブスターナイツの休日。
その日、エリーと城下町へと出掛ける約束を交わしていたプリシラは支度を済ませ、一向に部屋にやって来ないエリーを見かねて出迎えに向かった。二人は同じ王宮かつ部屋は隣同士という近距離で暮らしているのだ。
「エリー! もうお出掛けに出る時間ですよ! いつまで準備に手間取っているのですかっ!」
折角の楽しみをお預けされているような焦らしプレイを受けていたプリシラは苛立ちを隠さず、堪え切れずに勢いよく扉を開け放った。
童話の世界のようにファンシーな空間をしたエリーの自室に入ると、プリシラは偶然にもエリーの着替え姿を目撃した。
「お姉様っ! いきなり扉を開いて、着替え中に入って来ないでください!」
「まだ旅支度が出来ていないのですか……。もう、大人しく部屋で待っていたというのに。一体、何をいつまでもぐずぐずしているのですか」
部屋に入った途端、慌て始めるエリーの姿に呆れ顔を浮かべるプリシラ。
仕方なく部屋の中へと入り、扉を閉めるが、未だエリーはレース柄の下着姿でベッドに座ったまま、ショートパンツを履こうと試みている最中であった。
「お腹が苦しくて、なかなか履けないんですよっ……」
「諦めて他のものを履けばよいではないですか」
「やだやだ! この前までは履けたんだもん! 本当なんだよっ!」
「そんなに嘆かなくても……。サイズが合わなくなったものを無理して履くことはないでしょう」
お気に入りのショートパンツが入らなくなり、情けない声を上げるエリー。
お腹周りに付いてしまった脂肪はすぐにどうにかできるものではない。
体格を気にするエリーとっては半狂乱になるほど死活問題だったが、エリーほど自分の体格を気にすることがなくなったプリシラは早く出掛けたい気持ちで一杯だった。
「ファイブスターナイツの一員になっても貴方は一向に変わりませんわね」
「お姉様だって、ちっとも変わってないじゃないですか」
エリーの着替えが繰り広げられる中、悪態を付いて張り合う二人。
ファイブスターナイツの一員でありながら、しっかりと身だしなみを整える大切さは忘れていない両者であるが、休日などに着る、普段のファッションに関しては違う。
思春期の頃から強いこだわりを持ち続け、可愛く着飾りたいエリーと自分の年齢に見合った大人のファッションを心掛けるプリシラ。
互いに魅力的であることに変わりはないが、相容れないものが両者の間にはあるのだった。
お気に入りのショートパンツを諦めたエリーは短めの丈の赤いプリーツスカートに履き替え、桃色のトップスを下着の上に着て、最後に膝下辺りまで隠れる白いロングコートを羽織って支度を続けた。
一方その頃、エリーのファッションに口出しするのに飽きたプリシラはエリーの本棚を漁り、待っている時間を利用して甘美な読書の時間を送っていた。
「お姉様、旅支度が出来ましたよ」
「随分、長引きましたね。はて、何で眼鏡を掛けているんですか?」
「ファッションです。可愛いでしょ? 最近の流行なのよ」
「実用性のないものを好む癖は変わりませんわね」
「むぅ……。すぐそういう萎えることを言って。先生に嫌われますよ」
「先生の眼鏡はファッションではありません。エリーは分かっていませんわね」
度の入っていない眼鏡を付けて、可愛くポーズを取るエリーを軽くあしらい、顔色一つ変えず一蹴するプリシラ。
姉妹のように軽口を掛け合う二人はようやく準備を終えて部屋を出ると、城下町へと向けて王宮を後にした。




