第十二話「道化師の笑顔」4
庭園を後にしたエリサは王宮へと戻る道中の最中、クオンから七か条の要望書について改めて確認を取った。
内容自体は頭に入っていたが、暗唱が出来る程、繰り返し読み込んだわけではない。
そのため、何度も胸に刻み、完全に記憶をしているクオンから改めてその中身を聞いたのだった。
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七か条の要求。
革命を企てるレジスタンス組織であることを隠す、ルミナスリバティーが自警団組織として王宮へ送った七か条の要望書のことを指す。
これは民衆の陳情を束ねた人々の願いであり、政を取り仕切る王宮はこの要望に誠意をもって答える義務があると訴えかけている。
これを基にした交渉も継続して行われており、ルミナスリバティーはこの要望書の承認を得るために、各地で署名運動を行っている。
なお、ルミナスリバティーはテロ行為への関与について、これを一切認めていない。
ルミナスリバティーによって立案された、七つの要望は以下の通りである。
1、諸外国に通用する男女平等の原則に則り、男性でも女性でも生まれる権利、暮らす権利、移住する権利を与えるものとする。
2、女性同士の結婚のみならず、男女の結婚を可能とするものとし、性別によって恋愛や婚姻、離婚の禁止をされないものとする。
3、男女の性行為によって誕生した子どもを出産する権利。また中絶する権利を当事者が有するものとする。
4、観光客による犯罪行為は自国民と同様に裁かれることを原則として、国内での逮捕、拘留、裁判、刑罰の確定、及び執行を自国の刑法に基づき執行する。
→殺人や性犯罪、強盗や国家反逆罪などにおいて、特に罪が重い残虐が犯行に関しては自国の刑法に基づき裁判を行い、処罰を執行する。
5、観光客などの海外からの渡航者であろうと、自国民との婚姻を認めると同時に同居を可能とする。
6、子どもは王宮から与えられるものではなく、自国民の意志によって産み、育てる権利を有するものとする。→子どもは人同士の自然な性行為によって誕生するものであり、神の祝福等の国家的な手段による子どもの生産、譲渡の禁止。研究施設の放棄を行う。
7、王宮はこれらの要求に対して可能な限り早急に対策を講じ、定められた期限に基づいて交渉を継続するとともに、全ての人々の自由と権利のために制度改革を実行に移す。
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「どれも諸外国並みの男女平等な国造りのために必要不可欠なものと考えますが、聡明なエリサ王子なら、どれも簡単に飲んでくれる要望でないことはお判りでしょう」
「そうだね、ディオーナの言う通り、この要望を受け入れるなら、シカリア王国は大きな変革の渦に飲み込まれていくことになる。母様が簡単に受け入れられない理由がよく分かるよ」
幾つか補足となる注釈がなされた要求書に隙は見当たらない。
本気で革命を果たそうとする、アントニオの意向がふんだんに盛り込まれていることが分かる。
だからこそ、女王は簡単に頷くことも、真摯に交渉を続けることもできない。
妥協案を探ることさえ、容易なことではないことは、エリサにもよく分かった。
夕陽に染まる片割れ時。賑やかで平和的なお茶会からの帰り道。
七か条の要望書についてその内容を思い出したエリサはその中身を改めて噛み締める。
政治的な話しには俯き加減で拒絶反応を示してきたが、父親であるアントニオが始めたルミナスリバティーに関わることでそうも言っていられなくなってしまった自分がいる。
切実な思いを語ってくれたポールの言葉が何度も頭の中を反芻して駆け抜ける。
それでも、エリサは平和的解決を目指すことが、一番だという思いは変わらなかった。




