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ジェンダーフリースクリプト~始まりの物語~  作者: shiori@


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第十二話「道化師の笑顔」3

 お茶会が終盤に差し掛かり、ディオーナはエリサが気になっていた事項に答えた。


「王子は自警団組織のルミナスリバティーについて興味がおありなのですか?」


「うん……。観光客の人数が増加傾向にあってトラブルの対応に追われているのは知ってるから。王立警護隊で対応しきれない点は、自警団組織のルミナスリバティーが対応を請け負っているんだよね?」


「その通りですが、彼らは繫華街の治安維持に努める一方で、変革の時代を望んでいます。

 王子は彼らが要求した七か条の内容をご覧になられましたか?

 あれはこれまでシカリア王国が歩んできた千年以上に及ぶ繁栄の歴史を全否定するものです。諸外国と同様の制度にしたいという願望は分かります。

 しかし、シカリア王国にはシカリア王国のやり方というものがあるのです。国民の理解を得られないまま改革すれば大きな混乱を招くことになるでしょう」


 徐々に強い口調へと変わって行く、ディオーナの鋭い観点から繰り出される言葉の数々。

 エリサには秘密にしているが、度々、女王とルミナスリバティー側との交渉の席にも同席しているディオーナから意図せず本音が漏れ出ていた。


「七か条の要求……。ルミナスリバティーが治安維持に務める中で影響力を強めてきたから、出てきた要望書だよね?」


「その見解に間違いはありませんが、危険なものには変わりありません。

 増長を招く可能性もありますから、簡単に要求を呑むわけにはいかないでしょう」


 女王の意志を代弁した形でディオーナはエリサに恐れながら答えた。

 お茶会の場で明らかになっていく、女王の意向。


 彼女達に対して警戒心を強めたクオンは悟られぬよう、机の下でエリサの手を握った。

 これ以上、会話を続けて深入りすれば、自分達がルミナスリバティーと接触していることがバレてしまうかもしれない。

 危機感を募らせるクオンの心情は辛うじてエリサに伝わり、エリサは大丈夫だよと伝えるため、クオンの手を強く握り返した。


「ディオーナの気持ちはよく分かったよ。僕の問いに答えてくれてありがとう」


「いいえ、政治的な話題になるとつい熱くなってしまう性分で失礼なことを申し上げました。常々、エリサ王子がこのような話題を嫌い、避けていることも知っていながら踏み込んだ発言をしてしまい、無礼をお許しください」


「ううん、いいんだ。僕はディオーナのように政治に詳しいわけじゃない。だから、わざわざ話をするのも悪いと思っていたんだ。お茶会に誘ってくれて本当に感謝しているよ」


「はい、こちらこそ、このような場にお越しくださり、感謝致します」


 エリサとディオーナはこう言葉を交わし、二人の会話は一線を超えることなく終わった。

 こうして、二時間以上掛けて行われたファイブスターナイツとのお茶会は閉会を迎えた。


 ケーキを完食し、アップルティーだけでなく、ココアやローズヒップティーも一緒に頂いたエリサは満腹になったお腹をさすり、クオンに続いて立ち上がった。


「エリサちゃん、これに懲りずにまたお茶会に参加してくださいね。今度は私と二人きりでも良いのですから」

「そんなぁ! プリシラ姉さん、抜け駆けはズルいですよ! あたしもエリサ王子と一緒にお茶会したいのっ!」

「はいはい……。分かりましたから、エリー。城下町の方まで散策に出掛けるのもいいですし、またお付き合いくださいませ、エリサちゃん」


 二人の傍に閉会を惜しむプリシラとエリーがやって来て、揃って声を上げる。エリサは思わず二人のような女性ばかりなら、平和的解決を目指しながら、ルミナスリバティーの理想を叶えられるのにと考えてしまった。


「はい、どうぞよろしくお願いします。皆さんと一緒にいると日々の疲れも忘れて心が洗われます」


 安堵した心地で二人の誘いの言葉に応えるエリサ。

 好意的に自分の意見を捉えてくれた二人なら、一緒にお茶会をするのも城下町に繰り出すのも楽しいだろうなとエリサは思った。


「うふふふっ、そう言ってくれると嬉しいわね。

 今夜、こっそり夜這いに行こうかしら」


 気分を良くしたプリシラが大きな胸を揺らし、自己主張をする。

 夜這いという直接的な表現に動揺しかけるが、エリサはこれもプリシラのサービストークと解釈して、誘惑に負けることなく誘いを躱すことにした。


「クオンも一緒に同席しても良ければ、一緒にお茶でも飲みましょう」


「エリサちゃん、いけずね……。セクシーなネグリジェ姿に行こうと思ったのに、それだったら、全然夜這いにならないじゃないの」


 残念そうに肩を落とすプリシラ。それでも、その表情は優しく穏やかなものだった。


 プリシラとエリーと会話を交わす間にお辞儀をすると、すぐにこの場を立ち去っていくオリビア。

 同じく、手を振って元気に挨拶をすると、颯爽と消えて行くリンカ。

 二人は王宮で暮らしているわけではなく、長居するわけにはいかないため、お茶会がお開きなるとのんびりと過ごすことなくこの場を去った。


 それに続いてプリシラとエリーも庭園から離れていくと、最後にディオーナがやって来た。


「王子、私はこの国が変わって行くこと自体は良いことだと考えています。

 しかし、彼らからは危険な匂いがします。

 最悪の事態を招かぬよう、私は女王のお傍を離れず、お仕えしていく次第です」


 エリサの前で決意表明を行うディオーナ。

 この生真面目さこそが王立警護隊の隊長を任されているディオーナの姿。

 女王に忠義を尽くすその姿はエリサにとっても疑いの目を掛けることなく安心して見ることが出来るのものだった。


「うん、分かったよ、ディオーナ。

 母様のことをお願い。信頼しているよ」


 大きくお辞儀をして、誠意を見せるディオーナを信頼して、返事を返すエリサ。

 これ以上の会話はディオーナにも悪いと思ったエリサはクオンを連れて庭園を後にするのだった。


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