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ジェンダーフリースクリプト~始まりの物語~  作者: shiori@


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第十一話「百合の花園」1

 週末になり、先日約束を交わした通り、エリサはクオンを連れてファイブスターナイツとのお茶会へと向かった。

 お茶会の会場は王宮近くのオアシス庭園内にある王宮関係者や富裕層向けのお洒落なカフェで、バラの香りが漂う、ローズガーデンの中にあった。


乙女(おとめ)(その)。ここに来ると緊張してしまいますね」

「クオンが緊張する必要はないよ。王宮で暮らしている僕らのことは歓迎してくれてるんだから」

「頭では分かっていても、私の身体は女性ではありません。だから、ここに来るのは罰当たりだと思ってしまうんです」

「生まれの不幸を呪っても仕方ない。僕らはこの身体で大人になっても生きていくんだから」

「そうですね。折角のお心遣いで私まで招待してくださったのに、空気を汚すようなことを言ってすみません」

「いいんだよ。クオンは狭い王宮の中で暮らして不自由な思いをしてるんだから。こういう時は楽しまなきゃ損だよ」

「はい、肝に銘じて楽しませていただきますね」


 砂漠化が進行しているとは思えない、白やピンク、深紅や黄色など、多様な姿に咲き誇る薔薇が咲き乱れる庭園の中をゆっくりと歩いて行くエリサとクオン。


 シカリア王国の中でもこれだけ丹精に手入れが行われ、造園された庭園は大変珍しく、ここにやって来る人々は揃って綺麗に着飾った貴婦人ばかりだ。


 城下町で商店を営むような一般労働者や農家の民、地方の山々で暮らす人々にとっては縁遠い場所で、限られた女民のみが訪れることができる、贅沢なひと時を送れる庭園である。


 クオンは仕事着であるエプロンドレスに身を包み、畏れ多い感情に苛まれながら、エリサの傍に寄り添い、俯き加減で歩いて行く。


 ふわりと漂う、甘い香りに誘われて、薔薇に囲まれた庭園を歩いて行くと、五人の戦乙女が可憐な衣装を身に纏い、ガーデンチェアにそれぞれ座って待機していた。

 その姿は戦場に立つものとは思えない程、穢れなき美しさに満ちて、周囲に咲き乱れる花々と同じように生命力に溢れて見えた。


 エリサが姿を見せると、すぐにディオーナは立ち上がり、二人を出迎えた。

 気品溢れるディオーナが近づいて来るとクオンは気を引き締め、エリサは柔らかく微笑みを浮かべ、ディオーナと握手を交わした。


「ディオーナ、お待たせ」

「来てくださいましたか。無事に皆揃いました。今日は薔薇の景色を楽しみながら、日々の疲れを共に癒しましょう」

「うん、この寒い季節までこんなに綺麗に咲いているなんて、庭師の丁寧な手入れの賜物だね」

「はい、このローズガーデンの薔薇達はこのシカリア王国の風に耐えられるよう品種改良が施されています。それでも、手入れが大変なことに変わりはありませんが」


 立ち上がって出迎えに来たディオーナと向かい合い、言葉を交わすエリサ。

 エリサとクオンが席に着こうと椅子に近づくと、花冠を頭に被ったエリーが一輪の薔薇をそれぞれの胸に付けた。

 

「二人とも、待ってたよ! 本当、立派に大きくなって、お姉さんは鼻が高いよ」

「エリーさん、こそばゆいですよ」


 愛嬌溢れる優しい微笑みを浮かべる、エリーの言葉に照れ臭い気持ちになるエリサ。

 エリサにはエリーが胸に付けているものと同じ、ピンク色の薔薇が、クオンにはオレンジ色の薔薇が付けられた。


「クオンちゃんはいつものエプロンドレスで王子はいつもの正装かぁ……。もう少し趣向を凝らしてイメージチェンジした姿もお姉さんは見てみたいかなぁ」

「クオンのファッションチェックは厳しいですから。王子らしい格好しかなかなか着させてくれないんですよ」

「私のせいですか……? 王子だってスカートをなかなか履きたがらないじゃないですか……」

「いやぁ……。だってスカートは歩きづらいから。それに僕は足も短くてそこまで綺麗じゃないから、スカートは似合わないよ」

「そんな言い訳ばっかり、お姉さんは聞きたくないぞっ! 今度お茶会する時は先にお姉さんの部屋に来るようにっ! しっかりお茶会に似合う服に着替えさせてあげるからっ!」


 エリサとクオンの消極的な反応に頬を膨らませ、不満を露わにするエリー。

 ファイブスターナイツの希望者には王宮警護上の観点から、王宮の一室が与えられているため、エリーは同じ王宮の中で暮らしている。

 ファッションに敏感なエリーは城下町を練り歩き、気に入った服を買い込んでいるので、二人に似合う衣装も数多く自室に揃えているのだった。


 二人の服装に口出しをする今日のエリーの服装は舞踏会に出ても喜ばれるような胸元が開いた赤いドレスを着て、色気溢れる大人の女性の雰囲気をプラスさせている特別仕様のコーディネートだ。

 

「もう……。ちゃんと、二人ともお姉さんみたいに魅力的な女性にならないといけないんだぞ……」

「そんなこと言いつつ、こっそり手を伸ばしてお尻を触らないでくださいっ!」

「だって、エリサ王子、あたしのナイスバディにくびったけみたいだからっ!」

「それは関係ないでしょう……」


 自然と開かれた胸元に視線を向かってしまった落ち度を指摘されてしまったエリサ。ついでにとばかりに柔らかいエリサのお尻を撫で回して味わうエリー。


 エリサは困り顔を浮かべてクオンに助けを求め、エリーのスキンシップ攻撃から脱した。


 こうして、エリサとクオンが到着して全員が揃ったところで、白いテーブルクロスが掛かった、大きなテーブルを囲むように一同は席に着いた。

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