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ジェンダーフリースクリプト~始まりの物語~  作者: shiori@


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第八話「華麗なるファイブスターナイツ」3

 金髪碧眼の美しい顔立ちをして、気高い騎士の精神を持ち合せた美女、ディオーナが凛々しい表情でエリサの瞳を凝視する。

 身長は170以上と体格にも恵まれ、多くの隊員の憧れであり、見本でもあるディオーナは25歳の若さでありながら、ファイブスターナイツ最強の騎士にして王立警護隊の隊長を務めている。

 その実力は誰もが知るところであり、彼女の剣技は惚れ惚れしてしまう程に美しく流麗(りゅうれい)な剣さばきしている。

 

 勿論、エリサは彼女の実力を知りながら、それでも対峙することを止めはしない。それが、王子としての自分の役割なのだと受け入れているのだ。


 そして、隊員が見守る中、二人は同時に声を上げ、模擬戦を開始した。

 風を切り、砂を巻き上げ、猛烈な速度で一気に迫る、ディオーナの姿。

 ディオーナよりも小柄なエリサはディオーナの放った一閃を足腰に力を入れて受け止め、素早く弾き返すと、次の一閃を繰り出すフリを見せ、一歩下がった。


 そうして、器用に飛び上がって繰り出された一振りを躱し、鋭く放たれた二撃目を受け止める。

 

 十秒に満たない間に繰り広げられた、互いの攻防。

 高度な読み合いの間にも圧倒的な実力差を感じるエリサ。

 ディオーナが手加減をしていることを知りつつも、簡単に決着を迎えてディオーナを失望させるわけにはいかない。

 視覚にディオーナの一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくをインプットさせながら、油断をせずエリサは持てる全力を尽くしていく。

 

 身体能力に差があることは承知の上。

 何とかディオーナの反応速度に合わせるため、エリサは自然と一体になり、無駄な力を抜いて、切っ先にのみ意識を集中させる。

 何度も剣と剣がぶつかり合い、小気味よい金属音が広場に響き渡る。


「はぁ……はぁ……はあぁぁ!!」

 

 一分、二分と模擬戦が繰り広げられたところでエリサの息は上がり始めた。

 すると、ディオーナは真っすぐに向かってくるエリサの動向を見て満足げに微笑んだ。


「筋は良いのに、想像するイメージに身体能力が追い付いていないのは歯痒いですね」

「これが僕の限界だよ。日々、必死になって鍛錬している隊員達の頑張りには敬意を表するね」

「王子のお言葉でそう言って貰えるのは喜ばしいことではありますが、本音を言えばまだまだ物足りません。相手が王子でなければ、本気を出してしまいたくなるところですが、もう十分でしょう」


 エリサの剣技を弾き飛ばし、会話を交わし終えたディオーナは呼吸を整えて、次の動作への準備運動を開始した。

 ディオーナの強い言葉で模擬戦が終局へと向かう気配が一層強まっていく。

 エリサはそろそろ潮時であることを感じながら、汗を拭い、最後の衝撃を耐え切るために構えを取った。


 そして、風が吹き、砂が巻き上がると同時、ディオーナは駆け出した。

 エリサに迫るとディオーナは目にも止まらぬ素早い三段突きを見せ、エリサの持つ居合刀を中空に吹き飛ばした。


 死の宣告を告げられたような瞬間が訪れた刹那。

 ディオーナは右手に持つ刃物の切っ先をエリサの首筋の前で制止させ、息を止めた。


 勝負が決したところで息を吐き、刀を鞘に仕舞い、二人の美しい模擬戦は名残惜しくも終わりの時を迎えた。


「久しぶりにディオーナの剣を受けたけど、息が上がっちゃうね。やっぱり僕には戦いは向いてないよ。ケインズ先生と一緒に研究をしている方が身の袖に合ってるよ」


「お手並み拝見いたしました。王子は謙遜していますが、王子はファイブスターナイツの一人に入るほどの逸材です。積極的に鍛錬に打ち込んでくださると嬉しいのですが」


「煽てられてもこれが精一杯の僕の実力。そう言ってくれるのは嬉しいけど、ディオーナの提案する訓練は厳し過ぎて僕にはついていけないよ」


 エリサとディオーナが親し気に握手を交わし、互いの奮闘を称え合う中、二人の模擬戦を見守っていた王立警護隊の隊員達からは大きな拍手が送られ、感嘆の声が漏れる。金色に輝きを放つ髪を持つディオーナと白銀に光る髪を持つエリサとの美しき剣の語らい。

 滅多に見ることの出来ない、国の未来を背負って立つ、第一王子エリサと王立警護隊を指揮する隊長、ディオーナとの模擬戦は見る者を魅了する価値ある一戦だった。

 互いの剣戟を称え合うまでの一連の行為を終えて、二人の模擬戦は終わりを迎えた。


 単純な実力で言えば到底、エリサはディオーナに敵わないが、訓練次第で自分を脅かす存在になってくれることをディオーナは期待している。

 それは、エリサがアントニオの血を引き、男性に生まれたことで潜在能力が女性よりも高いことをディオーナは知っているからこそだった。

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