第五話「レジスタンス組織の頭領」1
ボスと呼ばれている人物の部屋の中へと慎重に入って行く、
そこは先程の部屋とは明らかに違う、豪華な造りをしていた。
綺麗なカーペットが敷かれ、びっしりと本が詰まった本棚に立派な机が置かれた書斎になっている。
インテリアにも凝っているのか、等身大をしたハゲタカの彫刻や盛者必衰と達筆な書筆で書かれた掛け軸まで飾られていた。
そして、部屋の中央には高級感のあるアンティーク調の本革ソファーが置かれ、そこには仮面を付け、ブラウンカラーのスーツを着た大柄な人物が紙の資料を握り、静かに座っていた。
その人物の身に纏う風格は先程までの人物達とは明らかに異なり、滲み出るオーラのようなものをエリサは強く感じた。
さらに、微かに記憶の中に残されている、風化していた父の面影が色鮮やかに息を吹き返し、蘇ってくるのだった。
「父様……」
「その姿はエリサか。まさか本当にここまで一人で来たのか」
「仮面まで付けて顔を隠して、本当に父様なの?」
「あぁ、そうだ。俺はこの国に入ることを許されない密入国者の扱いを受けている。この国にいる間は簡単に仮面を外すことはできないのさ」
警戒するエリサに向けて、事情を話し、被っていた仮面を外すと、その場で立ち上がる父、アントニオ・ヘルファーシュトルファー。
アントニオの身長はエリサよりも遥かに高身長で190㎝以上あり、ずっしりとした体格で、エリサはすぐに見上げるように顔を上げた。
「本当だ……。写真で見た通りの人だ」
仮面を外して素顔を晒したアントニオの姿を見て、ようやくエリサは疑いなく父であることを確かめ、ここまでの道のりが無駄足でなかったことが分かり、ほっと胸を撫で下ろした。
「実の息子にそういう反応をされるとは思ってもみなかったな。ここまでの道のり、大変だっただろう」
「うん。夜に街まで出歩くなんて生まれて初めてだったよ。
クオンの話通り、本当に帰って来てたんだね」
「俺にもやり残したことがあるからな。今日までの日々は長かったよ……。いつか会いたいと思っていた」
「僕も……。クオンから教えられて半信半疑だったけど、本当に会えるなんて思わなかった」
「そうか、大きくなったな、エリサ。
しかし、本当に不甲斐ない父で悪かった。
マリアンナとクオリタンを含め、お前達には余計な苦労をさせてしまった」
感動の再会を果たした両者は抱き合い、喜びを噛み締めた。
エリサは大きな父の身体に包まれると、これまで感じたことのない感極まる情動に襲われた。
女王である母の心情を置き去りにしたまま果たされた奇跡のような父と子の再会。
これがエリサによって大きな転換点になるであろうことは、必然といって間違いなかった。




