第四話「夜の旅人」6
「例の客人だ。そこを通しな」
ドアの前に立つ、思春期を迎えて間もない、小柄な少女に声を掛けるベルレーヌ。
瞬時に空気がピリつき、エリサは同じ組織のメンバーでありながら、二人の関係が友好的なものではないと感じた。
松明の照明だけが辺りを照らす、薄暗い廊下にぽつりと立ち続ける少女。
表情を一切、変化させることなく、不愛想で冷たい瞳がエリサに注がれる。
品定めをされているような、嫌な沈黙が流れる。
何か、言わないといけないとエリサは口を開こうとするが、その前に少女は溜息を付き、ドアの前から離れ、道を譲った。
「こいつはリムル・サム・クリエッタ。ボスが拾ってきた用心棒だよ。子どもだからって舐めない方がいい。油断してると後ろからナイフを突き刺してくるような危険な奴だからね」
恐れることなく饒舌にリムルの紹介をするベルレーヌ。その姿には他のメンバー達には見せない警戒心が滲み出ている。決して二人の相性は良くないのだろう。エリサは二人の反応から何となくそれを察した。
「何?」
「ううん、何でもない」
リムルの第一声にエリサは首を横に振って答えた。
エリサはリムルという名の少女に既視感を覚えたが、これ以上、睨まれないよう追及するのを止めた。
「それじゃあ、ボスが待ってる。行っておいて」
「はい、助かりました。容姿が派手だから怖い人かと思いましたが、良い人でよかったです」
「そうかい、あたしは踊り子でね。仕事柄こういう服装をすることが多いのさ。寄せ集めなせいでここは変わり者が多い組織だ。真面目な人間なんてほとんどいないからね。王子に粗相する奴は流石にいないとは思うが、あたしの機嫌が良かったことに感謝しな」
照れ隠しをするベルレーヌにお辞儀をして、謝意を述べてドアノブに手を掛けるエリサ。
門番を務める少女は口を閉ざしたまま、道を譲ってくれていて、邪魔をする気配はなかった。
いよいよ、幼い頃、会えなくなってしまった父親と対面できる。
深呼吸をして胸の高鳴りを抑えると、エリサは両手に力を込め、扉を開け放った。




