表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジェンダーフリースクリプト~始まりの物語~  作者: shiori@


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/55

第四話「夜の旅人」3

「僕のカバンっ!! 盗んで逃げるなんて、卑怯だよ!! 待ちなさいっ!!」


 人で賑わう歓楽街であるため、声を上げることを一瞬躊躇うが、この緊急事態に遭ってはそうも言っていられない。

 エリサは一目散に逃げていく盗人を追い掛け、必死に声を張り上げて、足を止めてくれるよう訴えかけた。


 だが、近くに頼れる警備員の姿はなく、相手が止まる様子もない。複雑に入り組んだ繁華街の細い路地を経由しながら、犯人は逃げ切ろうと素早い速度で走って行く。


 目まぐるしく状況が変わり、視界が揺らぐ。それでもエリサはカバンを盗んだ、黒いコートを着た怪しい人物を凝視して見失わないよう、その姿をよく観察した。

 フードを被っていて顔は隠れていて分からないが、自分よりも少し小柄で身軽な格好をしている。男女の区別はつかないが、体格からして大人とは思えない。 

 身寄りのない貧しい子どもなら身銭欲しさに衝動的な犯行に出ることはあり得る。エリサはこんな事は二度と繰り返させないようにするためにも、必死に犯人を追った。


 犯人がエリサの姿を確認しようと振り返り、一度その姿を捉える。

 ここまで長い時間、追いかけっこが続くと予測していなかったのだろう。

 表情を歪め、歯を食いしばって悔しさを滲ませる。

 だからといって、諦めようという意思はまるでない。

 それはエリザも同じだ。

 勉学だけでなく身を守る術も多少は心得ている。

 子ども相手に負けるわけにはいかない。

 持久戦と化していく追走劇の中でエリサは徐々に相手を追い詰めていった。


「止まって! 悪いようにしないから、カバンを返して! それがないと困るの!」


 犯人に向かって中性的な声色で感情的に訴えかけるエリサ。

 カバンの中には財布や身分がバレる危険性がある貴重品も含まれている。

 簡単に手放していい代物ではない。エリサはこの場で取り返そうと必死だった。

 そして、犯人を薄汚い路地裏の袋小路まで追い詰め、足を止めた次の瞬間、犯人は思わぬ行動に出た。


 ジャンプを繰り返し、階段を使わず驚異的な身体能力で建物を昇って行ったのだ。

 

「そんなまさかっ!」

 

 俄かには信じ難い、人間には不可能と思える跳躍力。

 これではとても追い掛けられない。

 上空を見上げ、驚くしかないエリサ。

 手も足も出ないと察したコロは飼い主の想いに応えようとエリサの肩から器用に飛び上がって犯人を追い掛け、体内に電気を溜めると、稲妻を解き放った。

 

「コロっ!!」悲鳴に近い声を上げ、犯人に襲い掛かっていくコロを見守るエリサ。

 辺りが一気に眩い光が降り注ぐように輝き、放電が犯人目掛けて走って行く。

 犯人は機敏な動きで回避運動を取ると、最大の危機と察したのか、大空へと飛翔した。


 上空へと浮き上がっていく瞬間、背中が盛り上がり、着ていた上着が宙を舞う。


 そして、エリサは信じられないものを目にした。


 月明かりに照らされる、少年の輪郭と、背中に生える黒い羽。 

 まるでその両翼は神話の世界から降りてきたように力強く羽ばたいている。


 エリサは衝撃のあまり、ぽかんと口を開けたまま、自由自在に上空を飛び去っていく姿を見つめた。


「本当に飛んだ……? 鳥が人間に化けて出てきたなんて、まさか考えられないよね……」

 

 コロの放った雷攻撃を躱し、華麗に飛び去って行った性別不明の謎の少年。

 カバンは奪われ、犯人を取り逃がした。

 必死に追い掛けたにも関わらず、徒労に終わったエリサは無力感に包まれ、疲れ果てて呼吸を乱したまま、その場に力尽き座り込んだ。


 そんなエリサを慰めようとコロは頬擦りをするが、エリサは情けない気持ちで一杯になり、瞼に涙を溜めたまま、コロの咄嗟の頑張りを労うことしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ