第二十話「燃え盛る森林の中で」8
「流石はファイブスターナイツ。なかなかに良いものを見物できたね、オニキス」
「あぁ、だが獣人族のファイブスターナイツとはいえ所詮は一人の人間。これだけの戦いを続けた後では他愛もないな」
「そうだな。本来は正々堂々、お互い万全の状態でやり合いたいところだが、これも作戦だ。最後の仕上げと行こうか」
「了解。我らの革命を完遂するため、尊い犠牲となってもらおう」
「女だからって、手加減はいらないからな」
「それはこっちの台詞だ」
親しげな会話を繰り広げ、木の上から舞い降りる二人の男性騎士。
一人は漆黒の衣を身に纏い、戦闘前とは思えないほど穏やかな表情を浮かべ、瞳を閉じている。
もう一人は非の打ち所がないほどに眉目秀麗な美男子。黄金色の髪は森林火災の中で色鮮やかに輝きを放ち、リンカを憐れむような愁いを帯びた瞳で見つめている。
この機会を伺っていた二人の騎士が二体の魔獣が討伐されたタイミングを見計らい、最後の仕上げとばかりにリンカの前に立ち塞がる。
一難去ってまた一難。救いようのない事態。
秘奥義を発動させた後でどれだけ抵抗する力が残されているか。
絶望的な状況下で、リンカは虚ろな目のまま立ち上がり、二人の姿を捉えた。
初めて見る、身に覚えのない二人の騎士の姿。
その身に宿している気配に悪意の類はない。
だが、鋭い殺意のようなものだけは僅かながら感じ取ることができた。
「……この森に火を放ったのは、貴方達ですか?」
黒衣を纏った姿で立ち塞がる、盲目の黒騎士、オニキス・レオンハルト。
白き衣を纏いし、白い肌と金色の髪をした美男子、リカルド・グレンデル。
赤い薔薇を口に付けるリカルドは目を細めて、ボロボロになったリンカを見るに堪えない様子で捉えていた。
「この森に火を放ったのはこの作戦の指揮を担当している司令官に命令を受けた下っ端だ。
俺とこいつは傭兵でな、殺せと言われた相手には容赦なく斬首する覚悟が出来ている。
多くの死地を巡ってきた俺達にとって人を斬ることは日常茶飯事なんだ。
だからな、悪足搔きはやめておけ。苦しまずに殺してやるから力を抜きな」
秘奥義を発動させた後で、疲弊しきったリンカに向けて、容赦のない言葉をぶつけるリカルド。
無口なオニキスの代わりに言い放った言葉に偽りはない。
リカルドは鞘から銀色に輝く剣を引き抜くと、間を置くことなくリンカの眉間に向けた。
だが、いかなる状況に陥っても、リンカは諦めてはいなかった。




