彼女の裏の顔
「ただいま」
夜、バイトから帰って来た俺は、だれもいない真っ暗な空間につぶやいた。
正面を見れば、暗闇の中で電話機の着信表示が点滅している。
靴をぬいで、そのボタンをおすと、聞き慣れた声が聞こえて来た。
「もしもし。今日私遊んで帰るから、夜ご飯よろしくね」
着信時間はだいたい2時間前だった。
ハァ、と深いため息を一つついて、俺は晩飯の支度をすべく、台所へと向かった。
彼女が帰ってきたのは、俺が料理を始めてから20分くらいしてからだった。
「うーん、おいしそうな匂い。今日は何?」
リズミカルに言う彼女。
「肉じゃが…。…どうした?いやに上機嫌だな?」
肉じゃがの煮込み具合をじっと凝視しながら言う俺。
「まぁね」
「その様子だと、今回は当たりだったみたいだな…」
そういうとクスクスと笑う彼女。
「うん、いい感じだった」
「だった?…もう別れたのか?」
「もちろん。だって好きじゃないもん」
こともなげに言った。
「かわいそうに……。んで?今回はいくら貢がせたんだ?」
少し意地悪く聞いてみた。
「貢がせた…ってひどくない?私に投資してくれたの!だいたい…」
どうやら機嫌を損ねそうだ。
「あ〜…はいはい。んでいくら?」
「だいたい10万前後…」
「10万!3日で!?」
つい大声をだしてしまう。
「そう。すごいでしょ」
「はぁ…」
「つくづく男って…馬鹿だよね」
不穏な余韻を含ませて言う彼女。
「…俺もその男って分類に入るんだけど?」
「あなたは別」
「……。まぁいいけどさ。あんま調子にのんなよ。最近少し噂になりつつある」
「え、そうなの?」
「ああ、ごく一部だけどな。まぁほどほどにしとけ。よし、そろそろだな。おい、皿を出してくれ」
「え〜?」
「やらんなら食わせんぞ」
「チェッ」
そういうと彼女は皿をだしに行動にうつった。
あなたの身の回りにもいるかもしれません。
気をつけましょう(笑)