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012 バウンティハント

書き始めた時よりも思っている以上に大所帯になりました。

 イートゥンを出発したハワードたちは、手頃な賞金首である異常生命体を狩ることにした。ヴィハンが操縦席に座り、隣の席にはジウメイが座ってキャリアカーの窓から流れていく風景を眺めていた。


ガブリエルは後部座席の中に座りハンティング情報を端末で閲覧していた。隣にはハワード、対面にはホイザーが座っていて、テーブルにこぼれないようにカップに蓋がついた飲み物が3つほど置かれていた。


ガブリエルがハワードにおすすめのハンティングを紹介していく。


「これなんてどうだ?5000万¥の超巨大ワーム!神出鬼没らしいが、今から行く方角に出てる記録が多いな。出たら狩るくらいの感じでどうだ?」


「悪くねぇんじゃねぇの、ガブリエル。賞金首だろうがなんだろうが、二人でぶっ飛ばしてやろうぜ!」


 賞金額は五千万¥と、金額だけ見ればそこまで強敵ではなさそうだった。しかし、賞金額はあくまでも目安に過ぎない。過去に多くのハンターが討伐に失敗したことで、金額が吊り上げられている可能性も十分に考えられた。

 ハワードは賞金額が釣り合わない相手ではないことを考えて、こういったが勝つ以外のイメージはしてない。基本的に楽観的なのである。


 大所帯となったキャリアカーには、運転席にヴィハンとジウメイ、後部座席にはハワード、ホイザー、ガブリエルがやや手狭になって座っていた。ヴィハンはキャリアカーの運転に集中し、ジウメイは時折外の風景を楽しみながら助手席で端末を操作し、2機の性能と整備に関することに没頭していた。後部座席では、ホイザーがガブリエルに身振り手振りで旅の思い出を語り、ハワードはそれに一緒に混ざりながらも窓の外をチラリと見て、次の戦いに思いを馳せていた。

 そんな時にヴィハンの操縦席のコンソールが、小さな警告音を鳴り響かせた。彼の眉がわずかにひそまる。


「なんだ、この通信は……近くの村からの救難信号か。報酬は9000万¥、悪くないな。ハワード、ガブリエルどうする?やってみるか?」


「おう、いいね。本番前に準備運動するのも悪くない」


「ガブリエルは好戦的だなぁ、だが悪くない。俺も乗るぜ」


 キャリアカーの停車と共に、ハワードとガブリエルは慌ただしく席を立つ。ハワードのリーパーには転移システムが搭載されているが、相変わらずハワードは普段使いには使用しない。自分がこの世から消え去る感じがする、という感覚が嫌いだからだ。

 ガブリエルの方は転移システムが搭載されていない。軍用モノとはいえ、現代の量産品であるドレッドノートにはそのような高性能なロステクは搭載されてない。


「ガブリエル、先にドレッドノートを!俺はリーパーを出す!」


 ハワードは叫び、キャリアカーの後部にあるハッチからリーパーのコックピットへと乗り込んだ。ガブリエルもまた、ドレッドノートのコックピットへと乗り込む。二人のデューンウォーカーがキャリアカーから飛び出し、村へと向かう。


「村に先に連絡をつけた!俺たち以外には救援を受けたものはいないらしい。うまくいけば、9000万¥は総取りだ!!」


「ヒュー!中々に多いじゃないか!」


 ハワードは賞金首の額よりも大きいことに驚き、目を丸くした。ガブリエルも賞金の大きさに喜びを禁じえないが、村に払える額なのか?と不安にも思った。

 村に到着すると、既に異常生命体のワームの群れが村を蹂耙していた。通信越しに村長が涙ながらに助けを求めてきた。


「この村のすべての財産をはたいても構わない!どうか、この村を救ってくれ!」


 ハワードは「任せとけって!」と答え、リーパーを操縦し、ワームの群れへと突っ込んでいく。


「ヴィハン!俺は村を守るために、積極的にワームを狩る!ドレッドノートは村の防衛に専念してくれ!」


 ハワードが敵陣に突っ込みながらも、ヴィハンへと通信連絡を入れる。


「わかっている。ジウメイさん、ホイザーと場所を交代だ。ホイザー!キャリアカーでサポートを頼む!」


「任せてください!」


 ホイザーは火器管制システムを操るため、ヘルメットと操作用のグローブを嵌めながらヴィハンに応えた。


 分担が決まり、ハワードはリーパーの背中にマウントされた大型武器、ビームサイズを引き抜いた。ワームの群れへと突進しながら、刀身から生成された淡い青のビームが煌めく。リーパーはワームの群れの真ん中へと躍り込むと、ビームサイズを振り回し、次々とワームを切り刻んでいった。攻めに専念できる楽さに、ハワードは笑みをこぼした。近接戦闘を得意とするリーパーにとって、獲物を求めて突撃することは何よりも得意な戦法だ。


 ガブリエルはドレッドノートを駆り、迫りくるワームの群れを迎撃する。防衛というプレッシャーを感じつつも、ドレッドノートの圧倒的な火力はワームの群れを次々と撃破していった。ガブリエルは、ドレッドノートの射撃能力に驚き、この機体ならどんな敵でも撃ち抜けるのではないか、と確信していた。


 ドレッドノートが撃ち漏らした敵をホイザーがキャリアカーに備え付けられたロングレンジガトリングで殲滅していく。彼女にとっては初の実戦だが今のところは上手く戦えている手応えを感じていた。


 そんな中、ハワードはワームの群れの中に、動かずに戦況を見つめている奇妙なワームを見つけた。そのワームは、他のワームとは違い、体の一部に不自然なコブのような膨らみがあった。ハワードは直感的に、何かを感じ取った。


「あいつ、司令塔か?確認してみる価値はありそうだな」


 ハワードはそう思うと、そのワームへと突っ込んでいき、その手に持った大鎌でワームを切り裂いた。ワームの中から現れたのは、粘液に塗れた濃い緑色の髪の男が上半身をのぞかせている姿だった。その男こそ、ワイルドファング団の幹部、ジュリアンだった。


「ちくしょう!なんでこんなところに!」


 驚きを隠せないハワードを尻目に、ジュリアンは自分を守ることを優先し、近くのワームを自分に引き寄せた。ジュリアンがワームを引き寄せたおかげで、村へのワームの圧力が弱まる。


「ヴィハン!何が起こってるんだ!?急に村へのワームの圧力が弱まったぞ!」


「ハワードのリーパーにワームの大部分が集中したんだ。どうやら、あいつが敵の注意を惹きつけているようだ。村への圧力が弱まったのなら、今が好機だ。攻撃の手を緩めるな!」


 ガブリエルが村を守りながらも、通信越しにヴィハンへと叫ぶ。その集めた強化ワームをジュリアンはリーパーへとけしかけた。しかし、強化ワームではハワードのリーパーの相手にはならなかった。


 ジュリアンはハワードのリーパーが、まるでワームの海を切り裂いて進むかのように、圧倒的な速度と力で自らのワームを殲滅していく姿を目の当たりにし、顔を引きつらせていた。近接戦闘に特化したリーパーの動きは、ジュリアンの想像をはるかに超えていた。


「馬鹿な……こいつの動き、まるで生き物だ。いや、それ以上の何かだ!これでは、ワームをいくらけしかけても無駄かッ……!?」


 リーパーの動きは、まるで生きているかのように滑らかで、それでいて獰猛な野獣のようだった。ジュリアンは背筋に冷たいものが走るのを感じ、これ以上の戦闘は無意味だと判断した。


「くそ!ワイルドファング団は貴様らを必ず殺してやる!覚えていろ!!」


「なんだと!?あ、テメェ!!リーパーにツバかけやがったな!?」


 ジュリアンはそう捨て台詞を吐き、リーパーに粘液を飛ばして目をくらませると、そのまま逃げ去っていった。ハワードは追いかけようとするが、ワームは地面に潜り行方をくらませてしまう。逃げたジュリアンに、ハワードは呆然としながらも、つぶやく。


「一体何者なんだよ、ワイルドファング団…。ホイザーちゃんが言ってた連中があれなのか……?」


 ハワードは、ジュリアンが逃げ去ったのを確認すると、すぐに気持ちを切り替えた。


「くそっ、逃がしちまったか!まあいい、後で泣きっ面かかせてやるさ!ヴィハン、ガブリエル!俺は残ったワームの掃討に戻るぜ!」


 通信越しにそう告げ、リーパーを反転させ、再び村へと向かう。残されたワームは、ジュリアンという司令塔を失ったことで統制を失い、ただ無目的に村を破壊しようとするのみだった。ハワードは、リーパーのビームサイズを再び振り回し、残りのワームを次々と切り裂いていった。その動きは、先ほどよりもさらに獰猛で、怒りに満ちていた。

 ガブリエルとホイザーも、ハワードの行動に合わせてワームの殲滅に集中する。


「まさか、あんな奴がいるなんてな……!」


 ガブリエルはドレッドノートの砲塔を操作しながら、ワイルドファング団という存在に警戒を強めていた。ただのワームと違い、明確な悪意を持って襲いかかってくる存在。そして、その背後には組織の影が見え隠れする。

 ワームの掃討が終わると、村の住民たちがデューンウォーカーに駆け寄ってきた。


「ありがとう!本当にありがとう!」


「命の恩人だ!この村は、あなたたちに救われた!」


 村長が涙ながらに感謝を述べ、他の住民たちも口々に礼を言う。ハワードはリーパーのコックピットから手を振り、ガブリエルもドレッドノートを少しばかり揺らして応えた。


「どうぞ、我らの恩人たちよ。我らにできる限りの歓待をさせていただこう。さぁさ、こちらへ上がっていきなされ」


 村に案内されたハワードたちは、村の長老に丁重に迎えられた。9000万¥という破格の報酬は、元々村の立て直しのために貯められていた資金だったという。しかし、彼らはハワードたちの活躍がなければ、村そのものが消滅していたと、報酬に加えて、村の最も立派な家屋で、心づくしの料理を振る舞った。


「おお、酒が出るのはありがたいねぇ。料理も悪くねぇぜ」


 ハワードは目を輝かせながら、山盛りのシチューを平らげた。ホイザーは、村の子供たちが自分に懐いてくれることに、最初は戸惑いながらも、次第に笑顔を見せるようになっていた。ガブリエルも、温かい村人たちの心遣いに触れ、少しばかり心が安らいだようだった。

 その夜、ハワードたちは村に一泊することになった。翌日、ハワードは村の復興を手伝うことを提案した。村人たちは感謝し、ヴィハンたちも快く受け入れた。


「ちょっとくらい、いいだろ?せっかく助けたんだから、最後まで面倒見てやるのが、俺たちの流儀だ!」


 ハワードはそう言って、率先して瓦礫の撤去を始めた。ホイザーは細かい瓦礫を次々と運び、人間離れした力を見せて村人たちを驚かせた。ガブリエルは、ドレッドノートの機体を使って、倒壊した建物の再建を手伝った。ヴィハンとジウメイは、村の資材を効率的に使うためのアドバイスをしたり、復興計画の立案を手伝ったりした。


「ハワードさん、私、嬉しいです…!」


 ホイザーは汗だくになりながら、ハワードに満面の笑みで語りかけた。


「ああ、俺もだ。こういうのも、悪くないな!」


 ハワードも笑顔で応えた。

 一日かけての復興作業が終わり、村は活気を取り戻しつつあった。村人たちは、ハワードたちの旅の安全を祈り、改めて深い感謝を伝えた。9000万¥という大金と、村人たちの温かい心に見送られ、彼らは再び次の目的地へと向かうのだった。

今回の話を読んで、何か思ったことや感じたことがあれば是非ともコメントや感想を残してください。

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