第3話:誰かが消える夜──クローンたちの涙
いよいよ、7人のうち1人ずつの“心の中”に触れていく時間が始まります。
今回は、癒し系のノア。
笑顔の奥に隠された「選ばれないかもしれない不安」と、
翔矢の“優しさ”が、ほんの少しすれ違ってしまう回です。
夕食は、なぜか全員が“得意料理”を持ち寄る形になった。
「ウチはハンバーグ! 愛情たっぷり入れといたから~!」
「私は卵焼き。もちろん甘くないやつ」
「煮物作ってみたの。……ちょっと、味濃いかな?」
食卓が推しで埋まる異常空間。どれを食べても美味いし、全員が笑顔。
だけど──その目の奥に、どこか不安があった。
夜。部屋に戻ろうとすると、誰かの泣き声が聞こえた。
音のする方へそっと向かうと、縁側にうずくまっていたのは──癒し系のノアだった。
「……ノア?」
「……あっ、翔矢くん。ごめんね、こんなところで……」
「泣いてた? なんかあった?」
「ううん、違うの。ただ、なんとなく……“自分じゃない”って思っただけ」
「……?」
ノアは、ゆっくりと手のひらを見つめて、続けた。
「私たちって、元々は“同じ人”なんでしょ? なのに、どこかで比べちゃうの。
“私が選ばれなかったらどうしよう”って。
怖くて、泣いちゃった……。変だよね、クローンなのに」
「変じゃないよ。むしろ……そんな風に思えるって、もう“ただのコピー”じゃないってことだろ?」
そっとノアの頭を撫でると、彼女は小さく「えへへ……ありがと」って笑った。
その笑顔は、間違いなく“人間”だった。
夜が更けたあと、翔矢はベッドの中で思った。
──全員に、ちゃんと向き合わなきゃいけない。
でも、もし「誰かを選ぶ」ってことが、他の6人を“失う”って意味なら──
「そんなの……選べないよ」
そのとき、外から誰かの声がした。
「──選ばないなら、全員、消えてもらうわね」
女の声だった。
それはまるで、“あの七瀬あかり”が怒りと悲しみに満ちて語るような──
翔矢はベッドから飛び起き、音のした方へと走り出す。
最後まで読んでくれてありがとう!
優しさを武器にしてきたノアが、はじめて「自分のため」に涙を流す回でした。
次回はミカ(ヤンデレ)。感情が強すぎて、翔矢すら怯える展開に……!?
怖いけど目が離せない、そんな子の真実に触れていきます。